SSブログ

『たまさか人形堂それから』 [読書日記]

たまさか人形堂それから

たまさか人形堂それから

  • 作者: 津原 泰水
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/05/24
  • メディア: 単行本
内容紹介
OLをリストラされたことをきっかけに、祖父母から譲り受けた「玉阪人形堂」店主となった澪。人形制作に関しては素人の澪だったが、押しかけアルバイトの人形マニア・冨永と、高い技量を持つ訳あり職人・師村の助けもあって、人形堂はそこそこにぎわいを見せていた。一時店はは閉店の危機に見舞われたが、資産家の坊(ぼん)でもあった富永が共同経営者の立場に立つことで、その危機は去った――。今日もこの小さな店には人形に関する様々な難題が持ち込まれる。赤いマーカーの汚れがついてしまったリカちゃん人形、グループ展でなぜか壊されてしまう人形作家の「ある作品」、髪が伸びる市松人形とその作者の謎、盲目のコレクターが持ち込んだ小田巻姫の真贋――。思いがこもった人形は、実は人間にとても身近な存在であることを、津原氏は円熟の筆で描きます。今まで自分の近くにあった人形は何であったか、自分の込めた思いは何であったか、その追憶と郷愁も誘う絶品「人形」連作集の第二弾。

前作『たまさか人形堂物語』の記憶も新しいうちに、その続編も読んでみることにした。世田谷(多分)のシャッター街で人形修理を手掛ける「玉阪人形堂」に持ち込まれる様々な人形修理の依頼に絡め、人形堂のスタッフと周囲の人々のやり取り、葛藤などを、主人公・澪の目線で描いた作品だ。前作は連作短編でも各々の短編の独立性がもっと高かったという印象があるが、今回は一応修理依頼を受ける人形毎に短編は区切られているものの、一貫して富永クンの心の葛藤とラブドール製造会社を経営する束前と澪との絡み、ある職人・師村がかつて手掛けた贋作の行方を巡るお話が各短編を横櫛に刺した形で展開しており、どちらかというと長編小説を読んでいるような感覚で読んだ。

そのために、各章を読み切ったところでひと区切りというわけにもいかず、ましてや昨今の仕事で忙しいわが身にまとまった時間を取って集中して読むという作業に充てることなどかないもせず、また今回もぶつ切れの、集中力を欠く読み方となってしまった。当然ながら、読了するのにも時間がかかった。

そもそも人形というものに造詣もないこともあるが、造詣のない読者の方が圧倒的に多いわけで、著者もそのへんは意識して、所々にその人形にまつわる背景の解説を散りばめている。歴史的な経緯や位置づけといったものは文章を読めばある程度はわかるが、人形の細かい構造のお話になってくると、文章化されていてもにわかには頭に入って来ず、単に僕の読解力の問題というだけでなく、そもそもビジュアルに訴えるようなものを文章化するという作業自体が難しいのではないかという気もした。(単なる責任転嫁かもしれませんが。)

僕は、自分の読書がペースダウンして、ちょっとねじを巻きたいと思った時、あるいはなかなか読み進められない専門書を読んだ後で息抜きをしたいと感じた時に小説を手に取る。それによって読書のスピードが上がり、リフレッシュもすることが多いのだが、津原泰水の「人形堂」シリーズは読書が捗らず、読了した時ただただホッとした。

ただ、我が家でこの本を目にした中2の娘が、ページをパラパラめくり、「この本面白そう」と言ってくれたのが救いだった。それなら読んで欲しいところだが、漫研所属の娘の眼に映ったのは、むしろ表紙と各章の扉に描かれている挿絵だったのではないかという気もする。

タグ:津原泰水
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0