『村上海賊の娘』(上巻) [読書日記]
内容紹介感想は下巻を読んだ後で改めて書きたいところだが、今年の本屋大賞受賞作品だけに簡単に借りられず、ようやく上巻だけでもゲットしたが、下巻がいつ借りられるかわからない。記憶が薄れるのもなんなので、上巻だけででも取りあえずの感想を書いておきたい。
『のぼうの城』から6年。4年間をこの一作だけに注ぎ込んだ、ケタ違いの著者最高傑作! 和睦が崩れ、信長に攻められる大坂本願寺。毛利は海路からの支援を乞われるが、成否は「海賊王」と呼ばれた村上武吉の帰趨にかかっていた。折しも、娘の景は上乗りで難波へむかう。家の存続を占って寝返りも辞さない緊張の続くなか、度肝を抜く戦いの幕が切って落とされる! 第一次木津川合戦の史実に基づく一大巨篇。
上巻は、前半は村上海賊を物資輸送の護送に加わってもらいたい毛利家の交渉人と村上武吉との交渉の描写が中心で、それに絡む武吉の愛娘・景も度々登場するが、後半になると泉州武士を主力とする織田勢の大坂本願寺攻めの描写が中心となっており、それを観戦している景の存在感が薄れてしまった感がある。上巻だけ読んでも、これが本屋大賞受賞作品だとはなかなか信じられない。
この時代はNHKの大河ドラマ等でも扱われることが多いので、織田信長や羽柴秀吉等を中心とした戦国時代から天下統一、徳川家康の幕府開府に至るまでの歴史は、多くの人が知っている。それが、今年の大河ドラマで扱われた黒田官兵衛を中心とする播磨国統一の歴史といった、中央から離れた局地での興亡史になると結構理解が怪しくなる。和田竜さんが扱うのは、『のぼうの城』の場合は石田三成による忍城攻防戦だし、『村上海賊の娘』の場合は織田軍の大坂本願寺攻めと本願寺を支援する毛利勢が織田勢と衝突した木津川合戦である。一般にはあまり知られていない歴史の断片なので、時代背景などの解説が所々で入れないと話についていくのは難しいかもしれない。こうした解説が入ることについては人それぞれ意見もあろうが、こういう時代の一側面を切り取っての描写になると、解説はやっぱりあった方がいいのではないかという気がする。
上巻ではあまり活躍の場がなかった村上景が、下巻でどのように描かれるのか、読む機会を気長に待ちたい。
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