SSブログ

スラムでのヘルスキャンプを見学す [インド]

9月13日(日)、知り合いのいるJICAインド帰国研修員同窓会(JAAI)が市内スラム地区で無料ヘルスキャンプを開催するというので、見学に行ってみることにした。場所は、僕の住んでいるディフェンス・コロニー地区から線路を隔てた斜向かいにあるロディ・コロニー地区である。Bamyan Tree Schoolという学校のそばにある「ハリジャン・キャンプ」というのがそのスラムだ。

近所だからというので歩いてでかけたのだが、目指すBamyan Tree Schoolというのがどこにあるのかわからず、ロディ・コロニーの中を1時間近く徘徊することになった。今までの経験上、スラムというのは土地の所有権のはっきりしていない鉄道線路の近くとか、川の土手とかに形成されるだろうと想像し、ロディ・コロニーの中でも線路寄りの地区を最初に探し回ったからだ。

IMGP3704.JPG
《ホント、わかりにくい地図。地図の読めない人が描くと地図はこうなる》

線路の近くに確かにドビ(洗濯カースト)の集落があったので入ってみたが、ヘルスキャンプらしいものはどこにもない。仕方なくそこの住民の方に「Bamyan Tree Schoolはどこですか?」と拙いヒンディー語で質問、応対してくれたオジサンの説明からなんとなくもっと北の方だろうと思ったので、場所を変えて少し歩いた。ようやく見つけた主催者の掛けたバナー(横断幕)もヒンディー語オンリーだったので、気を付けていないと見落とすところだった。

IMGP3705.JPG
《この横断幕が目印》

この通りは何度か通ったことがある。表通りはCafe Coffee Daysもあったりしてそれなりのマーケットになっているのだが、このバナーから奥に入っていくと、途端に別世界になってしまうので驚いた。

IMGP3721.JPG
IMGP3724.JPG

先週訪れたデリー・カントンメント駅近くのスラム地区(カザン・バスティ)ほどではないが、生活の厳しさ、貧しさを実感させられるスラムだ。電柱からサーカスのテントの張りのように沢山のケーブルが四方八方へと拡がっている。明らかに盗電をやっている風景だし、ゴミ捨て場と水場が同じ場所にある。上水と下水がごちゃ混ぜになっており、そこでホースから出ている水を飲んでいた女の子を目撃してショックを受けてしまった。ここの住民は約2000人。殆どがウッタル・プラデシュ州やビハール州から来た人だという。ヘルスキャンプの開催に協力された地元の住民のリーダーの方のお話によると、ここには20年以上前から住んでいる人たちがおり、しかもウッタル・プラデシュ州でも最も貧しいといわれるブンデルカンド地方の出身の人たちが同郷の知人を頼ってここに集まってきたのだという。5割はヒンドゥー教、3割はムスリムだそうだ。そして、ここに住む人々は、男性であれば自動車の運転手になっている人が多く、女性は近所に掃除婦等で家のお手伝いで稼ぎに出ている人が多いらしい。きっとディフェンス・コロニー当たりにお手伝いで来ている女性の中には、ここのスラム出身の方もいらっしゃるに違いない。

JAAIがヘルスキャンプを開催するのは昨年に続き2度目で、今年は小児科検診だけでなく、歯科検診と結核検診も行なわれた。また、昨年は14歳以下の子供だけが対象だったが、今年は対象を拡大し、住民だったら誰でも来て良いことにした。やはり子供が多かったが、中にはお婆ちゃん(に見えたが年齢を聞いたら50歳ぐらいだったので驚いた)もいらっしゃった。検診に当たったドクターの処方箋に基づき薬品の無料配布も行なわれ、治療が必要と判断される患者さんについては、ここから3kmほどのところにあるサフダルジャン病院で無料診療が受けられるという特典が付けられていた。普段はなかなか医者にもいけないスラムの住民にとっては貴重な検診の機会となっていたと思う。

IMGP3706.JPG
IMGP3707.JPG
IMGP3708.JPG
IMGP3709.JPG
IMGP3710.JPG
IMGP3711.JPG
IMGP3713.JPG
IMGP3714.JPG
IMGP3715.JPG
IMGP3716.JPG
IMGP3717.JPG
IMGP3718.JPG
IMGP3719.JPG
IMGP3722.JPG
IMGP3723.JPG

JICAの研修員というのは普段は政府の職員として別の仕事をされている方ばかりだが、この日は実際に診察にあたっておられたドクターの方の他にも、受付係や会場設営、ロジ面でのお手伝いといったボランティア活動を多くの方々が行なわれていた。僕らが普段の自分の仕事を離れてこうした形でボランティア活動に関わるというのは、思っていてもなかなかできることではない。ほんと感心する。地元の人々に聞くとこの地域でヘルスキャンプを開催しているのはJAAIしかないらしく、住民の方々の健康改善にある程度の寄与はしているらしい。これからも続けていってもらえたらなと思う。

さて、ドクターでもない僕がただボーっと見学しているだけでも足手まといになるかなと思い、会場で配布されていた結核の啓蒙用小冊子を使い、来ていた子供達に読み方を教えてもらうという僕のとっておきの地域アプローチ法を実践してみることにした。子供達に声を出して読んでもらえればその内容について彼ら自身も勉強になるだろうし、何より僕自身が発音の勉強になる。それをやってみて、ここの子供達が意外とヒンディー語を読めるというのもわかった。9割の子供は近所の学校にちゃんと通っているのだという。英語はちょっと無理だったけれど、ヒンディー語の読み書きはけっこうできるようだった。子供達にヒンディー語を教えてもらうというのは今でも妙案だと思っているが、これまでの勉強では丁寧なハイ・フォーム(例えば、「あなた」のことは「Aap」という)で喋ることを前提にしてきたのに対し、子供を相手にする場合は普通のロー・フォーム(「あなた」のことは「Tum」という)を使わないといけないということに気付いた。これは主格のフォームに合わせて動詞変化も余計に覚えなければいけないので大変だなと思う。

IMGP3712.JPG
《とりわけ懐っこかったカージョルちゃん(2年生)、やたらと写真撮影を要求してきた》

ここのスラムは僕の自宅から歩いて行けるため、これからも時々覗きに来て、子供達に僕のヒンディー語の先生になってもらおうかなと思っている。これまで僕は、北東部のシ―ラムプールや西部のカザン・バスティといったスラム地区を訪問してきた。いずれも活動しているNGOの代表と僕が知り合いであったから実現した訪問であり、これからも時々行ってみたいと思っているが、ロディ・コロニーのスラムはもっと頻繁に訪問できそうな気がする。この日のヘルスキャンプは朝10時から午後1時まで行なわれたが、その間に延べで700人以上が訪れたという。住民の約3割だ。

そこにキャンプ終了までとどまって見学していたら、住民の方々から、「来週日曜日はこの場所でお祭りがあるから来てくれ」と誘われた。出不精男が週末に外出する理由が1つできた。来週も行ってこようかと思う。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:地域

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0