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ヴェダンタ鉱山事業にNo [インド]

ヴェダンタ社のオリッサ鉱山事業に「ノー」
It is 'no' to Vedanta's mine project in Orissa
8月25日、The Hindu
【ニューデリー発】 長期間の協議プロセスを終え、インド政府は遂にヴェダンタ・アルミ社がオリッサ州ニャムギリ山系で計画中の17億ドル規模のボーキサイト鉱山事業に対する評決を下した。ジェイラム・ラメッシュ環境森林相によると、「環境保護法、森林保全法、森林権法に対する非常に重大な違反が確認された」とし、同社とオリッサ州当局関係者を非難するとともに、事業認可申請を却下すると発表した。
 同相は、2008年に認可された森林開発の第1ステージのクリアランスを取り下げ、現在申請されている第2ステージのクリアランスを却下すべきとする森林諮問委員会(Forest Advisory Committee、FAC)の勧告を受け入れた格好で、これによって、環境面でのクリアランスも自動的に無効となる。
 同地域でのヴェダンタ社の計画にさらに痛手となるのは、同社がオリッサ州で行なっているボーキサイト鉱の精錬は、実際のボーキサイト鉱石が隣のジャルカンド州にある14の鉱山から調達されており、うち11鉱山についても有効な環境クリアランスを受けていないとの報告について、環境森林省が調査に乗り出すことだ。
 同省はさらにアルミ精錬事業自体に対して発給されている操業免許のキャンセルも視野に入れ、精錬事業の事業計画が違法でないことを証明する文書(show-cause notice)の発出も予定している。精錬事業については、村の森林を不法に入手して許可なく6倍もの事業拡張を行なっているとの指摘がある。この事業拡張の事前評価プロセスは凍結された。
 FACの勧告は、N.C.サクセナ委員会の報告書に基づく。この報告書では、法律違反の詳細とプロジェクトが地元のドンゴリア・コンド族のコミュニティや生物多様性に及ぼす負の影響について述べられている。オリッサ州森林事務次官は23日(火)にラメッシュ大臣と面談し、サクセナ委員会報告書への州政府としての反論を伝えた。次官はまた、ナヴィーン・パトナイク州首相の主張を繰り返し、最高裁が2008年8月に行なった原則承認の判断は既成事実として最終承認とみなされるべきものであると主張した。
 ラメッシュ大臣は「国会で可決された法の執行責任を放棄する自由は省庁には与えられていない」として州の主張を退け、たとえ最高裁の優位性があったとしても最終クリアランスについては大臣に決定権があるとの法務大臣の見解を引用した。「環境森林省は既成事実に基づいて業務を行なうことはできない。2008年8月以降、新たな情報が次々と入ってきた。こうした有罪と見なしうる新たな証拠に基づき、判断は行なわれた。」
 こうした新情報の中には、森林地域の居住者、とりわけ先住民の権利を保護する筈の森林権法の規定を州政府が実施していないとの情報もある。サクセナ委員会はむしろ、県レベルの行政官が村議会の同意を得たことにした文書を意図的に提出している事実を指摘している。
*記事全文は下記URLでダウンロード可能です。
 http://www.hindu.com/2010/08/25/stories/2010082559410100.htm
最近、仕事の上でのインドとの繋がりが全くない中で、わざわざインドの新聞メディアのHPにこちらからアクセスして情報を取りに行くインセンティブが完全に失せてしまっている。雑誌の購読は続けているのでそれでお茶を濁している状態だ。ところが、先日、ちょっと思うところがあって久し振りに主要全国紙のHPを眺めていたところ、いきなり登場したのがヴェダンタ社のオリッサ事業であった。

それでも記事として取り上げようとはすぐは思わなかったのであるが、昨日夜都内で開催されたセミナーでたまたまNGO草の根援助運動(P2)のインド事業班の方とお目にかかり、ヴェダンタ社のことが話題になった。「最近こんな報道がされてましたよ」と口頭ではご紹介しておいたが、折角だから出所も含めて記事全文をご紹介した方がいいかと思い、帰宅後真っ先に記事で取り上げようと思った次第。(ちなみにこの方、このブログを時々読んで下さっているとのこと。知らない人から「sanchaiさんですか?」と言われたのはちょっと嬉しい。)

5月にオリッサ州ムニグダを訪ねた際、街道を走っているおびただしい数のトラックを見かけた。南から北に向かうトラックと、北から南に向かうトラックが交錯していたが、どちらかというと前者の方が多かった。アルミ精錬工場と関係があるのだろうが、一体何を積んでいるのか、或いは何も積んでいないのか、少し関心があった。ニャムギリ山系からボーキサイトを掘り出してアルミ精錬工場に運び込み、そこから南下してビシャカパトナム港から出荷するというのが流れだとしたら、南から北に向かうトラックの数が多いこと自体には少し納得いかないものを感じた。でも、ちゃんと調べなかった。というか、同行してくれたNGOのスタッフの人に尋ねたのだが、納得いく説明はしてもらえなかった。

DTE2010-8-31.jpgさて、鉱山開発と地域の発展との関係については、上の新聞報道以外にも特筆しておくべき記事が2つほどある。いずれも隔週刊誌『Down To Earth』の8月16-31日号に掲載されていたものである。

最初の記事は「未来は鉄の中に放り出されて(Future cast in iron)」(Paranjoy Guha Thakurta、Ayaskant Das記者)というもので、カルナタカ州ベラリー県の鉄鉱石採掘事業が地元選出のレディ兄弟の躍進には繋がっているものの、同県の人間開発指標の改善には全く繋がっていないことを指摘している。
http://www.downtoearth.org.in/node/1739

もう1つの記事は「鉱山所有者よ財布のひもを緩めよ(Mine owners, loosen purse strings)」(Ruhi Kandhari解説員)で、現在の国会会期中に審議が予定されている新鉱業法では、鉱山所有者に対し、年間の利益の26%を留保して地元住民に還元することを義務付けるという内容である。方法としては、鉱物の売上や輸出に特殊目的税を課し、①鉱業裁定委員会(tribunal)の開設や鉱山事業のモニタリングの実施費用に充てたり、②村落開発事業に充当されたりする。単純計算だが、事業区域に住み生活に影響を受ける住民1人当たり22万5,000ルピーの資金が確保されることになる。法案は不法採掘の防止に効果があると期待されているという。
http://www.downtoearth.org.in/node/1743


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支配人

鉱山開発は地元民・国民経済に十分な利益を還元しないケースが多いように思います。一方で巨額の輸出収入が為替を押し下げ農工品の輸出競争力を阻害します。利権汚職が発生しやすくなるリスクもあります。

途上国はどんどん開発条件を高く設定しましょう。資源価格が騰貴することにより世界技術の省資源化も進みます。そうすればより高価となった資源を次世代に温存することにもなると思います。
by 支配人 (2010-08-28 16:13) 

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