SSブログ

ビジネスパートナーシップの組成 [読書日記]

PPP.jpgJICA(独立行政法人国際協力機構)
『途上国の開発事業における官民パートナーシップ導入支援に関する基礎研究』
2005年3月
内容紹介
 近年、国際機関や欧米援助機関の間で、途上国の開発業務をより効率的に促進するために民間セクターの参加を求める動きが活発化しており、官民パートナーシップ(Public- Private Partnership: PPP)と呼ばれる政府、民間企業・NPOが契約に基づいて協力する形態が普及しています。
 一方、わが国においても援助の効果、効率性を高めるために開発プロジェクトの持続的発展性を確保するという課題に直面しており、今後は施設の建設だけではなく維持管理を含むプロジェクトの運営に深く係わっていく必要があると認識されています。このプロジェクトの運営については公的機関よりも民間が優れていることは広く了解されていますが、この観点からわが国のODAにPPPを導入する必要があると考えられます。
 そこでJICA国際協力研修所では、このPPPに関する世界の動きについて調査し、コンサルタントの方々やJICA職員を中心とするJICA事業関係者のためのPPPの入門書をまとめました。本書がODA事業との関連において、PPPを理解するための材料となれば幸いです。

最近、「事業仕分け」というので予算カットの対象となったJICAの研究所が、2005年に出した報告書を紹介する。

今僕はインドにいて、ここで言う「パートナーシップ」の組成に関わっている。その関連で先日はハイデラバード、インドール、ムンバイと駆け足で巡る旅をしてきた。日本から来られた企業の方々に同行しての旅である。

この旅の過程で、この報告書のことを思い出していた。僕はこの報告書をかなり早い段階で読んでいて、「パートナーシップ」の組成に何が必要かという点では本書の記述に賛同するところがかなりあった。
PPPの事業組成にあたって、誰がイニシアチブを発揮したのかは事例によって大きく異なる。パートナーシップを成功裏に組成するためには、関係するすべての主体に積極的に働きかけ、調整を行う推進役(champion)のリーダーシップが必要である。しかし、途上国でのPPPの場合、事業スキーム全体のアレンジを誰が推進役となって担うのかがよくわからないと指摘されている。(p.163)
この記述はその通りだと初めて本書を読んだ時にも思ったが、インドに来てみてさらにその意を強くしたところもある。

現地に情報収集の拠点を設けている日系企業だったらまだしも、そうした拠点もない企業がインドの特定の地域で何らかの開発課題に取り組む活動を行ないたいと考えた場合、ビジネスパートナーシップの組成の最も最初の段階の相手探しの部分から難しい。そして相手がある程度同定されても、次は言葉の問題もある。インドの一般的状況、活動を検討する対象地域の社会経済状況もよくわからない中で、英語での情報収集にもハンデがあるのは非常に大きい。そして、仮に現地パートナーが同定されても、そこから協議を重ねて最後には合意事項を文書化するのも大変だろう。

本書の中で今僕が最も参考にしている記述は次の囲み記事だ。
パートナーシップ組成上のポイント
インフラや社会サービスの官民連携ではないものの、民間企業が地域住民やNPO/NGO、他企業、政府機関などとの間で緩やかなビジネスパートナーシップの組成を図るプロセスを、島本(2003)は下記のようにまとめている。
第1段階 パートナーの発掘
イニシアチブをとる推進役が必要。その推進役が各パートナーの要望や関心、能力を熟知し、目的についての共通の理解が得られるかどうか、またそれぞれのパートナーの費用便益を評価しながら業務範囲、メンバーを決める。
第2段階 コンセンサスの形成
固定メンバーのそれぞれの役割分担や戦略について「覚書」という形で合意を形成し、また目的に到達するためのそれぞれの能力を高める工夫(組織対応)をする。協議を通じてコンセンサスを形成するが、大切なことは常に弾力的に対応し、変化を排除しないことである。この際、3つのC――即ち、①核となる目的(Core Objective)、②相互補完性(Complementarity)、③能力(Competence)がキーワードとなる。組織としての決裁手続きや、伝達方法、リスクの軽減方法や資金調達方法など、運営に必要なチェックポイントをこの段階では押さえ、実施に向けた体制づくりを行う。
第3段階 実施
実際にパートナーシップを通じて事業を稼働させ、成果を計測しつつ、ステークホルダー間でコミュニケーションを頻繁にとりながら、状況への対応を行っていく。
第4段階 評価
各パートナーの目的達成度評価と、パートナーシップがスタンドアローンとして稼働が確保される状況になっているかどうかを判断する。仮に目的の大半が達成され、各パートナーの個別目的も達成されたと判断されれば解散もあり得る。
(p.164)http://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/archives/jica/field/pdf/200503_01_06.pdf
「推進役」への言及はこの中の第1段階にしか書かれていないが、よくよく読んでいくと少なくとも第2、第3段階にもその存在を匂わせる記述が存在しているように思う。今はいきなり第4段階の話ではなく、僕が関わっているのも確かに第1段階で企業の方々が現地パートナーを同定する作業のお手伝いをしていた段階だったのだが、これから第2段階の合意事項の文書化の過程でも、それを企業と現地パートナーとの間だけで進めてもらうのはかなりの困難が予想されるので、現地にいる僕らがアレンジャーとして関わっていかなければならないのではないかと思っている。その意を強くしたのが今回の旅だった。

「事業仕分け」で云々されているJICA研究所だが、昔の報告書には結構役立つものがあるような気がする。本書はこのアレンジャー的仕事をJICAの現地事務所がもっと担うようにならないといけないと主張しているのだが、直営の事業を沢山抱えて忙しそうな彼らがこういう手間ひまかかる仕事に十分な時間が割けるとも思えないのが残念だ。もっとも、僕が今お手伝いしているのは「官民」パートナーシップの組成ではなく、「民民」パートナーシップの組成なのだが…。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0