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『オレたち花のバブル組』 [池井戸潤]

改めて池井戸潤さんの直木賞受賞をお祝い申し上げます。偶然ながら海外出張で用件が終わったら1冊ぐらい小説でも読もうかと思い、図書館で借りてきていたのが池井戸作品でもあったので、ここでご紹介しておこう。

オレたち花のバブル組

オレたち花のバブル組

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/06/13
  • メディア: 単行本

内容紹介
傑作企業小説。今度の敵は小役人。お前ら、まとめて面倒みてやるぜ!
―――あのバブル組が帰ってきた!
東京中央銀行営業第二部次長の半沢は、巨額損失を出した老舗のホテルの再建を押し付けられる。おまけに、近々、金融庁検査が入るという噂が。金融庁には、史上最強の“ボスキャラ”が、手ぐすねひいて待ち構えている。一方、出向先で、執拗ないびりにあう近藤。また、精神のバランスを崩してしまうのか……。空前絶後の貧乏くじをひいた男たち。そのはずれくじを当りに変えるのは自分次第。絶対に負けられない男たちの闘いの結末は?!
池井戸作品を読んでいると、銀行というのは上層部に必ず悪巧みをしている奴がいる伏魔殿のようなところとして描かれていることが多いように思う。中小企業には弱い者いじめをし、大手企業に対しては業績不振でも桁違いの繋ぎ融資を平気で行なう。そして、そうしたヤバめの取引には、必ず役員が絡んでいる。

ただ、全般的には銀行を悪者視して描かれている作品が多いように思っていたが、中には本作品のように銀行組織の中で暴れるアウトロー的行員が主人公の話もあるのだなという点では新鮮な印象を受けた。

だいたい、銀行が大手企業を相手に多少無理な融資をやる時というのは役員を巻き込んだ相当高度な政治的判断の結果であることが多いが、なぜ業績不振の大手企業に対しても融資がそもそも行なわれたのかというと、そういう役員の人が支店長か営業部時代に無理な融資拡大に走ったからだというのはありがちな話のように思える。その時にシャカリキに業績を伸ばしたつけが後になってのっぴきならない状況に陥り、その後たまたまその融資案件に関わることになった無垢な行員がその役員とその息のかかった部課長連中にがんじがらめにされて窮地に陥るという、いかにもというストーリーだ。

はっきりとした悪者が存在する上に、ストーリー展開が最後の最後までハラハラさせられる要素を含んでいて、いったん読み始めたらなかなか途中で止めることができない。とにかく面白いです。

作者は直木賞授賞式のインタビューで、企業小説は文学賞を受賞するのは難しいのかと思っていたというようなことを言われているが、そんなことないことが証明されてほんと良かったと思う。おそらく、こういう作品はテレビドラマ化がしやすいんじゃないだろうか。

実は僕も元銀行員で、しかもバブル入行組である。銀行に入った当時は他行との融資合戦みたいな様相だったので、本書で登場するバブル入行組の入行当時の心境というのは非常によくわかる。僕は4年弱で銀行を辞めてしまったが、もし働き続けていたら、今頃は次長ポストぐらいのところにいて金融庁検査で応対に追われているような状況だったのだろうなとも思った。
タグ:池井戸潤
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コメント 1

yukikaze

バブル…あの泡は今、重荷となって未だにこの国を苦しめています。

しかし、あの頃の融資の在り方は出鱈目でしたね。土地の評価自体がでたらめだったようにも思いますが、それ以上に融資の審査も出鱈目でした。

都市銀行だけでなく、地銀も第二地銀も信用金庫も信用組合も狂乱した時代。今からでは想像もつかない時代。

今もその時代の残影を背負った人たちが企業には多くいます。そして、その人たちが今の日本をどこに導くのか…。不安は尽きません。
by yukikaze (2011-07-19 16:05) 

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