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C.K.プラハラード博士の訃報 [インド]

C.K.プラハラード博士ご逝去
C.K. Prahalad passes away
4月18日、The Hindu、Narayan Lakshman記者
【ワシントンDC発】 ミシガン大学ロス・ビジネススクール教授で経営思想の世界的権威であるコインバトール・クリシュナラオ・プラハラード博士が17日(金)、サンディエゴで急逝した。68歳だった。博士は世界的に機能分散が進んだ多国籍大企業におけるトップマネジメントに焦点を当てた企業戦略に特化した研究業績で知られる。
 プラハラード博士が1990年代に行なったゲーリー・ハメル博士との共同研究は企業の「コア・コンピタンス(中核企業力)」の概念に焦点を当てたもので、その研究レポートはマンキンゼー賞を受賞し、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の80年以上の長い歴史の中でも最大の売上を記録した。このレポートの中で、博士は多角化した企業を木に見立てるよう企業リーダーに求めた。木の幹と大枝を基幹プロダクトと見立て、小枝をビジネスユニット、葉や果実を末端プロダクトとする。至るところに栄養をもたらし、安定をもたらすのは根っ子のシステム――それが即ちコア・コンピタンスであると主張した。
 博士はまた、「ピラミッドの最底辺の冨(Fortune at the Bottom of the Pyramid)」への強い関心でも広く知られている。このテーマに関する彼の著作は、インドのような国の貧困層の生活環境改善に大企業でも貢献できる可能性があることをはっきり示した。博士によれば、大企業は、NGOや支援を必要とするコミュニティのコミットメントを得つつその投資能力をこうした目的に仕向けることで実現が可能だと主張している。貧困層であっても、積極的で市場情報を集め、商品開発に関わって行く消費者になれる筈であるという。
 プラハラード博士の経歴はアカデミックの世界に限定されるものではない。博士は優れた企業コンサルタントとしても同様に名声を確立している。フォーチュン200の上位30位に入る大手企業のCEOから、ヒンドゥスタン・リーバーやマイクロソフト・インディア社といった企業に至るまで、多くの企業の経営コンサルタントを務めてきた。
 父親がサンスクリット研究者や裁判官として過ごしたチェンナイで育った博士は、1960年にロヨラ・カレッジを卒業した後ユニオン・カーバイド社で働いた。その後、1966年にインド経営大学院(IIM)アーメダバード校で経営学修士を取得し、1975年にはハーバード・ビジネススクールで経営学博士号を取得している。妻と2人の子供がいる。(後略)
*記事全文は下記URLでダウンロード可能です。
 http://www.thehindu.com/2010/04/18/stories/2010041861961400.htm

既に半月以上前の話になるが、C.K.プラハラード博士がお亡くなりになった。『ブルー・セーター』を読んでいたら、なんとなくプラハラード博士のご逝去の報にも言及しておいた方がいいような気がしたので、古い新聞記事を読み直してみることにした。Hindu紙にはもう1つプラハラード博士追悼記事が出ているのでそちらも参照して下さい。
 http://www.thehindu.com/2010/04/18/stories/2010041861971400.htm

ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ)

ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ)

  • 作者: C.K.プラハラード
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2005/09/01
  • メディア: 単行本
コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)

コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略 (日経ビジネス人文庫)

  • 作者: ゲイリー ハメル&C.K.プラハラード
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 文庫

昨年から今年にかけて、インドでBOPビジネスの開発を検討されている日本の企業のお話を幾つか伺った。そもそも「BOP」という言葉自体をここまで定着させたのはプラハラード博士の著書『ネクスト・マーケット』(原題『Fortune at the Bottom of the Pyramid』)であり、検討されている日本の企業さんも大抵の方が本書を読まれていた。この本については以前もご紹介したことがあるので敢えて繰り返して内容を述べることはしないけれど、僕にとってもこの本は「目からウロコ」の1冊で、発刊とほぼ同時に購入し、これまでにも何度か読み返している。

著者がインド人であることもあるし、インドに世界のBOP人口の大多数が集中していることもあるので、BOPビジネスの実践の場としてインドにおける企業の取組み事例が多く紹介されていた。インドに赴任してくる時にも当然一度読み返している。しかし、本書で紹介されていたインドの事例は、アンドラプラデシュ州のe-SEWA以外は見に行ったことがない。e-SEWAについては、それと同じようなコンセプトでデリー市がJEEVANを導入しており、そちらの方は実際に利用者の立場になって関わるようになったばかりである。多分、e-Choupalやヒンドゥスタン・リーバーは調査で訪問した日本人もいらっしゃるのではないかと思う。成功事例がそれほど多いとは思われないが、それでも誰もがe-Choupalやヒンドゥスタン・リーバー、ICICIに目を向けているということは、プラハラード博士の著書がそれほどの影響力があったということなのだろう。

どこの企業さんも考えておられると思うが、1社単独で商品開発して市場開拓していくのは非常に難しいと思う。おそらくある程度地理的拡がりをもって活動しているNGOとでも組まないと独自の販売網構築は苦しいのではないだろうか。どうしたらいいのか――そのソリューションについては、地域に精通しているNGOと組むことから先ずスタートして商品開発のテストを試みることぐらいしか思いつかない。それが僕の3年間の成果…。
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shopno

NFUで修論に苦しんでいたとき『ネクスト・マーケット』に出会いました。私にとっても目からウロコの1冊でした。

亡くなられたとは知りませんでした。
by shopno (2010-05-08 18:08) 

Sanchai

shopnoさん、コメントありがとうございます。『ネクスト・マーケット』は今の日本のBOPブームのきっかけを作った本ですね。
by Sanchai (2010-05-13 11:17) 

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