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途上国の高齢化 [仕事が好き]

日本の少子高齢化が進んで2007年頃には人口が減少に転換するのではないかというので大騒ぎになっているが、高齢化が進んでいるのは先進国だけじゃなく、途上国も同じだということはご存知だろうか。

人口増加が著しい社会では人口構成が富士山のような綺麗な裾野を示すのだが、高齢化が進むとこの山の高さが増し、裾野が縮小して釣鐘のような形態になるが、国連統計で2050年の姿をそうぞうしてみると、アフリカですら釣鐘状を示しつつあるのだそうだ。高齢化社会への入り口は年齢65歳以上の高齢者の人口比率が7%を超えることであるが、2050年にはアフリカですら7%を超す推計値が出ている。

最も劇的なのは東アジアだ。高齢化社会入りから14%を超える高齢社会入りするのに日本で25年かかっているが、アジアの多くの国はそれを20年未満で迎えるという。アジアは豊富な労働力を背景に工業化を進めて、先進国や先発途上国へのキャッチアップを進めてきたが、キャッチアップを実現する前になんと高齢化社会を迎え、就労年齢人口がどんどん高齢化していき、経済の潜在成長力が低下局面を迎えることも考えられるのだ。

僕たちが大学で開発経済学を勉強した頃は、労働過剰経済を前提として、この過剰労働力を労働集約型の都市部の産業が吸収していく形で経済発展が進み、やがて転換点を迎えて労働不足局面に入り、賃金が上昇し始める、それが産業高度化に繋がっていくというシナリオを学んだ。高齢化社会を迎えるとこのシナリオに変更を余儀なくされる。

高齢化が進めば政府の財政収入は増えない。増えないのにこれまで成長重視の戦略の過程で整備が進められてきた社会資本などは老朽化し、更新需要が高まってくる。財政資金だけでは社会資本の更新ができなくなってくるのだ。日本でも、今地方自治体の水道公社が丁度設備の更新期を迎えている。しかし、更新に必要な財政資金の調達も苦しく、また水道技術者も定員増がなかなか認められない中でどんどん高齢化が進み、維持管理を行なうための後進の人材も育っていない。もはや個々の地方自治体単位の公共水道事業は立ち行かなくなってきている。そこで検討されているのが水道事業の民間開放(PPP、Public-Private Partnerships)である。おそらくアジアの途上国においても、社会資本整備では民間事業者への開放が進められる必要があるだろう。

社会保障制度はいわずもがなだ。日本の年金制度がこれだけ叩かれているのだから、日本の制度を持っていってもアジアでは立ち行かないだろう。アジアの社会保障の制度設計において、手本になる先行事例はない。考えていかねばならないのだ。

援助の世界も様変わりだろう。リプロダクティブヘルス分野での協力はいずれ再考を強いられるだろうし、社会資本整備といった日本がお得意の協力も、全額援助で支援するような姿は少なくなっていくのではないかと思う。日本の技術やノウハウを途上国に移転するような話ではそもそもないのだから、新しい制度の設計は先行国のグッドプラクティス、バッドプラクティスを参考にしつつ皆で考えていかなければならない。ナレッジ共有によって一緒に考えていくような知的交流が今後重みを増すのではないかと思う。

援助では、今そこに存在する課題に対する取組みの支援はできるが、10年後、20年後に確実に起こるであろう問題に今から取り組むような予算配分がなかなかできない。途上国の高齢化対策というとたいていの援助関係者は「なにそれ?」という反応なのだ。地道にこの問題への理解者を増やしていくよう努力していかなければならない。


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