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『10年後の日本』 [読書日記]

「日本の論点」編集部編                                                                             『10年後の日本』                                                                              文春新書、2005年11月


内容(「BOOK」データベースより)
消費税二桁化、団塊世代の大量定年、学力衰退、500万人のフリーター、年金崩壊、熟年離婚ラッシュ。『日本の論点』編集部が豊富なデータを駆使し、47項目の社会問題を取り上げ、その未来を簡潔にやさしく解説。

いつものコミセン図書室で借りた本であるが、今から言っておこう。この本は買って机上に常備しておいてもよい本だと思う。

最近、僕は自分の会社の仕事について、もう少し人口動態を踏まえた仕事のやり方を考えた方がいいと思うようになってきている。例えば中国であるが、中国の場合は2020年代後半には人口減少が始まると予想されている。去年は二桁の高度経済成長を記録した中国であるが、今後人口がいったん15億人にまで膨れ上がった後で減少し始めると、経済成長率は低下するであろう。そうした場合に、中国がアジア経済を牽引するパワーを失ってくる可能性がある。

僕は対外援助は外交の重要な手段の1つであると思っているが、日本の人口減少がどんどん進行していけば税収が伸び悩むのは火を見るよりも明らかであり、ODA予算を昔のように増額してガンガンやっていくのは難しくなるだろう。ましてや、体と心を壊すまで残業をやたらとやらせる省庁や援助実施機関が、これからの人材不足の時代に優秀な人材など確保できよう筈がない。CSRというのは社会貢献だけではない。会社と従業員の関係、働きやすい職場環境の提供というのも重要な要素となってくる。良いことをやっていれば人が集まってくるという時代ではもはやないのである。

そう考えると、我が国は10年後にどのような姿になっているのかを考えることは非常に重要だし、その姿を包括的に描くためには枠組みが必要だと思う。本書を目次だけ挙げると以下の通りである。

  1. 変わる日本社会の形
  2. 鍵を握る団塊世代
  3. ビジネスマンの新しい現実
  4. 漂流する若者たち
  5. 世代が対立する高齢社会
  6. 家族の絆と子どもの未来
  7. 男と女の選択
  8. 地球環境の危機
  9. グローバル経済の奔流
  10. 不安定化するアジア

これらを俯瞰すると、国際関係や地球環境といったグローバルなレベルでの課題設定を除けば、国内の課題の殆どが何らかの形で高齢化、少子化、人口減少、国内人口移動といったキーワードと何らかの関連があるということになる。各々のテーマを深掘りするには新書サイズでは物足りないかもしれないが、レファレンス本としては最適な内容だと思う。

本書は一種総花的な内容になっているため、要点を述べるのは難しい。学んだポイントはいくつかあるが、1つだけ挙げておきたい。高齢者の都心回帰に関する記述である。(pp.123-124)

  • 近い将来、高齢者が都市に集中する。なかでも東京における人口増加がめざましい。日本の総人口は2004年の約1億2,778万人をピークに、以後は減少しているが、東京の人口はその後も増え続け、2015年にようやくピークの約1260万人になると推計されている。東京では、すでに2000年の時点で65歳以上が総人口の15.9%を占めていた。団塊世代の全員が定年を過ぎた2010年には5人に1人、15年には4人に1人が65歳以上となる。
  • 東京への一極集中はさらに進む。日本の総人口は2030年になると、2000年にくらべて7.4%減少するが、東京都は0.7%増加、神奈川県は1.6%増加すると予測されている。
  • 都心から離れた郊外の住宅街では、すでに居住者の高齢化が進んでいる。分譲後、数十年が経過した団地などは地域全体が衰退し、首都圏内における”過疎化”が目立つようになってきた。子供たちの世代は都心のマンションなどに移り住み、衰退した地域はさらに地価が下落して新規参入者が減っていく。このような地域の周辺では、生活物資を売る店舗の閉店も相次ぎ、車に乗れない高齢者にとっては生活が不便になり、防犯面でも問題が多くなる。そのため、さらに高齢者が都心のマンションなどに移り住む傾向が強くなるだろう。

これらはこれまでの僕の経験を裏付するものである。僕が現在住んでいる三鷹市も人口減少が2015年頃から始まると予測されている。団塊世代が退職し、社会保障給付の受け手に回るため、税収は落ち込み、逆に歳出は増える。三鷹市はそれを予測しているから、シニアSOHO事業のように、地域に戻ってきた団塊世代に地域内での起業を支援して事業税の税収増を図ろうと試みているのである。

また、郊外の住宅街の状況は、多摩ニュータウンを描いていると思われる重松清の著作で度々取り上げられている。上記で述べた記述とまったく同じだ。それにこれは東京での都心-郊外の関係だけではなく、地方でも当てはまる。農村部での生活は高齢者には不便であり、生活の便のよい地方都市に人が集まる傾向が見られる。僕の母の実家のある町はかろうじて近鉄線のワンマン電社やバスが運行しているが、これが人口減少の影響で廃止にでもなったら、多くの高齢者は電車やバスを使って地方中核都市の病院に通ったりすることが難しくなる。公共交通手段が利用できなくなるのは、農村部での生活には非常に大きな打撃である。

この本は書店で購入するつもりである。時々読み直して、自分の立ち位置を確認し直すことをやっていきたいと思う。


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