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『外国人が熱狂するクールな田舎の作り方』 [仕事の小ネタ]

外国人が熱狂するクールな田舎の作り方 (新潮新書)

外国人が熱狂するクールな田舎の作り方 (新潮新書)

  • 作者: 山田 拓
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/01/16
  • メディア: 新書
内容紹介
岐阜県最北端の飛騨市に、世界80ヵ国から毎年数千人の外国人観光客を集める人気ツアーがある。その最大の売りは「なにげない里山の日常」だ。小学生のランドセル姿に、カエルの鳴き声の拡がる田んぼに、蕎麦畑の中に立つ古民家に、外国人観光客は感動する。なぜ、なにもない日本の田舎が「宝の山」になりうるのか。地域の課題にインバウンドツーリズムで解決を図った「逆張りの戦略ストーリー」を大公開。

今、日本では、「インバウンド」が大流行のようで、多くの本が出版されている。そのうちの1冊をキンドルでダウンロードして、Wifi接続がほとんど期待できないブータン東部の旅に携行し、滞在中に読んだ。岐阜県出身の僕には、「飛騨市」と言われても飛騨地方なんだという以外にピンとくる自治体名ではないが、神岡町や古川町、宮川村等が合併してできた市だと言われれば、「ああ、高山の北、富山との県境の自治体だな」と想像はできる。そして、飛騨古川といえば、2016年に大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』の舞台になった地でもある。

岐阜県飛騨地方といったら、高山や白川郷、郡上八幡等が有名すぎるぐらいに有名で、岐阜県の北の果ての飛騨市については、岐阜県出身の僕ですら実は訪れたことがない場所である。でも、本書を知ってから飛騨市の画像検索をかけてみると、そこに出てくる谷間の風景は、もう少し家屋の数が少なければ、何だかブータンと似ているなという雰囲気が感じられる。中でも神岡城から神岡の市街地を見下ろすポイントは結構多くの人が画像アップしていて、それを見ていると「ティンプーかよ」と思いたくもなる。

そんな日本国内の僻地のお話。そうした日本の農村の原風景が今でも残っていそうな地に、その地と関係がなかった外部者が入り込んで、インバウンドツーリズムで成果を上げていく経過を、その当事者が失敗経験も含めて語っておられる。

成功する地域づくりを学びたいと、ブータンから日本の地方を訪れる視察団に、毎回、「今の姿ではなく誰が何をどうして今の姿になって行ったのかを見て来て下さい」と言って送り出すのだが、多くの場合、今の姿だけ見て「日本はすごい」と驚嘆して帰って来る。1、2週間の短期視察ではそこまで洞察するのは難しいのかもしれないし、残念ながらこうした視察団に、「昔はこうだったんですよ」と口頭で説明する以外に、過去から現在につながっていくストーリーをわかりやすい文章やコンテンツにまとめるような取組みが、受入側にもしっかりとできていない。

まあ、これは受入側の問題というよりは、そもそも受け入れる側には「我々のこんな取組みが本当に参考になるんですかね~」という半信半疑な部分もあると思うので、むしろ間に入って視察をアレンジしようと奔走する人々が、それくらいのことはやるべきだと僕は思っている。でも、実際そんな英文コンテンツは少なくて、結局行って実際に見てみないとわからない、でも短期間の視察では本当のキモの部分にまで踏み込めない、といった堂々巡りのジレンマに陥る。

インバウンドビジネスは、ビジネスとしての持続性を考えればこうしたコンテンツ作りもその営業活動の一部と捉えて事業者自身が取り組んで下さるようなものだと僕は思っている。本書にしても、この飛騨市における『美ら地球』の創業者が、これまで10年の事業の歩みをわかりやすい文章でまとめたもので、これを英訳するだけでも、結構示唆に富んだ優れたコンテンツになり得ると思うし、多分著者自身もそれは考えておられるのではないかと思う。

ブータンも産業振興の柱の1つにツーリズムを据え、インバウンドの呼び込みをいろいろ図ろうと考えられているが、よくよく見ていると「来た人をどうもてなすか」にはそれなりの努力が払われているようだが、「来る人をどれだけ増やすか」という点への取組みが意外と薄いように思える。国全体としてはそれでもやられているようだが、国内どこへ行っても「ツーリズム」と言われる割に、その地域資源のラインナップが金太郎飴のようになっていて、「それじゃペマガツェルは他地域とどこがどう違うんですか」という問いに十分応え切れていない。地域資源の活用の仕方、見せ方にはもうちょっと工夫が必要だと思うし、域外に対する営業のかけ方にはそれ以上の努力が求められる。

「空港から遠すぎる」というのは言い訳にしか聞こえない。実際、本書の舞台である飛騨なんて、交通のアクセスが良くない土地だ。それでも外国人観光客が訪れるということを、本書の事例は証明している。だから、客が来ない言い訳をいろいろされる際に、「いやそれはやらない言い訳に過ぎません、現に日本にはこんなところもあるのですよ」と言うのに、本書は使わせていただけるかなと思っている。

「WhatではなくHow」という著者の指摘はその通りで、その著者の10年間のHowがコンパクトにまとめられている良書だと言える。いろいろなアイデアをいただいた。本書を読んでいたら、僕自身も行動を起こしたくなったと、最後に付記しておく。

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