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オーガニックコットンの村 [シルク・コットン]

11月25日(水)、マディアプラデシュ州インドール郊外のオーガニックコットン栽培が盛んな村を訪ねてきた。デリーから日帰りの強行軍だったのでじっくり見ることができなかったが、今回は実は下見で、12月にもう一度調査をすることになっている。

今回訪問したのはプラティーバ・シンテクス社というオーガニックコットン農家からコットン製品製造までの工程を垂直統合した企業がコットン農家に対して様々な支援を行なっているプロジェクト「ヴァスーダ」の事業地である。プラティーバ社はマディアプラデシュ州に3ヵ所、ラジャスタン州に1ヵ所、オリッサ州に2ヵ所、オーガニックコットン生産農家を支援する事業地を持っている。

ヴァスーダ・プロジェクトは1998年にスタートし、現在10,000トンのオーガニックコットンを生産する。オーガニック方式で生産を開始してからオーガニック認定が受けられるまでには最低3年間の生産が必要だそうで、事業地を順次拡大してきたこともあって、現状10,000トンのうちオーガニック認定を受けたコットンは50%、残りは3年以内にオーガニックとなるとのことだ。

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DSC00199.JPG「オーガニック」ってどういう意味だろうか?今回の訪問はそれを理解するのにとても役立った。ヴァスーダ・プロジェクトでは、インドールから南に40kmほど行ったところにあるバグパルという村にデモンストレーション・センターを設けている。ここを拠点にプラティーバの技術普及員が午前、午後と分けて周辺のオーガニック農家を訪問して指導を行ない、時としてこのセンターでの研修を行なったりする。ナルマダ川からほど近いこのバグパル村を訪ねた僕達に丁寧に説明をしてくれたのは、州農業局を引退して普及員になったドゥベさん(65歳)だ。

「政府職員をしていた頃は『化学肥料を使って大量生産しよう』と指導していたのに、プラティーバ社に入ってからは化学肥料をいかに使わないかを指導しているんですよ。」―ドゥベさんは笑いながら説明してくれた。

実は、マディアプラデシュ州に限らず、何十年も綿花生産を行なってきた農家が集積しているような地域は、農民の自殺が非常に多い。最も有名なのはマハラシュトラ州ナグプール周辺のヴィダルバ地方だ。商業ベースに乗せるのに大量に生産しなければいけないから化学肥料を大量に投入する。そのためには肥料購入費用を捻出するのに農家は借金をしなければならないケースが多い。しかし、そうして生産された綿花も、国際市況は軟調で、安価でしか売れないので売れば売るほど採算割れし、借金が返済できない。それに、化学肥料を投入すると一時期は肥沃度向上して生産性は上がるかもしれないが、やがて土地がやせて作物が作れなくなるリスクもある。化学肥料を使えば健康にも影響が出る。

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そこでヴァスーダで取り入れられているのが上の写真の例だ。左から、家畜糞尿と野菜くず、土等を混ぜてミミズに食べさせる「ミミズ堆肥(vermicompost)」、主に牛の糞尿からエキスを取り出す濾過装置(美肌にも良いらしいし、これは自然の成長促進剤になるらしい)、右端はコットンの間にキマメ(pigeon pea)を育てる作付法である。キマメの枝葉が天然の肥料になるらしい。僕はこうした条植え方法があるのは以前から聞いていたが、まさか間に植わっているマメ類の方が背が高いとは知らなかった。遠くから見るとコットン畑だとはすぐにわからなかった。

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こんなのもあった。セメントで造られた貯水槽には水草が生い茂っていた。この水草の生育速度は相当速いらしいが、この水草自体が窒素を多く含む肥料に使えるらしいし、この貯水槽にはヤゴの抜け殻が縁に沢山残っており、トンボの成虫が飛び立っていたのがよくわかった。このトンボが、コットンの害虫を食べてくれるのだ。

家畜の糞尿だったら何でもいいというわけではないそうだ。できれば牛のがいいのだとか。

DSC00203.JPGあと面白かったのは「ホーマ・セラピー(Homa Therapy)」とか「アグニホトラ(Agnihotra)」と言われる供犠を取り入れていたことだ。元々はヒンドゥー教の司祭階級のみが行なっていたらしい。日の出と日の入りの1日2回、テーブル表で決められている時刻に、「ギー」と呼ばれる純度の高い乳製品と米粒を乾燥牛糞に乗せ、これに火を点けて燃やしながらサンスクリットの呪文を唱えるという儀式である。この煙と香は上空に上り、そこから周辺地域に降り注いで地域全体の生産性向上と病害の回避に役立つのだという。一種の自然調和型療法だ。地上のあらゆる創造物は5つの要素から構成されており、これと宇宙とのバランスを取ることで、宇宙と自然の調和を促すのだそうだ。

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デモンストレーション・センターの近くにはコットン農家のラルさんの畑があった。冒頭のコットン畑とコットンの写真は、ラルさんの畑で撮ったものだ。ラルさんはこの年の作付で既に2キンタル(200kg)のコットンを収穫している。ラルさんは地域の土地持ち農家らしく家もきれいで広く、居間には収穫を終えたコットンが高く積まれていた。外部から作業員を3人雇って2日で作業を行なったのだという。もう1キンタルぐらいは畑から取れそうだということだ。そしてこうして自宅の居間で貯蔵しておき、市況が有利だとみればそのタイミングで出荷するのだという。出荷先は、プラティーバ社に直接仕入れるのと近くの一般市場に出荷するのと2通りあるそうだ。もう1つの写真はナルマダ川にかかった橋のそばのレストランから橋の方向を撮ったものだ。

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ヴァスーダではこれ以外にもモデルファームを設けて何種類かのコットンを作付け、その年の気候や雨量を見ながらどの品種がその年の生産に適するかを見ながら周辺農家に種子の配布をおこなっているのだという。右の写真はプロジェクトで建設された倉庫。建物は完成しているが未だ完成したばかりでコットン貯蔵用倉庫としては未だ利用されてはいなかった。先述のラルさんのような土地持ち農家なら自宅の居間にコットン貯蔵できるかもしれないが、もっと小規模な農家になるとそんな施設を個人的に持っている人は少ない。だから、収穫後いったん貯蔵庫に格納して、市況を見ながら出荷時期を調整して行くのを支援するという発想が出て来る。この倉庫の敷地内には、建設中の学校もあった。プラティーバ社が資金拠出して建設しているもので、学校を作ることによって周辺農家の子供達が学校に通えるようにするというのが狙いらしい。ただ、資金難で建設が遅れがちだという。

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そしてひょんなことからプラティーバ社が支援している老人ホームも見学させてもらえた。プラティーバ社のHPでは社会貢献の一環としてこの老人ホームの支援が掲載されていたので、インドールの同社オフィスを訪ねた際にダメ元で聞いてみた。幸いこの老人ホームはヴァスーダのプロジェクト事務所から近いところにあったので、夕暮れ近くになってしまったが少しだけ立ち寄ってみた。12名の入居者がいるとのことだったが、うち男性3名、女性6名とお目にかかることができた。皆70歳ぐらいだと言っていたが、やっぱりこの年齢になってくると、お爺ちゃんよりもお婆ちゃんの方が元気元気。

日がな一日何をやってるのかと聞いたら何もやってないということだったので、ブリンダーヴァンの未亡人向け寄宿舎でやられていることを思い出しながら「それじゃあ歌を歌ってよ」とお願いしてみた。するとOKもする前から歌が始まり、お婆ちゃん達が僕らのような外国人にも1曲披露してくれた。

「今度来る時は食事ご馳走してよ」―そう僕が尋ねると、「それじゃあもっと早くから来ること教えてくれんとねぇ」と切り返された(そりゃそうだ)。本当に元気なお婆ちゃん達だった。

プラティーバ・シンテクス社のHPは下記の通りです。
http://www.pratibhasyntex.com/index.aspx

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