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『国境事変』 [誉田哲也]

国境事変 (中公文庫)

国境事変 (中公文庫)

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/06
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
新宿で在日朝鮮人が殺害された。“G4”の存在を隠匿しようとする公安は独自捜査を開始するが、捜査一課の東警部補は不審な人脈を探り始める。刑事と公安、決して交わるはずのない男達は激しくぶつかりながらも、国家と人命の危機を察し、銃声轟く国境の島・対馬へと向かう―警察官の矜持と信念を描く、渾身の長篇小説。
ここのところインド絡みの論文を読んでいたり、仕事を自宅に持ち帰って資料を読んだりしていたこともあって、1週間ほど全く新しい本を読んでいなかった。こういうブランクを作った時には先ずはエンジンの回転数を上げるために小説を読むというのが僕の常套手段で、今回も近所のコミセン図書室で1冊だけ借りて来ていた本書を数日かけて読み切った。

僕は誉田哲也作品には「武士道」シリーズから入ったので、あの女子高生剣士の爽やかなストーリーと比較すると、本日紹介する1冊は相当硬派で骨太な作品だと思う。北朝鮮転覆工作と在日、そして公安と警視庁捜査一課が絡む非常に男くささが漂う作品だ。対馬といったら最近の僕には宮本常一の民俗学調査の舞台のイメージしかなかったのだが、考えてみれば元寇のときには最初に攻められた島であるわけで、否でも国境を意識せざるを得ない島なのだと改めて実感させられた。きっと対馬を訪れたことがあってある程度の土地勘のある人にとっては、本書のクライマックスシーンはかなり面白いのではないだろうか。

ちゃんとしたオチがついているミステリー小説でもあるので、あまり中味について紹介できないのが残念である。勿論、様々なバックグランドの登場人物が複雑に絡まって終盤のシーンに向って収束していくのだが、そこまでの過程で、誰が誰と敵対しているのか、誰が反北朝鮮で誰が親北朝鮮なのか、ちゃんと読まないとにわかに理解できない展開が結構あった。本質を瞬時につかむ力が年齢とともに落ちていると痛感しているオヤジには、展開が速すぎるなあと苦笑することしきりであった。
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yukikaze

東京という場所は最も国境から遠いところにあるように感じている人が多い場所だと思います。確かに、ロシア、中国、北朝鮮、韓国からは遠いのは確かですが、それらの国々とは海という通路で東京はストレートにつながっています。確かに、対馬などに比べれば国境リスクは低いのかもしれませんが。北海道、対馬、五島、南西諸島の人たちは日々、国境を実感していると聞いたことがあります。私の住む大阪はすぐ隣に半島の人たちが集団生活をしているので危機感を感じることが多いですね。一人ひとりの半島人は悪い人だとは思いませんが、集団となった時の彼らは明らかに危険な存在です。東京での新大久保あたりにいけば、危険な存在である内なる敵を感じることもできるかもしれません。日本の場合、国内に在日というものを抱える以上、国境は防衛線と言えないかもしれません…。
by yukikaze (2011-04-18 17:30) 

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