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『トンデモ本の世界』 [読書日記]

トンデモ本の世界―MONDO TONDEMO

トンデモ本の世界―MONDO TONDEMO

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 1995/05
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
UFO、超科学、予言、ユダヤの陰謀など著者は「衝撃の真実!」のつもりだが、はたから見れば大笑いの本がトンデモ本。巷にあふれるとんでもない書物と、常識外れの著者たちを一刀両断する。
Roswell.JPG昔、世界七不思議だとか超常現象とかUFOとかに世界を陰で操る秘密組織とかに憧れて月刊誌『ムー』とかを真剣に読んでいた時代があった。小学生から中学生にかけての頃だ。小学2年生の頃には映画「ノストラダムスの大予言」に震え上がり、もう少し高学年になっていくと「川口浩探検隊」に魅かれた。高校時代は「矢追純一スペシャル」を毎回欠かさず見ていた。米国ニューメキシコ州ロズウェルのUFO墜落事件なんて結構興味深深だった。そして、大学生の頃になって流行っていたのが「ユダヤ陰謀説」や「フリーメーソン」「ロスチャイルド」だった。ジャーナリストとしての落合信彦氏が最も輝いていた時代でもある。お恥ずかしい話、僕が大学の副専攻で国際関係論を取った動機の幾分かは、「この世界を思い通りに動かそうとしている奴が本当は誰なのか」をちゃんと勉強しておきたいというのがあった。それはそれで大事なことなのだが、ユダヤ人やフリーメーソンやロスチャイルド家だけではない。CIAやモサドだけでも勿論ない。

そうした、僕と同世代の男性が少年時代から膨らませに膨らませてきた妄想をものの見事に吹っ飛ばし、笑い飛ばしてくれたのが1995年に発売されたこの1冊だった。生まれてこの方読んだ本の中で、印象に残った本としては、五指には入らずともベスト10ぐらいまでには入るだろう。お恥ずかしい話、僕は実家の自室の書棚に、1980年代に世に出てきた陰謀モノ、疑惑モノ、予言モノの本をかなり未だ保管している。落合信彦氏の著作の蔵書もかなり多い。ものの見事にハマっていた僕を、現実世界に引き戻して更正させてくれたのがこの1冊だ。

この本を久々に見つけたのはまたしても日本人会図書室。誰かしら、やっぱり面白くて日本から買って持って来られたのだろうと推察する。この本を契機に「と学会」関係者は多くの本を発表している。最初の3冊ぐらいは僕も読んだが、最初の『トンデモ本の世界』ほどのインパクトはなかった。また、これも僕らが少年時代にハマっていた特撮・アニメを真の科学の眼からおちょくるのを目的として書かれた『空想科学読本』のシリーズも出ているが、こちらは僕自身よりもうちの長男の方がお世話になっている。

『トンデモ本の世界』が世に出た時、僕が本書で最も爆笑し、通勤電車の中で笑いをこらえるのに必死にならざるを得なかったのが門田泰明氏の「特命武装検事「黒豹」シリーズ」に関する解説「ICBMもUFOも拳銃で撃ち落とす検事」(pp.170-175)であった。黒豹シリーズは相当売れたらしく、書店文庫コーナーでは非常によく見かけた。なんと日本人会図書室にも数冊蔵書がある。『トンデモ本の世界』を読んだ人なら、黒豹シリーズの荒唐無稽さはよくおわかりで、ツッコミを入れたくて門田作品に手を出そうと考える人もいたかもしれない。この節は僕的には本書のクライマックスシーンだと思っている。本ブログの「読書日記」で扱うネタが枯渇する事態にでもなったら、ネタの仕込みのために一度黒豹シリーズを読んでみたいとすら思う。本書で紹介されていたのは『黒豹スペース・コンバット』のシリーズ。さらに本書では、『黒豹ダブルダウン』はもっと凄まじいとの感想が述べられている。

黒豹スペース・コンバット〈上〉―特命武装検事黒木豹介 (徳間文庫)

黒豹スペース・コンバット〈上〉―特命武装検事黒木豹介 (徳間文庫)

  • 作者: 門田 泰明
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 文庫
黒豹スペース・コンバット (中) (徳間文庫―特命武装検事黒木豹介)

黒豹スペース・コンバット (中) (徳間文庫―特命武装検事黒木豹介)

  • 作者: 門田 泰明
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 文庫
黒豹スペース・コンバット〈下〉―特命武装検事黒木豹介 (徳間文庫)

黒豹スペース・コンバット〈下〉―特命武装検事黒木豹介 (徳間文庫)

  • 作者: 門田 泰明
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2003/07
  • メディア: 文庫


今久し振りに本書を読み直してみて、新たな発見もあった。

僕は2000年から2003年まで米国バージニア州アーリントンに住んでいたことがある。ポトマック川を挟んだワシントンDCの対岸だ。地下鉄オレンジラインで、最寄駅はEast Falls Churchという。この駅を通勤で使っていた時、朝駅前でよくビラ配りをしている人々を見かけた。なんだかよくわからないが、ビラは受け取ることにしていた。

そんなある日、いつもと同じような薄い冊子を受け取った。中間選挙にでも立候補を予定している候補者のPR誌だろうと思った。その人物の名はリンドン・ラルーシュという。その冊子をペラペラめくるうちに、フリーメーソンという言葉が何度か出て来るのに気付いた。それもあまり良くない意味で。それ以降、ラルーシュの運動員の配布するビラはあまりキープせずにゴミ箱直行にしていた。そのうちの自動車通勤に変えたこともあり、ラルーシュのことなど忘れていた。

ところが、今回本書を読み直してみたら、ラルーシュに関する記述を発見した。
 反フリーメーソン団体EIRの指導者リンドン・ラルーシュ――この人はなんと、世界は英国貴族によって操られていると信じている。英国貴族が、戦争や飢餓や産児制限によって世界の人口を減らし、富の独占を図っているというのだ。ラルーシュの主張によれば、この陰謀が完成したなら、世界は新たな暗黒時代に突入し、民衆は麻薬やテレビやロックによって骨抜きにされ、ロンドンの銀行家や貴族出身者たちの奴隷にされてしまう。
 EIRはアメリカ国内はもちろん、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ各国に支部を持つ。週2回発行の新聞「ニュー・ソリダリティ」の他、5種類の雑誌を発行している。たくさんの下部組織を持ち、会員の数は数万人、雑誌購読者は数十万人いるという。
 ラルーシュの支持者たちのやり口はすさまじい。彼らは反核論者や環境保護団体を激しく攻撃する。「ジェーン・フォンダは鯨のエサにせよ」というプラカードはピーター・フォンダを激怒させた。キッシンジャー元国務長官はホモだと中傷された。敵(英国貴族)が汚い手を使ってくるのだから、こっちも汚い手を使ってかまわないのだ、というのが彼らの信念なのだ。
 ラルーシュはいろいろな組織や団体を敵視する。陰謀論者が敵視するお決まりの組織も、敵の1つである。それには、例によってロックフェラー家、日米欧三極委員会、国際銀行家、シオニスト、イエズス会、フリーメーソン、アメリカン・シビル・リバティズ・ユニオン、東部体制派のリベラル、名誉棄損防止連盟、社会主義インターが含まれる。いずれもイギリスが裏で操っていると、ラルーシュは信じている。
 (中略)彼はKGBに反対するが、そのいっぽうでKGBはCIA及びFBIと結託していると信じている。ラルーシュによると、この三機関は英国情報部のために動いているのである。
(高橋明・訳)
 先日、常温核融合騒動の顛末をレポートしたJ.R.ホイジンガ『常温核融合の真実』(化学同人、1995)という本を読んでいたら、このラルーシュの名が出てきたので驚いた。彼は今、詐欺罪で15年の懲役刑を受け、連邦刑務所に服役中であるという。獄中のラルーシュは、常温核融合信者のインタビューに答えて、常温核融合の存在を認めない体制派の科学者を「狂信者以外の何ものでもない」と非難したという。
 一時期は脚光を浴びた常温核融合も、もはや陰謀論者の助けを借りねばならないほど、追い詰められているらしい。(後略)
(pp.291-292)
…真面目にとり合わなくて良かったかもしれない。
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コメント 3

heroherosr

こんにちは、nice!とコメントをいただきましてありがとうございます。

私も子供のころに1999年に来るという恐怖の大王に脅えましたし、色々な不思議な話に興味を持っていました。

今でも与太話の類いは好きですが、大人になって余計な分別が付いたせいか簡単に信じることはできません。子供のころに持っていただろう純粋さが無くなってさびしくもあります。
by heroherosr (2010-02-21 11:12) 

ほりけん

コメントありがとうございました。
また頑張りますのでよろしくお願いします。
by ほりけん (2010-02-22 10:12) 

荒田実験再現

>一時期は脚光を浴びた常温核融合も、もはや陰謀論者の助けを借りねばならないほど、追い詰められているらしい。

荒田方式の固体核融合は再現に成功しているのですよ。全く追い詰められていません。脚光を浴びているのは、ICCF15を見れば分かるとおりです。
2009/3/30 < JCF9報告 >
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page285.htm
●佐々木氏(神戸大学)
 荒田吉明先生の実験の再現実験に関する研究。双子構造をもつ新装置を作成し、ナノサイズPd粒子も様々な種類のもの
を使ってArata実験をさらに詳細に調査。熱出力、圧力等の詳細な実験データを提示。Arata実験の再現に成功。
本実験は神戸大学、高橋亮人先生、テクノバの共同研究。
●高橋亮人先生(大阪大学)
 上の佐々木報告に追加する形の詳細説明。Arata実験が再現できたことを補正の効果などを交えて説明。重水素ガスを
流した方が軽水素ガスの場合よりはるかに多くの過剰熱が出ている。中性子やガンマー線の発生はなし。ナノサイズの
複粒子Pd/PdO2/ZrO2粒子(これに重水素を通すと過剰熱発生)の特殊な物性にも言及。メゾスコピック効果がどうの。
by 荒田実験再現 (2010-02-27 20:53) 

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