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同一州内でも見られる出生率格差 [インド]

カルナタカ州に農村調査に行って、現地のNGO関係者からプロジェクトの事業地のお話以外にもいろいろと面白いお話を聞くことができた。本日の話題は、そうした方々との雑談の中からたまたま耳にしたネタである。

9月18日付のDeccan Herald紙のコラムに「開発こそ必要であって、産児制限ではない(Need for Development, Not Birth Control)」というのがあったという。書かれたのはバンガロールに拠点のある、Institute for Social and Economic ChangeのK. S. Jamesという研究者の方である。コラムの前文は下記URLからダウンロード可能だ。
http://www.deccanherald.com/content/25824/need-development-not-birth-control.html

記事の趣旨は以下の通りである。

1)カルナタカ州のイェドユラッパ首相(ホント発音しにくい名前!)は、最近行なった中国訪問の後、中国の一人っ子政策にいたく感銘を受け、カルナタカ州でも同様の政策を導入すると発表した。3人以上の子供を設ける夫婦に対してペナルティを設けるというものである。

2)しかし、この政策は貧困層に対してペナルティを課す効果をもたらす恐れがある。カルナタカ州では、州南部及び西部では既に合計特殊出生率が2.0を下回っているが、州北部では低下傾向にはあるものの依然として2.5-3.0という水準である。従って、この政策が導入された場合、北部住民を狙い撃ちにしたものになりかねない。しかも、この北部の方が全般的に開発が進んでおらず、ただでも存在する州内の南北格差をさらに拡大させる。

3)夫婦が何人の子供を設けるのかは、様々な要因が絡んでいるが、出生数が多いのは貧困であるがゆえの結果であることが多い。貧困削減への取組みも十分拡充されていない中で出産にペナルティを課すやり方は、自分達に一方的に否があるとは言い切れない結果について貧困層にペナルティを課すということになりかねない。

4)従って、州政府はこのような人口政策を導入するよりも、先ずは開発課題への取組み強化を考えるべき。

まあ、極めて妥当な論調である。イェドユラッパ首相も、中国の政策よりもお隣のケララ州の政策を見習った方がいいのではないかと思う。ただ、この人口学者が文中言及しているような、合計特殊出生率が人口置換水準2.1を既に下回っているからじきに人口減少が起きるというのは、現時点では言い過ぎじゃないでしょうかねぇ。

ただ、同じ州内でもこれだけの開きがあるのだというのがこのコラムについて聞かされた時の偽らざる感想だった。

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《外国人が来たというので教室から出てきたしまった子供達。集中してないなぁ…》

DSC00157.JPG
《多分親子。北カルナタカもいずれ少子高齢化が進むのだろうか…》

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Panda

インドの情報満載ですね。この膨大な記事の量に敬服いたします。実は今回一番驚いたのがこのTFRの低さです。子どもが一人か二人、というのはまだ少数派だと思っていましたので。そういえば、マイソールのオートリキシャのおじさんも子どもは二人と言っていました。
今後も楽しみに拝読させていただきたいと思います。
by Panda (2009-09-30 19:50) 

Sanchai

☆Pandaさん☆
コメントありがとうございます。ひょっとしてマイソールに行くと仰っていたあの方でしょうか。その折はお世話になりました。

さて、実はカルナタカ州はミレニアム開発目標クリアが2012年頃と言われているくらいマクロ指標ではパフォーマンスが良好な州です。私がこのコラムを読んで驚いたのは、同じ州の中でもTFRにこれだけの格差があるということでした。
by Sanchai (2009-10-01 01:01) 

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