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『絹Ⅱ』 [シルク・コットン]

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絹〈2〉 (ものと人間の文化史)

  • 作者: 伊藤 智夫
  • 出版社/メーカー: 法政大学出版局
  • 発売日: 1992/06
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
生糸と絹織物の生産と輸出が、わが国の近代化にはたした役割を描くとともに、養蚕の道具、養蚕と絹の民俗から蚕の種類と生態・飼育法におよぶ。
前回に引き続き、法政大学出版会「ものと人間の文化史」シリーズの1冊である。市立図書館で借りてから、貸出延長期間も含めて4週間近くも借りているが、ようやく読み切り、返却できる準備が整った。それ以前に、借りるのではなく購入しようと手配済みで、実際現物も手元に届いている。しかし、前回も書いた通り本書はレファレンスブックとしてこそ価値があると思っているので、放っておけば積読状態になるような気がしたので、返却期限を目安にして、とりあえず何が書いてあるかはざっと目を通しておこうと考えたのである。

第1巻は古代から近世までの歴史が中心だったが、第2巻はそれに引き続いて桑、蚕、生糸、絹織物にまつわる近代の歴史を冒頭で取り上げ、その後蚕の飼育環境や使用される道具(蚕具)の変遷を取り上げ、最後は野蚕について述べている。これで養蚕のすべてが知れるとは全然思わない。両巻を通じても、蚕の病気や育種についてはあまり触れられていないし、ついでに言うと、近代史の部分でも、昭和以降の日本の蚕業史についてはかなりの省略がある。

とはいえ、よくこれだけの情報をまとめられたものだと感動した。元々著者は農水省蚕糸試験場にも籍を置いたことがある昆虫生化学や蚕の食餌がご専門で、養蚕の歴史や製糸、織物に造詣があったとは思われない。これが数名の執筆者による共同執筆だったら理解もするが、この2冊は単著である。指導する学生を動員したとしても、これだけの資料をよく分析されたものだと思う。

ただ、惜しむらくばこれはレファレンスブックなのだから、巻末に索引は付けて欲しかったなと思う。そうでないと、歴史の記述の中で、例えばどこで「美濃」や「上州」が登場しているのかを探したりすることが難しい。それと、重箱の隅を突くようで恐縮だが、出所として挙げた文献名が巻末の参考文献リストで抜け落ちているというケースが見られた。おそらく脱稿の期限のようなものや、索引を作るための労力のような何かしらの制約があったものと思われるので、そこは利用者が大目に見なければいけない部分もあるのかもしれない。

古い史書のどこで桑や蚕や絹がどのように出てくるのか、少なくとも本書でその一端を確認しておくことで、今後どこでしゃべることになったとしても、導入部分の「つかみ」のネタとしては使えるものがあるかもしれない。また、僕らが学校で習った「政治」の歴史とは異なる、文化や社会といった視点で、日本の歴史をとらえ直す良いきっかけを与えてもらったと感謝している。

タグ:養蚕 シルク
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