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3Dプリント自助具の記事はありがたいのだけれど [ブータン]

ファブラボが障害者の自助具を開発
FAB Lab developing assistive devices for PWDs
Nidup Lhamo記者、Business Bhutan、2023年7月29日(土)
https://businessbhutan.bt/fab-lab-developing-assistive-devices-for-pwds/

【ほとんど抄訳【抄訳(www.DeepL.com/Translator(無料版)翻訳を筆者編集)】】
国際協力機構(JICA)の支援を受けて、ブータン脳卒中財団(BSF)は、ジグメ・ナムゲル・ワンチュク・スーパーファブラボ(JNWSFL)と共同で、障害者(PWD)向けの自助具を開発している。このプロジェクトの主な焦点は、3D印刷技術を活用して、脳卒中を患った人に特化した介護用デバイスを作成することである。

この自助具の導入は、障害者支援におけるデジタル技術の可能性の高まりを示すものであり、ブータンにとって重要なマイルストーンとなる。BSFのダワ・ツェリン事務局長は、このような装置の設置は、3D印刷ソリューションを通じて障害者の日常生活を支援することを目的としていると述べた。

ダワ氏によると、現在は試作段階であり、この自助具の開発はわずか2年前に始まったばかりだという。「チームは試行錯誤のアプローチをとり、ユーザーからのフィードバックを集め、認識された要件ではなく実際のニーズに基づいて設計を改良します。目標は、最終製品が効果的で広く受け入れられるようにすることです」とダワ氏は述べた。

印刷された自助具は、脳卒中患者にカスタマイズされたサポートを提供し、特定の要件や課題に対応する。脳卒中患者のニーズは多様であるため、各デバイスは個人に合うように調整され、パーソナライズされたソリューションとなる。

この取り組みが期待されているにもかかわらず、自助具の開発には課題がある。ダワ事務局長によると、「自助具の開発は初期段階にあるため、原材料の入手に課題があり、創造性そのものが課題」だという。「プロジェクトが進むにつれて、この21世紀の自助具が、ブータンの脳卒中患者やその他の障害者の生活の質を大幅に向上させることを期待しています。」

BSFには約100人以上の脳卒中患者が登録されており、JDWNRHでは1日に約1人の脳卒中患者が治療を受けている。脳卒中回復者の自助具の開発を通じて、脳卒中患者の約15~20%が補助を受けられるようになってきている。BSFは1日約9時間、患者の補助を行っている。

「3Dプリンターは必要ありません。必要なのは開発と設計のスキルだけで、出力は近くのファブラボでできるので、出力のために別のスーパーファブラボを持つ必要はありません」と彼は続けた。「3D印刷技術は、起業家に未来をもたらし、収入を生み出し、持続可能なものにもなります。私たちが輸入しているのはフィラメントだけですが、これは現在、科学技術カレッジ(CST)で生産しているので、それも購入する必要はありません。

BSFは医療機器には携わっていない。「私たちはリハビリに携わっていますが、技術的な設計はすべて日本が行い、私たちはそれを模倣しているだけなのが良い点です」と事務局長は付け加えた。

BSFは、JICAの新規事業タスクと協力して、3Dプリンターで印刷したカラフルな補助器具をイベントで紹介した。ダクツォ青少年職業訓練センターの創設者であるリグズィン・ペマ・ツォゲル氏によると、3D印刷技術は特別なニーズを持つ子供たちをも支援すると述べた。彼女は、3D印刷技術は彼らの生活を向上させると語った。

特定の取材対象にだけ依存して、中途半端な理解に基づいて記者が記事を書いてしまうと、誰もハッピーにならない。この記事などその典型で、ダクツォの創業者に申し訳程度にインタビューして、あとのほとんどの情報はすべてBSFの事務局長とのインタビューだけで仕入れ、それで記者は記事を書いてしまった。

事務局長の理解がおかしいのか、記者の理解の仕方がおかしいのか、真相はどうなのかはわからない。事務局長は、記事の中でカッコ書きで書かれている発言部分については確かに自分はそう言った、だが他は記者の書き方がおかしいと弁明していた。しかし、もしそうだとすると、事務局長本人にも相当な誤認があることになる。

1)先ず、この事業はJICAの対ブータン支援とは異なる財布から予算を取ってきている。BSFを「支援」しているわけではなく、一過性のワークショップというイベントの「共催」という形態をとった。それを「支援」と言われ、「プロジェクト」の一環だとされている。JICA側ではプロジェクトをやっているという認識はないし、技術的な設計をすべて日本側で請け負っているという認識もない。

2)「スーパーファブラボ(JNWSFL)と共同で」と書かれた点についても遺憾だ。Business Bhutanのこの記者は確かにFAB23カンファレンス会場であるスーパーファブラボには来ていた。しかし、スーパーファブラボは場所を提供しただけで、サイドイベント1つ1つの実施には関与していない。実際の資機材や人材(技術協力専門家としての僕自身)は、プンツォリンのファブラボCSTから持ち込んでいる。また、協力団体としてファブラボ品川も入っている。FAB23のウェブサイト上では、このワークショップの概要で、この建付けは明記されている。しかも、この概要の最初のドラフトは、事務局長にも内容を見てもらって確認を取った筈だ。それなのに、なぜこういう表現にされたのか理解に苦しむ。

《ワークショップの様子》

3)CSTはフィラメントの生産などしていない。「フィラメントは輸入しなくてもいい」というのは完全な誤りである。CSTがフィラメントの生産をしていると事務局長が思い込んだ理由は、このワークショップの前日に行われたファブラボCSTのパネルトークで、登壇したCSTの卒業生が、自身の卒業製作で、ファブラボの機材を用いてフィラメント製造装置を試作した体験談を話すのを、事務局長が見ていたからだろう。しかし、これはあくまで卒業製作としてのプロトタイプであって、実装に至るには時間もかかる。ましてや彼が作ったのはペットボトルのリサイクルが目的で、自助具製作で用いられるPLAやTPUといったフィラメントは別の、PETGというフィラメントを作るための装置である。

4)自助具は脳卒中回復者のためだけのものではない。今は3Dプリント自助具自体がブータンでは普及していないため、他の障害者団体はあまりピンと来ておらず、BSFが最初に関心を示してくれたというに過ぎない。あまりBSFが独り占めしているようなニュアンスの提灯記事が出てしまうと、BSFにとってもよくない。

FAB23カンファレンス期間中、僕も含めてJICAの新規事業タスクの面々は、事務局長やBSFのスタッフの方々と過ごす時間が長かった。お付き合い下さったことにはとても感謝している。ただ、Business Bhutanの記者が取材に来ていたワークショップを中座してインタビュー応対に時間を費やしていた姿や、それ以前に、BSFのオフィスで行ったオープンデイの時に、脳卒中回復者の自助具デザインや3Dプリント出力の段階になると、BSFのスタッフが一斉に引いてしまい、お茶出しに徹して一緒に学ぼうとする姿勢を見せなかった点を振り返ってみると、何度もリマインドしても、結局のところ「共創デザイン」という根幹の部分がまだ相手には理解されていなかったのだなというのを認めざるを得ない。

《FAB23期間中、BSF事務局で別途開いたオープンデイの様子》

「プロジェクト」的なものが描けるとしたら、BSFのスタッフが3Dモデリングのスキルを修得して、さらに自分たちで3Dプリント出力ができるようになることが大前提だと僕は思っている。ファブラボCSTがあってそれなりに「自助具デザイン」を意識しているプンツォリン周辺でこれに取り組むのならともかく、そういう土壌がないティンプーで、僕たちに丸投げのプロジェクトを期待されても困る。

Business Bhutanの記者も、せっかくワークショップ会場に取材に来たのに、実質的にワークショップを動かしていた僕たちにいっさい取材せず、BSF事務局長へのインタビューだけで記事を書いてしまったというところには大きな問題があると思う。

3Dプリント自助具に光があたるのは嬉しい反面、内容にはツッコミどころが多くて、多くのブータン人読者には、早く忘れて欲しい内容の記事だった。また、ここに書かれている誤解については、BSFとの間で少しずつでも認識を正していく必要があると痛感させられた記事でもあった。

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