週末養蚕 [シルク・コットン]
先月後半から今月上旬にかけて、次男が通っている小学校の3年生の総合学習の一環で、蚕(かいこ)の飼育が行なわれた。6年前に長男が同じ小学校に通っている頃にも、かいこに食べさせる桑の葉を持って学校に行くんだという長男に付き合わされ、近所に唯一残っている大きな桑の木に毎朝出かけた記憶があった。今回もそうなるのかなと思っていたら、実は学校の敷地内にも桑の木が植わっており、飼育にあたってはそこから葉を摘み取っていけばよいのだという。(そう聞かされると、長男はなんで毎朝学校に桑の葉を持って行ったのか首を傾げる。)
僕にとっても久し振りのかいこ飼育で、学校での飼育の様子をいろいろと次男から聞かせてもらった。例えば、「種(かいこの卵)はどこから調達してきたのか」(隣りの市に、小学校にかいこの種を卸す業者があるらしい)とか、「一齢や二齢の小さいかいこに食べさせる桑の葉は桑の木の枝のどのあたりから摘んでくるのか」(葉質が柔らかい枝の先端部分の若い葉を摘んでくるのが正しい)とか、「最後に脱皮してから今何日目か」とか…。逆に、「かいこはどうやって「結婚」するのか」といったいかにも子供らしい質問を受けて、次男に説明してやったこともある。成虫になってから交尾するというイメージを持っていない我が子は、幼虫の段階で「結婚」するのだと考えていたらしい。お陰で親子のよい「風呂トーク」の題材となった。
学校に桑の木があるので平日の飼育は問題ないとして、問題は週末だ。そしたら次男は自分の斑で飼育している10匹のかいこが入った小箱を、5月最終週の週末、自宅に持ち帰ってきた。学校でいろいろ知ったかぶりをしたところ、それじゃお前が週末世話しろと、他の生徒だか先生だかから言われたらしい。未だ二齢期に入ったぐらいだったので、食べる桑の量も少なく、学校から桑の葉を数枚持たされて帰ってきた。週末に預かっている間に、1、2匹脱皮をするかいこがいた。
その後の学校でのかいこの生育状況は、次男から時々聞かされていた。既に週末の一時預かりを一度経験しているから、次の週末は他の子の家に行くのだろうと思っていたので、その後どうなったのかは引き続き親子の会話のネタにはなる。しかし、なんと次の週末もうちの次男がかいこを持って帰ってきた。
上の写真をご覧いただくとわかると思うが、10匹いるというかいこの大きさにバラつきが生じている。中にはもう五齢期なんじゃないかというのもいた。次男はまた学校から桑の葉をもらって帰って来ていたが、とてもその枚数では足りそうにない。そこで、近所に生えている唯一の桑の木に行き、葉肉がたっぷりの大きな葉を何枚か仕入れて週末飼育に備えることにした(下写真)。学校も、児童にかいこを持ち帰らせるなら、学校周辺のどこに桑の木があるのかぐらいはちゃんと情報提供して欲しいものだ。学校から持ち帰ったかいこの大きさからいって、学校が児童に持たせた桑の葉だけでは不十分なことぐらい、想像もつきそうなものを…。
食欲旺盛なかいこは、たくさん食べるし、たくさん排泄もする(下写真)。コロコロの黒いうんちが大量に出るので、何度か掃除もしなければいけない。清潔にしておかないとかいこも気分悪いだろう。
さて、仮に五齢期のかいこが既にいたとしても、前週末の状況から考えてまだ糸を吐いて繭づくりを始めたりはしないだろうと我が家ではたかをくくっていたのだが、見ているとどうも様子がおかしいかいこがいる。葉を食べるのをやめ、動かなくなっているのである。これは繭づくりの兆候ではないかと妻と話していた矢先、なんとこのかいこが糸を吐いているのを発見した。こりゃまずい、かいこは単独では丸い繭が作れないので、狭い空間をこちらで提供してやらないといけない(これを「まぶし(蔟)」というらしい)。さっそく自宅で簡単に手に入るまぶしの代用品はないかと居間を物色し、結局トイレットペーパーの芯を使ってみることにした。学校も、こういう事態になることを想定して、週末に持ち帰る児童には最低限のブリーフィングはしておいて欲しいものだ…。
週末2日間に間に、続々とかいこが糸を吐きはじめ、週明け月曜日の時点で3匹が繭を作っていた。早くから糸を吐き始めたものは既に中が見えないくらいの繭を作り、遅れて糸を吐き始めたかいこは薄い殻の中でせっせと糸を吐いている様子がまだ見えた(下写真)。
それにしても、なんでこうなっちゃったんだろうか。学校教育用のかいこは通常のかいこに比べて生育が早いのではないかと最初は考えた。だいたい、二齢のかいこが中1週で五齢期を終えて繭を作り始めるなんて、普通は考えられない。それに、この大きさのバラつき何なんだ。後日妻が別件で学校に行った際に先生に聞いたところ、そのからくりはこんなことだったようだ。飼育していたかいこ10匹のうち、何匹化が死亡してしまい、先生の判断で四齢期のかいこを何匹か入れた。だから、かいこの体長が揃っていないのは当たり前のことだったのだ。
そうならそうと連絡帳かなにかでちゃんと家庭に知らせてほしい。五齢期の大食いのかいこが混じっていて桑の葉が足りなくなることも、自宅で預かっている間に糸を吐き始めることも、親にとっては想定外の事態だ。たまたま近所に桑の木があることを我々が知っていて、しかも繭づくりの際のかいこの習性について多少の予備知識があったから事なきを得たが、下手したら食欲旺盛のかいこ君たちを栄養不良で死なせるところだった。
でも、週末のかいこ飼育は次男だけではなく妻も僕も楽しく取り組むことができて、楽しかったことは間違いない。僕らだって、こうやって糸を吐き始めてから繭が形になっていくまでの過程をじっくり観察したことなんて今までなかったわけだし。
さて、今回のかいこの飼育にあたっては、事前にこんな本を読んでいたから参考になった。本書の第1章はかいこのライフサイクルを図表付きで説明しており、小学校でかいこの飼育を行なう際にも役立つと思う。
僕にとっても久し振りのかいこ飼育で、学校での飼育の様子をいろいろと次男から聞かせてもらった。例えば、「種(かいこの卵)はどこから調達してきたのか」(隣りの市に、小学校にかいこの種を卸す業者があるらしい)とか、「一齢や二齢の小さいかいこに食べさせる桑の葉は桑の木の枝のどのあたりから摘んでくるのか」(葉質が柔らかい枝の先端部分の若い葉を摘んでくるのが正しい)とか、「最後に脱皮してから今何日目か」とか…。逆に、「かいこはどうやって「結婚」するのか」といったいかにも子供らしい質問を受けて、次男に説明してやったこともある。成虫になってから交尾するというイメージを持っていない我が子は、幼虫の段階で「結婚」するのだと考えていたらしい。お陰で親子のよい「風呂トーク」の題材となった。
学校に桑の木があるので平日の飼育は問題ないとして、問題は週末だ。そしたら次男は自分の斑で飼育している10匹のかいこが入った小箱を、5月最終週の週末、自宅に持ち帰ってきた。学校でいろいろ知ったかぶりをしたところ、それじゃお前が週末世話しろと、他の生徒だか先生だかから言われたらしい。未だ二齢期に入ったぐらいだったので、食べる桑の量も少なく、学校から桑の葉を数枚持たされて帰ってきた。週末に預かっている間に、1、2匹脱皮をするかいこがいた。
《週明けに学校に持っていく前のかいこの様子》
その後の学校でのかいこの生育状況は、次男から時々聞かされていた。既に週末の一時預かりを一度経験しているから、次の週末は他の子の家に行くのだろうと思っていたので、その後どうなったのかは引き続き親子の会話のネタにはなる。しかし、なんと次の週末もうちの次男がかいこを持って帰ってきた。
上の写真をご覧いただくとわかると思うが、10匹いるというかいこの大きさにバラつきが生じている。中にはもう五齢期なんじゃないかというのもいた。次男はまた学校から桑の葉をもらって帰って来ていたが、とてもその枚数では足りそうにない。そこで、近所に生えている唯一の桑の木に行き、葉肉がたっぷりの大きな葉を何枚か仕入れて週末飼育に備えることにした(下写真)。学校も、児童にかいこを持ち帰らせるなら、学校周辺のどこに桑の木があるのかぐらいはちゃんと情報提供して欲しいものだ。学校から持ち帰ったかいこの大きさからいって、学校が児童に持たせた桑の葉だけでは不十分なことぐらい、想像もつきそうなものを…。
食欲旺盛なかいこは、たくさん食べるし、たくさん排泄もする(下写真)。コロコロの黒いうんちが大量に出るので、何度か掃除もしなければいけない。清潔にしておかないとかいこも気分悪いだろう。
さて、仮に五齢期のかいこが既にいたとしても、前週末の状況から考えてまだ糸を吐いて繭づくりを始めたりはしないだろうと我が家ではたかをくくっていたのだが、見ているとどうも様子がおかしいかいこがいる。葉を食べるのをやめ、動かなくなっているのである。これは繭づくりの兆候ではないかと妻と話していた矢先、なんとこのかいこが糸を吐いているのを発見した。こりゃまずい、かいこは単独では丸い繭が作れないので、狭い空間をこちらで提供してやらないといけない(これを「まぶし(蔟)」というらしい)。さっそく自宅で簡単に手に入るまぶしの代用品はないかと居間を物色し、結局トイレットペーパーの芯を使ってみることにした。学校も、こういう事態になることを想定して、週末に持ち帰る児童には最低限のブリーフィングはしておいて欲しいものだ…。
週末2日間に間に、続々とかいこが糸を吐きはじめ、週明け月曜日の時点で3匹が繭を作っていた。早くから糸を吐き始めたものは既に中が見えないくらいの繭を作り、遅れて糸を吐き始めたかいこは薄い殻の中でせっせと糸を吐いている様子がまだ見えた(下写真)。
それにしても、なんでこうなっちゃったんだろうか。学校教育用のかいこは通常のかいこに比べて生育が早いのではないかと最初は考えた。だいたい、二齢のかいこが中1週で五齢期を終えて繭を作り始めるなんて、普通は考えられない。それに、この大きさのバラつき何なんだ。後日妻が別件で学校に行った際に先生に聞いたところ、そのからくりはこんなことだったようだ。飼育していたかいこ10匹のうち、何匹化が死亡してしまい、先生の判断で四齢期のかいこを何匹か入れた。だから、かいこの体長が揃っていないのは当たり前のことだったのだ。
そうならそうと連絡帳かなにかでちゃんと家庭に知らせてほしい。五齢期の大食いのかいこが混じっていて桑の葉が足りなくなることも、自宅で預かっている間に糸を吐き始めることも、親にとっては想定外の事態だ。たまたま近所に桑の木があることを我々が知っていて、しかも繭づくりの際のかいこの習性について多少の予備知識があったから事なきを得たが、下手したら食欲旺盛のかいこ君たちを栄養不良で死なせるところだった。
でも、週末のかいこ飼育は次男だけではなく妻も僕も楽しく取り組むことができて、楽しかったことは間違いない。僕らだって、こうやって糸を吐き始めてから繭が形になっていくまでの過程をじっくり観察したことなんて今までなかったわけだし。
さて、今回のかいこの飼育にあたっては、事前にこんな本を読んでいたから参考になった。本書の第1章はかいこのライフサイクルを図表付きで説明しており、小学校でかいこの飼育を行なう際にも役立つと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
明治より近代国家への発展を支えた日本の養蚕。戦後、急速に衰退したその高い技術が南インドで地域経済に大きな貢献をしている。だが、ここまでの道程は平坦ではなかった。技術移転や技術指導は文化と文化の衝突である。現地の風土にあわせた技術と知識の継承により高品質な生糸づくりをめざして奮闘した長期にわたるプロジェクトの報告。
タグ:養蚕
良い本ですね!
実は、私が小学生の時に飼育したカイコは、うまく育たず、蛹になるまえに死んでしまったのですが、当時この本を知っていたら、きっとうまくいっていたに違いありません。
全国の小学校の理科の先生に読んでもらいたいですね。
よいしょっと。
by 宇宙恐竜ゼットン (2012-06-22 09:13)
Sanchai さんのお宅で週末を迎えた蚕はラッキーでしたね^^
by うしこ (2012-06-22 21:51)