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MP州西部で乳幼児死亡事例多発 [インド]

少し古い話題になるが、11月28日のHindu紙の記事からご紹介したい。ちょうどマディアプラデシュ州(MP州)に二度に渡り出かけてきた後だけに、この記事の報道には少し胸が痛くなった。「MP州では栄養不良が伝染病並みに(Malnutrition reaches epidemic proportions in Madhya Pradesh)」(Mahim Pratap Singh記者)であるが、記事の発信元がMP州ジャブア(Jhabua)になっており、実はインドールに先月末に出かけた1回目のMP州渡航の際に、訪問先で同じ地名を耳にしたことがあった。MP州西部のグジャラート州との州境に近い町だ。

マディアプラデシュ州ジャブア(Jhabua)


記事の要約は以下の通りである。

1)ジャブア県のアガシア、マダラニ両村では、ここ4週間で25人以上の子供が死亡している。両村は、少数部族(トライブ)が多くの人口を占める同県のメグナガル郡に属し、10月19日以来27人の子供の死亡が報告されている。この子供の殆どが0歳から6歳までの乳幼児で、「アンガンワリ(anganwadi)」と呼ばれる地元の小児保健センターでも登録されいなかった。同県での死亡事例の多くがデング熱やマラリアによく似た症状を示し、高い確率で貧血を伴うものである。

2)これはジャブアだけの話ではない。シディ県(Sidhi)でも8月以降、発症から48時間以内に命を落とした乳幼児が22人も報告されている。

3)最高裁委員会とUNICEFが共同発表した調査レポートによれば、MP州では、特に少数部族の間で栄養不良が蔓延しており、サブサハラアフリカよりもはるかに高い。

4)第3次全国家族健康調査(National Family Health Survey、NFHS-III)によれば、MP州の0-3歳の乳幼児の60%が栄養不良で、うち82.6%は貧血が原因である。同州の乳幼児死亡率は1,000人中70人で、部族居住地域に限定すればこの比率は1,000人中95.6人にまで悪化する。

5)レワ県(Rewa)ジャワ郡(Jawa)にあるコル部族(Kol)の居住区域は、最近発表された香港のアジアン・ヒューマンライツ・コミッション(Asian Human Rights Commission、AHRC)の国際アピールによると、栄養不良の乳幼児比率が80%を超えており、MP州政府は何らかの対応をすべきだと主張している。
http://www.ahrchk.net/ua/mainfile.php/2009/3333/

6)メグナガル郡医務官(Block Medical Officer、BMO)であるビクラム・ヴァルマ氏によると、同郡での14の死亡例における主因は深刻な栄養不良と貧血、熱帯マラリアであるという。アンガンワリはこうした地区から遠く離れたところに設置されており、初級看護助産師(Auxiliary Nurse and Midwives、ANM)もそこに行くことが殆どできないという。こうした状況が死亡事例を増やす結果に繋がっている。ヴァルマBMOは、そうした状況の中で、政府側は出来る限りのことはやっていると主張する。

7)しかし、州保健部の姿勢は非常に不透明である。K.K.ヴィジェイヴァルギヤ部長は、対応については既にBMOやANMに然るべく指示を出したが、乳幼児の死亡理由は栄養不良などではなく、おそらく季節性の熱病だろうと主張している。こうした行政側の無関心は、村人を地元のやぶ医者や民間療法に向かわせる結果になっている。

8)州保健行政の無関心だけではなく、他の社会保障スキームも状況改善には役に立っていない。アガシア村で死亡した乳幼児4人の父親は、職を求めて出稼ぎに出ており、家族と暮らしていなかった。全国農村雇用保証制度(NREGS)に基づく雇用カードは村長(sarpanch)が握っており、彼らの手元に渡っていないという。少数部族が伝統的な森林での生活を捨てざるを得なくなる状況は、これまで果実やその他の果物といった森林資源に依存してきた彼らの生活を一変させ、子供の栄養摂取機会を妨げるようになったという指摘もある。公的食糧配給(PDS)店はこうした部族居住区域では月に1回しか開店していない。

9)ジャブア県のマダラニ村では最近さらに1人の死亡が報告され、既に4人の死亡者を出しているアガシア村でも8人が危篤状態にあるという。にもかかわらず、県の行政官の反応は鈍い。

*記事本文は下記URLからダウンロード可能です。
http://www.thehindu.com/2009/11/28/stories/2009112858112000.htm

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どこの国、どこの地域に行っても、原因不明の風土病のようなものはあるに違いない。しかし、根っこのところでは結局栄養摂取状況が良ければそうした病因に対する抵抗力も高まるのではないかと思う。健康被害は社会の最も弱いところに出て来るという典型的な事例がこのMP州西部の病気である。
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toshi

ご訪問いただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
by toshi (2009-12-11 08:57) 

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