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『目の見えない人は世界をどう見ているのか』 [読書日記]

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

  • 作者: 伊藤 亜紗
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
私たちは日々、五感―視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚―からたくさんの情報を得て生きている。なかでも視覚は特権的な位置を占め、人間が外界から得る情報の八~九割は視覚に由来すると言われている。では、私たちが最も頼っている視覚という感覚を取り除いてみると、身体は、そして世界の捉え方はどうなるのか―?美学と現代アートを専門とする著者が、視覚障害者の空間認識、感覚の使い方、体の使い方、コミュニケーションの仕方、生きるための戦略としてのユーモアなどを分析。目の見えない人の「見方」に迫りながら、「見る」ことそのものを問い直す。
【購入(キンドル)】
実は、3月に一時帰国した際の健康診断で、1項目だけ「再渡航不可」の評価をもらってしまった項目がある。それは視力であり、僕の右目は子どもの頃からあった乱視が進み過ぎ、目の前の文字も、相当大きな文字じゃないと識別できないぐらいにぼやけてしまっている。

健康診断で視力検査を受けた際、「これはどちらに向かって開いていますか?」と訊かれ、僕は思わず、「もう検査始まったんですか?」と尋ねた。それくらいぼやけてしまって、目の前が真っ白だったのである。

乱視が進んでしまうから、右目でものを見る練習をするよう、10年ぐらい前から注意を受けていた。でも、右目でものを見ろと言われても、右目だけを開けて見続けるわけにもいかない。一時は左目にアイパッチをつけてみたりもしたのだが、ぼやける右目だけでは仕事にも支障があるので、結局長続きしなかった。

左目だけは今でも視力1.2~1.5は確保できているので、そのおかげで「再赴任不可」を免れた。まあ、長期駐在もこれが最後だと思っているので、任期終了までは左目一本でなんとかやり抜きたい。

とまあ僕自身、すでに視覚障害者の仲間入りといえるに近い状況にあるため、2015年に相当話題になった本書も、今更ながらに気になって読んでみることにした。最初から見えなかった場合と、生後のどこかの時点で視力を喪失した場合とでは、五感の感覚の使い方もたぶん違うので、「目の見えない人」の一般化はきっと難しいだろうが、それでも、視覚情報が入って来づらくなった場合、何でそれを補ったらいいのか、あるいは補うのではなく、視覚情報が入って来づらいことでメリットになることは何かとか、そういうのをあらかじめ知っておくのに、本書のような本は読んでおいてよかったと思う。

 障害と無関係な人はいません。誰しも必ず年をとります。年をとれば、視力が落ちる、耳が遠くなる、膝が痛む―――等々、多かれ少なかれ障害を抱えた身体になるからです。
 日本はこれから、どの国も経験したことのないような超高齢化社会に突入します。社会に高齢者が増えるということは、障害者が増えるということでもあります。さまざまな障害を持った人が、さまざまな体を駆使してひとつの社会をつくりあげていく時代。つまり高齢化社会になるとは、身体多様化の時代を迎えるということでもあります。医療技術や工学技術の発展も、この多様化を加速する要因でしょう。
 そうなると、人と人が理解しあうために、相手の体のあり方を知ることが不可欠になってくるでしょう。(中略)これからは、相手がどのような体を持っているのか想像できることが必要になってくるのです。多様な身体を記述し、そこに生じる問題に寄り添う。そうした視点が求められているように思います。(p.163)

今回は、老化や乱視が進んで自分はどうなっていくのか、どうあるべきかを考えてみたくて本書を読んだわけだが、視覚に困難がある人の体のあり方を知るという視点でも、本書は参考になる記述、「なるほど」と思わされる記述が多かった。

体の不具合は人によって違うし、不具合の起こった経緯も人によって違う。一般化はできないのが本書の記述で、おそらく著者の接した人の個別具体的な事例の紹介であっただけかもしれない。その都度その都度、相手の体のあり方を知るという努力が接する側にも必要という形で、結論を一般化することは、本書についてはできるだろう。

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