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スーパーファブラボの概要 [ブータン]

王子殿下、JNWSFLとファブラボネットワーク発足を祝福
HRH Gyalsey inaugurates JNW Super FabLab and fablab network
無記名記事、Kuensel、2022年6月6日(火)
https://kuenselonline.com/hrh-gyalsey-inaugurates-jnw-super-fablab-and-fablab-network/
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【要約】
王子殿下は土曜日、ティンプーテックパークにおいて、ジグミナムゲルワンチュクスーパーファブラボ(JNWSFL)及びブータンにおけるファブラボネットワークの発足を祝った。

ファブラボネットワークとは、パロ県パンビサのDruk Gyalpo’s Institute、ゲレフのJigme Wangchuck Power Training Institute、ロベサの自然資源単科大学(CNR)のバイオラボという、3つのファブラボから構成されている。

ファブラボとは、米国MITにおいて開発されたコンセプトで、誰もがほとんど何でも作れるコンピュータ制御によるツールやマシンが配備された施設。

JNWSFLは米国国外のスーパーファブラボとしては世界で2つめとされ、ハイエンドで最新の機械が配備されている。国内の他の小規模なファブラボとともに、JNWSFLはこれからの企業家や自分で何かを作りたいと考えている人々に、上級のCNCマシンやロボティックス、3Dプリンティング、3Dスキャン、画像解析、ロジックアナライザ、電子回路製作、その他アイデアを具体的に試作につなげるのに使えるデジタル工作機械へのアクセスを提供する。

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JNWSFLとブータンファブラボネットワークは、イノベーションとクリエイティブな文化を醸成するプラットフォームを作りたいとする国王陛下のビジョンに沿って行われたイニシアチブの1つである。これは「ブータンにおけるイノベーションとファブリケーションを通じた発明」という上位プロジェクトの1つで、好奇心を持つ人々に、我々が直面する課題に対する次世代のソリューションを作り出すようインスパイアすることを目的としている。これらのファブラボは、あらゆる年齢層の人々を巻き込み、活力ある学習環境を作り、この国のスタートアップエコシステムを強化するためのツールやプラットフォームを提供することが期待されている。

JNWSFLはドルックホールディングス(DHI)、王立STEM教育協会(RSSTEM)、MITビッツ&アトムズセンターによって共同設立された。プロジェクトのスポンサーは米国国務省で、ワシントンDCのブータンファンデーションを通じて資金拠出が行われ、DHIとの協調融資が行われた。(中略)

国内の他のファブラボは、ブータン政府が、労働人材省を通じて資金拠出したもので、国民総幸福量委員会(GNHC)が支援した。

JNWSFLはDHIのイノテック部により管理運営される。他の標準ファブラボはDHIを戦略的調整機関としたうえで、各機関がそれぞれ管理運営を担う。

土曜日の開所式から1日はさみ、週明け月曜日のクエンセルが、第1面でこの発足式について取り上げていた。BBSの報道が王子殿下の初の公務の方にもかなりウェートを置いた報じ方をしていたのに対し、クエンセルはJNWSFLと「ブータンファブラボネットワーク」というのに重きを置いた報じ方になっている。

前回、僕は、この晴れやかな開所式に、ブータン最初のファブラボであるFabLab Mandalaから誰も来ていないことに違和感を覚えたと述べた。

この記事にある「ファブラボブータンネットワーク」が、FabLab Mandala抜きで定義されていることも気になった。僕は、FabLab Mandalaやこれから2カ月後にできるFabLab CST(プンツォリン)も加えて、広義の「ファブラボブータンネットワーク」を作ろうという働きかけをDHIにしていたところだったので、まさしく同じ言葉が、DHIの狭い定義に基づいて世に出てしまった。ここだけで固まって動かないでほしいものだ。

ただ、施設については非常に立派で、例えば他のファブラボで設置されていた工作機械が壊れた時、パーツを海外から取り寄せなくてもここで複製できるとすれば、JNWSFLがあるメリットは大きい。スタッフも12人配置していて、今のところは機械操作習熟に時間を割いているが、それだけの陣容でスタートできるのであれば、事業もそれなりにダイナミックに展開されるのを期待したい。

でも、記事で述べられているような「誰でも来て自分の作りたいものを作れる」という雰囲気かというと、ちょっと違う。例えば、高校生ならともかく、初等中等の子どもたちが自分の作りたいものをデザインしたので3Dプリントやレーザー加工してみたいと思った時、JNWSFLに気軽に来れるかといえば、無理だろう。テックパークは場所が市街地から離れているし、正面玄関を入るといきなり受付がデンとあって、気軽に手が届くところに工作機械は見えない。そもそもハイエンドなマシンが多いので、小さな子どもを作業エリアに入れて、走り回るのを良しとはできないだろう。そのあたりは、FabLab Mandalaの方がアクセスしやすい。また、パンビサのFabLab DGIは、地域住民が気軽にアクセスできる場所にはない。麓のボンデにあるAMCやFMCLなどといった農業関係機関の関係者も利用できない。もっぱらSTEM教育向けの研究開発の拠点となるらしい。

あれらの高価で高性能のマシンを、誰でも使っていいとはたぶんならないだろう。あれだけのマシンを揃えているのだから、少なくとも政府からは「こういうのできないか」との注文は引きも切らないに違いない。でも、そういう政府の職員が、スタッフの助言を受けながら自分でDIYするようなことをやってくれるのかといえば、おそらくない。研究開発の受託や、生産受託などはきっと行われるだろうが、うまくやらないとメイカーの層の拡大にうまくつなげられないのではないかと危惧する。(これ、FabLab Mandalaが辿ってきた途である。)

加えて、「自分で作る」「一緒に作る」といった原則とはいっても、独自で回路基板を作ってものを動かしたりするのは、僕も含めてまだ苦手な人が多いから、自分で何か作ろうと思っている人が、ここにあるハイエンドのマシンの操作を必要とするところまで到達するのには、まだまだ時間がかかりそう。

僕はそれでも、JNWSFLが事業の選択と集中を図るなら、そういう研究開発受託や生産受託にターゲットを絞って、スタッフを集中投入して、ハイエンドのニーズに応えるというのはやっていったらいいと思うし、実際そういう形に事業は収斂していくのではないかと予想もしている。で、底辺拡大とかDIY普及の部分では、FabLab Mandalaが生き残っていけるのではないかと…。

JNWSFLも開所式での陳列用のレイアウトにしていた。どこがオフィススペースになるのか、協働が推奨されているファブラボの原則に従えばどこがコワーキングスペースになるのか、今後レイアウトの変更が行われるだろう。いずれにしても開所式だけを見ていてはわからない。今後どう展開していくのかは要注目だ。また、クエンセルの編集主幹が社説でどうこれを扱うのか、FabLab Mandalaにも言及するのか否か、明日以降の記事も注目だ。

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