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『日本のフェアトレード』(1) [読書日記]

日本のフェアトレード

日本のフェアトレード

  • 作者: 長坂 寿久
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2008/05/08
  • メディア: 単行本

前回、三鷹国際交流フェスティバルでボランティアをやった話を紹介したが、そのボランティアをやるにあたり、どうせなら一度読んでおこうと思って図書館で借りた1冊が本書である。丁度別の本を読み切るのに熱中していて、当日に間に合わなくなってしまったのが悔やまれる。本書は第1部が総論として著者がフェアトレードの起源とトレンドについて紹介し、第2部で日本のフェアトレード団体、第3部で日本のフェアトレードショップ、第4部で日本のフェアトレードネットワークが各々の代表の執筆により紹介されているが、ここで紹介されているうち、なんと5団体(シャプラニール、第3世界ショップ、ぐらするーつ、パルシック(PARCIC)、フェアトレード学生ネットワーク(FTSN))がテントショップに出店してきていたからである。

当日僕はボランティアのネームプレートを首から下げて会場を歩いていて、「東チモールのコーヒーを売っているお店があるって聞いたんだけど、どこですか?」という質問をあるブースの前で耳にした。そのブースの方はそこで販売していた東チモール産ではないコーヒー豆を売ろうと盛んにセールスをされていたけれど、もし僕が本書を読み切っていたとしたら、「それはパルシックさんのお店ですよ」とこっそり耳打ちできた筈である。返す返すも読了が間に合わなかったことが悔やまれる。

さて、本書の核となるのはやっぱり第1部だと思うのだが、ソネットが長時間のメンテをやるらしいので、取りあえず感想だけ先に書いておきたいと思う。

第1に、元々僕が知りたいと思っているのは、フェアトレードに関わっている人々の生活である。途上国の生産者のことではなく、仕入や販売をやっている人々のことである。そもそもの疑問として、それで生活がしていけるのだろうかということ。そんなに儲からないだろうと思うから。それに、各団体とも、事業拡大していくプロセスがもっとわかったら良かった。それは現地に駐在員でも置いて、常に消費者の嗜好を製品開発に反映させていけたらいいと思うが、そんなことは駆け出しのフェアトレード団体がすぐにできることではない。

第2に、そもそもの疑問として、フェアトレードはリピーターを取り込めるのかということだ。正直なところ、途上国の手工芸品も、1回購入すればもういいと思う。販売のチャンネルをどれくらい持っているのかにもよるが、前払いが慣習だとなると、仕入れたものをどう売りさばいたらいいのかは結構悩ましい。その点ではコーヒーとか紅茶とかチョコレート、石鹸といった消費財ならまあいいかもしれないし、だからそういう商品の取り扱いがフェアトレードの中核を占めているのだろうと思う。人口が減り始めている今の日本で、フェアトレードの市場がいつまでも右肩上がりで拡大していくとも思えない。

第3に、だからこそ言うが、なんで遠く離れた日本で販売しなければいけないのだろうか。残念ながら、この疑問に対しては本書は答えてくれていない。僕が現在愛用しているトートバックは、妻がデリーでリサイクル・バザーでゲットしてきたもので、妻もそのままデリーに置き去りにしたが、僕は結構使い勝手がいいというので日本に持って帰って来て今でも使っている。三鷹国際交流フェスティバルのテントショップもかなり見たが、僕のトートバックほどデザインも使い勝手もいいというバッグは、申し訳ないけれども見つけられなかった。ポイントは、妻にせよ、前の持ち主にせよ、それをインドで購入したということだ。

別の例を挙げるなら、僕の愛用のクルタはデリーのデリー・ハートで購入したものだ。そこでは、生産者が消費者と直接交流する機会が得られ、生産者は消費者の嗜好をそこでキャッチし、商品開発に反映させる。以前このブログでも書いたが、インドの手工芸品生産者は、今は輸出市場をターゲットにしていない。インド国内の都市の中所得者層にターゲットを移している。今後縮小はしても拡大は望み薄の日本の市場向けに生産を行なうよりも、インド国内市場の方が成長余地ははるかに大きい。おそらく今日本のフェアトレード団体と取引関係を持って生産活動を行なっている途上国の貧困層も、いつまでも消費者の嗜好を知るアンテナを日本の団体に依存するのではなく、国内市場でも売れるものを作る努力を始めないといけない。国内の消費者の嗜好を把握する能力を磨かなければいけないのではないだろうか。

日本の消費者は見る目がとてもシビアなので、日本市場で売れる商品は他の国でも売れるという話はよく聞く。であれば、例えばいろいろなフェアトレード団体が途上国の生産者と提携して仕入れているような商品を、一部輸入ではなく途上国国内に残し、国内市場で販売できるかどうかを試みてみるのは如何だろうか。勿論、各団体個別にはそんなことやってる余裕はないだろうから、JICAのような公的機関が現地の事務所を通じてそうした商品を集め、アンテナショップみたいなものを運営してみたらどうかと思う。売上げに対する課税の問題も生じるだろうから、JICAが直営でやるというよりも、そういうNPO法人を設立するか既存のNPOの外部委託して、運営をやってもらったらどうだろうか。常設のアンテナショップだけではなく、日本人会や日本人学校でのイベント、日本人絡みでなくても、多く人が集まるようなイベント会場に出店できたらいいと思うのだが…。

第4に、本書でも私たちがすぐできることとして紹介されていたNGOや貧困層の生産者組合から仕入れるようなグリーン調達は、確かにすぐできる。というか、僕は自分が離任する際の謝恩夕食会の招待状の印刷を、スラムの若者にDTPのコンピュータ研修を受けさせているDatamation Foundationに発注した実績が既にある。会議のノベルティーとかであれば、デリー市内で扱っているところは他にもあり、要はやる気があるかどうかぐらい簡単な話だ。インドの大手NGOの1つDevelopment Alternatives(DA)のスタッフの名刺は、ごわごわの再生紙を使っている。僕らでも注文できるのかとDAの人に聞いたところ、可能と仰っていた。

本書を読みながら、そんなことを考えていた。


*いったん記事アップしますが、いずれ加筆するつもりですのでお待ち下さい!
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