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新技術でインドの農村医療を変える [インド]

前回に引き続き1月14日付Hindustan Times紙特集記事「Big Picture」からの紹介である。「革新的かつ費用負担可能(Innovative and affordable)」(Sanchita Sharma記者)と題したこの記事は、前回が農村での発明を実用化するための制度インフラの制約のお話だったのに対し、従来ハイコストでなかなか農村にサービス提供ができなかった医療セクターで、民間企業と政府が新技術の開発に向けた努力を重ね、それを克服しつつあるという事例を幾つか紹介している。記事全文は下記URLからダウンロード可能である。
http://www.hindustantimes.com/News-Feed/newdelhi/Innovative-and-affordable/Article1-497181.aspx

以下にその要約をご紹介する。

Mac-i.jpg1)「MAC i」と呼ばれるこの装置は、手で持ち運ぶことができ、ボタン1つで数分で心電図検査とその結果を印字する。心臓発作や不整脈、心不全といった心臓関連の問題を調べることが可能である。MAC i は1台Rs.25,000である。

2)この装置はバンガロールにあるゼネラル・エレクトリック(GE)の健康関連部門(GEヘルスケア)の研究開発センターが開発したもので、同社がいう「逆イノベーション(reverse innovation)戦略」の一環である。この戦略は、新興市場国の中でもより所得水準の低い国での成長を加速させることを目的としている。

3)MAC i の導入により、これまでインドの民間病院で心電図検査を受けた場合に1回Rs.300がかかっていたのが、僅かRs.9に引き下げられたという。パラメディカル・スタッフでも内科医であっても、どこにいようが事前の僅か数分間の研修でMAC i を動かすことができる。

4)GEはこうした、高価格の製品の開発から新興市場国の状況に合い、地元の技術を生かして研究開発を進めるような方針転換を行なった大手企業グループの1つである。そしてこうして開発された低価格の技術を世界中で適用して行きたいと 考えている。GEヘルスケアが2,800億ルピーを投入して進めてきた「Healthy Imagination」というグローバル・プロジェクトに一環として開発された技術は100以上に及び、これらの技術革新によって、生産コストの削減や、購入者層からのアクセスの改善、質の向上等に成果を挙げた。

CX50.jpg5)インドでは12億人の人口の70%が農村に住み、医師の80%は都市かその周辺部に集中している。農村では革新的な医療技術が必要である。農村でも購入可能な価格帯での製品販売は、農村部で行なわれてきた無料ヘルスキャンプの開催頻度を週2回から6回に引き上げ、年間10万人の人々が心電図検査にアクセスできるようになった。

6)同様に、フィリップス社は「CX50」と呼ばれる移動式心エコー 図診断装置(右写真参照)を開発し、これはリューマチによる心疾患を早期に発見してペニシリンを使った診療を可能にした。

LullabyXP_140.jpg7)こうした新技術の開発に関わっているのは民間セクターだけではない。中央政府は現在、5歳未満の幼児死亡の45%を占める新生児期の死亡例を削減することを目標に掲げ、Navjat Shishu Suraksha Karyakramと呼ばれるプログラムの下で、基礎的新生児ケアと蘇生に関わるヘルスワーカーの訓練に取り組んでいるが、こうした取組みも、GEヘルスケア社の開発した「Lullaby Incubator XP」や「Lullaby Incubator TR」(右写真参照)といった新技術によって加速している。都市近郊や農村のクリニックや輸送時の新生児ケア用に設計されたこれらの保育器は、操作が簡単で、通常の保育器の平均価格と比べて70%も安い価格設定となっている。全国農村保健計画(National Rural Health Mission、NRHM)の下で、マハラシュトラ、カルナタカ、アンドラプラデシュ、ケララ、タミル・ナドゥといった州では、新生児ケアの拡充のため、コミュニティレベルのヘルスセンターにこうした装置を導入し始めている。こうした努力もあって、インドの乳幼児死亡率は、2005年の100-人当たり58人から2009年には53人に減少している。

8)アポロ・グループの遠隔医療(テレメディシン)の取組みも、小都市や農村の200のセンターを繋いでより多くの人々に医療サービスを届ける取組みとなっている。こうしたテレメディシン・センターと心電図やX線写真機等を搭載した移動式バンを組み合わせたネットワークは、即時診断とオンラインでの診療、そして必要あれば専門医への紹介といった一連の流れを全てカバーする。アポロ病院は46の病院を運営しているが、この中にはアンドラプラデシュ州アラゴンダ村にある50床のチャリティ病院も含まれる。

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今週はインド農村部に住む多くの貧困層人口を対象とした新技術と製品の開発に携わる日本の企業やNGOの取組みに多少ながらも接する機会があった。直接貧困層を購買層として見るものでなくても、こうした農村貧困層へのサービス提供において、実際にフィールドで活動するNGOや末端政府組織のフィールドワーカーが簡便に操作できる低コストの技術であってもいいと思う。こういう取組みがどんどん実用化されて現場で利用される日が来ると嬉しい。
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カツ

貴重な情報です。先日、神奈川県3Mのショルームでみました聴診器は記録装置がついていて、地方村で検診をした記録を、地方総合病院でOUTPUTする簡単なものもありました。医療器材も日進月歩ですね。
by カツ (2010-01-23 02:38) 

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