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薬物中毒対策はみんなの協働で [ブータン]

薬物中毒対策は皆の共同責任
A collective responsibility
Kuensel、2017年4月17日、Sonam Yangdon記者
http://www.kuenselonline.com/a-collective-responsibility/

【ポイント】
4月14日に開かれた主要閣僚とメディアとの定期懇談会の席上、トブゲイ首相は、薬物中毒問題には国をあげて取り組むことが必要だと述べた。「これは皆一人一人の問題である」と明言した。これに向けて、5月3日から始まる次期国会では、薬物中毒に関する法制度の改正が審議される。

警察の推測では、ブータンには薬物中毒者が約11,000人はいるという。過去4年間で2,190名の薬物中毒者が摘発されている。しかし、首相によれば、中毒者の摘発だけでは不十分であり、中毒者に対する司法支援を拡充し、一度の過ちが刑務所で長く過ごす最悪の結果にならないよう配慮していきたいという。

また、首相は、ブータン薬物規制庁(BNCA)が現在、薬物中毒者の更生施設への収容を義務化する法制度を準備中で、そのためにBNCAでは、更生施設の追加建設を進めているとの由。

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幸か不幸か、薬物中毒とおぼしき若者が近くにいないので、この問題を身近で感じる機会がこれまで少なかったが、過去数週間の間に、薬物中毒から立ち直って社会復帰を果たした若者にスポットを当てた記事が度々新聞紙上で取り上げられるようになり、僕自身も現在ツァルナで建設されている更生施設を見学したこともあって、この問題は僕が思っているほど楽観視はできないというのを徐々に感じ始めているところである。

もし警察の推定値通りに11,000人も薬物中毒者がいるとしたら、つまりはブータン人の70人に1人は薬物中毒者ということになる。これは僕が1日に道ですれ違うブータン人の中に、結構高い確率で薬物中毒者がいるという計算になる。ましてや、この問題は首都の方が深刻だろうから、その確率はさらに上がることが予想される。

更生施設の増設が必要なほど深刻さを増していると言いつつ、この記事を読んだだけでは、更生施設ではどんなプログラムが行われているのかは書かれていないし、どんな人材が更生のために傭上されているのかもわからない。僕の限られた見聞から想像するに、取りあえず薬物へのアクセスの難しい人里離れた土地に隔離して、そこで外界と切り離して自給自足の生活を送らせ、そこで木材加工のような特殊技能を身に付けさせ、社会復帰の際の準備に充てさせようというところあたりが考えられているようだ。

勿論、問題はそこで一見立ち直ったように見える人でも、社会に復帰すると何かのきっかけで元の薬物中毒に戻ってしまう事態があり得ることである。アルコール中毒でも同様だろう。本人の意志にだけ任せておいては何ともならない事態も考え得るので、更生施設でのプログラムを終えたら更生プロセスは終了ということではなく、施設を卒業した後のフォローアップも必要なのだと関係者の方から聞いた。

僕自身が不勉強なので、的外れな意見かもしれないが、更生施設で習得できる「手に職」というのが木材加工では、社会復帰してもそれで食っていける保証はそれほどないのではないかというのが気になる。どうせならマルチスキル指向の訓練を施せるのが良いのではないか。既存の職業訓練校では、水道は水道、自動車整備は自動車整備、溶接は溶接、といった具合に、単一技能しか教えない。本当は職業訓練校がマルチスキル指向に大きく舵を切ってくれたらこの国は大きく変われると思うが、そうした縦割り学科制といったしがらみが元々少ない薬物中毒者更生施設なら、最初からマルチスキルを目指してもいいのではないかと思う。

要は木材加工だけじゃなく、乳製品加工もやる、電気工事の知識もあって家の営繕もできる、料理もできるし、農作業だってやれる―――そんな人材を育てられれば、今のブータンでは相当得難い存在となれると思う。自分が今社会に出ている若者よりも秀でていると思える自信が付き、自分が社会に求められているという感覚が得られれば、自尊心が高まり、薬物以外で没頭できるものが生まれるのではないか。

マルチスキルなんだから、薬物中毒更生担当官みたいな人が少人数で対応するというよりも、多くのアクターがその持つ技能を少しずつシェアしていくのでいい。ここでも、コラボが大事なのだと思う。それも、多少レベルの高い、外国人の技能や技術であってもいい。スティグマから立ち直ろうと必死にもがく若者なら、お気楽な若者に比べて、難しい技能や技術であっても学ぼうとするだろう。

―――というのは僕の思い付きに過ぎないが、実際に薬物中毒に陥った若者と接してみて、この仮説が本当に有効だと感じたら、僕自身何らか取り組めないものかと思わないでもない。

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