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『133キロ怪速球』 [読書日記]

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

  • 作者: 山本 昌
  • 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
  • 発売日: 2009/05
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
日本球界を代表するベテラン左腕・山本昌。2008年には史上24人目の200勝投手となった。83年秋のドラフト5位で中日に入団した著者は体だけは大きかったが、しかし決して才能に満ちあふれていたわけではなかった。戦力外通告におびえていた著者は何を考え、弱肉強食のプロの世界でいまもなお生き残ることができているのか。どこにでもいた“普通の”野球少年が“特別の”投手になった理由とは。プロ26年目にして初の自著。
何を隠そう、ドラゴンズファンの僕が最も応援しているのは山本昌投手である。理由は、年齢が最も自分に近いから。彼がベロビーチ・ドジャース留学から魔球スクリューボールを引っさげて凱旋(?)帰国してそのシーズン後半で5勝をあげ、1988年の星野ドラゴンズのセリーグ制覇に少なからず貢献したことは今でもよく覚えている。(なんていっても最下位から後半の驚異的な追い上げで逆転優勝したドラマチックなシーズンで、その後半の追い上げを支えた1人が山本昌だったから。)コツコツと成績を積み重ねながら、今中や野口、川上の陰に隠れてその時々で「エース」と呼ばれることはなかったが、こうした積み重ねが2008年の通算200勝達成に繋がっている。今や数少ない40代現役選手として、僕達オジサン世代の期待の星なのである。

その山本昌が本を出したのは、同じドラゴンズファンとして時々覗かせてもらっているliu-gotooさんのブログの記事で最近知った。こうなると居ても発ってもいられなくなるのが山本昌ファンの性分で、帰国するなりすぐに購入し、1日で読み切ってしまった。

評判に違わぬとても良い本だった。何がすごいかといえば、様々な人との出会いをつづり、その殆どに感謝の言葉がちりばめられていたからである。さすがに第1次政権時代の星野監督の「鉄拳制裁」の理路不整然振りには若干の恨み節はあったのかもしれないなという気はしたけれど、それもオブラートに包んで「自分がプロ選手として未だ一人前にもなりきっていない時期に星野監督の厳しい指導を受けられたのはむしろ良かった」といった趣旨で纏められている。何しろ、彼が1994年に沢村賞受賞した際に最初に報告の電話を入れたのが星野前監督だったらしいし…。

また、ドラゴンズの若手選手に対しても、「最近の若い連中は…」とは言っていない。むしろ、「最近の若い選手は非常に真面目に野球に取り組んでいる」と評価している。僕らの世代が20代の若手社員に対してついつい口にしてしまいそうなセリフだが、それを戒めているようにも思える。

さらに驚かされるのはその観察眼である。山本昌はどんなに暑い夏場の試合でも、イニング毎にベンチ裏に行ってアンダーシャツを取り替えたりはしないという。ベンチを離れると試合の流れが読めなくなるからだと本書では説明している。また彼はラジコンカーの腕前もプロ級であるが、同じプロ級の使い手を見て、彼らが例外なくメモを細かくつけている点に気付き、趣味から教えられることもあると述べている。彼は高校時代から練習の記録を毎日つけるなどの努力をコツコツ積み重ねてきている。こうした点から僕達も教えられるのは、無理な目標設定をして続けるのが難しい努力を苦しみながら続けるよりも、できる範囲の目標設定で毎日コツコツと続けることだということなのではないかと思う。

山本昌と同期入団のドラゴンズ選手としては、ドラフト1位の享栄高校・藤王康晴外野手、3位の横浜商業・三浦将明投手がいる。山本昌は日大藤沢高校出身のドラフト5位だ。享栄・藤王、Y校三浦といったら甲子園を沸かせたスター選手であり、入団当初から注目度合いは山本昌とは全然違っていた。2期後輩のドラフト1位には享栄の左腕近藤真一投手がいた。彼も1987年の初登板で巨人相手にノーヒットノーランという華々しいデビューを飾った。しかし、その後の活躍度合いを見ると、藤王も三浦も近藤もそれほど目立った活躍もせずに現役引退している。反面、ドラフト5位だった山本昌は現役生活25年目を迎え、息の長い活躍をしている。偶然に偶然が重なったものだと本人は書いているが、1つ1つの出会いを大切にしつつ、日々の努力を怠らないところにコツがあったのかなという気がする。それと、「野球が好きだから」ということも…。

標題の『133キロ怪速球』であるが、山本昌はかねてから「133km/hの速球が投げられなくなったら現役引退する」と口にしている。2008年に143km/hと自己最速を記録している彼がすぐに引退するとは思えないが、できるだけ長く現役を続けて欲しい選手だなと本書を読んで改めて思った。
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yukikaze

山本昌投手。独特のモーション。いいですね。あちらこちらでベテランが頑張っていますね。
by yukikaze (2009-06-04 11:16) 

liu-gotoo。

TBありがとうございます。
すぐに購入し、読まれたのですね。

厳しいプロ野球という世界の中で
地道にコツコツと努力することの
大切さを、山本昌投手から教わった気がします。
その努力の賜物が、200勝という数字となって
表れたと、私は思っています。

by liu-gotoo。 (2009-06-07 12:44) 

TBM

ついに巨人に1.5差! 中日優勝→日本シリーズ。
そして、山本選手に「シリーズ1勝」していただきたいです!
by TBM (2009-07-31 00:12) 

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