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『新 忘れられた日本人』 [読書日記]

新忘れられた日本人 (ちくま文庫 さ 14-10)

新忘れられた日本人 (ちくま文庫 さ 14-10)

  • 作者: 佐野 眞一
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: 文庫
内容紹介
ノンフィクションの巨人が膨大な取材ノートから再び紡ぎだした、忘れえぬ日本人たち。悪党、無私の人・・・・。 すべての人間類型がここにある。
【MT市立図書館】
いやぁ、このタイトルの付け方はズルいな。扱われている人物のほとんどは「知る人ぞ知る」人ばかりで、「忘れられた」人ではない。おそらく、このタイトルで「宮本常一」を期待して本書を手に取っちゃった読者は多いのではないだろうか。で、読み始めて数節読んだだけで、「違うやろ」と戸惑った読者も、相当数に上ったのではないかと思う。

宮本常一の『忘れられた日本人』を有名にした「土佐源氏」や「梶田富五郎翁」は、僕の初読から10年以上が経過している今でも、どんなお話だったか覚えている。強烈な印象を読者に残す作品だが、世にその名をとどろかせたような輝かしい過去があるわけではない、庶民の中の1人ひとりだ。それに比べて、『新 忘れられた日本人』で扱われた人々は、それなりに世に名をとどろかせたか、あるいは世に名をとどろかせた人の背後にいた重要人物だった人ばかりである。一顧だにされない市井の人々とは違い、ちょっと記憶にとどめておいてもいいぐらい、強烈な個性や強烈なインパクトを残した人物ばかりといえる。「忘れられた」ではなく、「見落とすべからざる」人々だろう。「忘れる」というのとは全然違う。

いくら宮本常一の評伝を書いた人だからといって、この使い方はしちゃいけないのでは?

それを除けば、面白い人物ばかりのミニ評伝だった。週刊誌で連載されていたそうで、一話一話が短く、読みやすいし、重いエピソードから、ハチャメチャで読んでて思わず笑えるエピソードまでいろいろあった。作家としての佐野眞一の筆力、それに、取材対象を選ぶセンスにはまあまあ感銘は受ける。

アマゾンの書評には、「著者の作品の目次のようだ」とのコメントもあった。「目次」というのは良い得て妙だと僕は思った。なんか、単行本を書くために行った取材の中から切り出したエピソードで各話をまとめている感じで、そうすると「詳しくはこちらの作品で」と誘導されそうになる。読んでみたいと思える評伝も確かにある。この連載は、1年以上にわたって毎週自分の著作を宣伝できるいいメリットがあったのではないだろうか。

甘粕正彦や江副浩正の評伝とか、読んでみたくはなった。

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