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日本の自殺者 [時事]


今年2月にケララ州トリバンドラムで開催された「超高齢者の健康と介護に関する国際専門家会議」の1セッションで発表をさせてもらった際、フロアからの質問で、「日本ではなんで自殺者が多いのか」というのがあった。

――そりゃあ、超楽観主義者のあんたたちと違い、日本人は悲観論的思考に陥りがちだからだ。

と言いたいところであったが、そこは真面目に応対した。

「どこの国の社会でも、将来に希望が見いだせなくなったらこういう選択をする人はいらっしゃるでしょう。」

ここインドでだって農民の自殺は非常に多くて問題視されているではないか。借金でがんじがらめにされて、返済は収穫した農作物がちゃんと売れるかどうかにかかっているが、不作になることもあるし、逆に市況が緩んで高値で売れないことだってある。ちゃんとした収入がなければ返済などできないから、どうしょうもなくなったら自殺も考える人はいるだろう。日本はなぜ自殺者が多いのかという前に、インドで自殺する人はなぜ自殺するのかを考えてほしいなと思う。特に、人生である程度の成功を収めてきた都市部に住む高齢市民であれば、なおのこと農村部の高齢者の生活や、現役世代の農民の生活にも思いを馳せて欲しいと思う。

先ほどの質問に対して、僕がさらに補足したのはおよそ次のようなことだ。但し、聴衆が高齢者中心ということもあって、ある程度日本の高齢者を中心に据えて話した。

1)(所得の保障の問題)やはり、現役生活を退いてから何年あるかわからない自分の生活にかかる費用に対して、十分な収入が確保されていなければ不安でしょう。年金も老後の生活を十分に保障してくれるほど潤沢ではないですし、これからはもっと給付が削減されていくでしょう。特に、日本の60~70代は同一世代内での所得格差が最も広い年齢層ですから、特に低所得者層は将来の生活に不安を抱く可能性が高いと考えられます。

2)(健康の保障の問題)医療にしても介護にしても、利用者の負担が徐々に増す形で制度改革が行なわれています。医療は別の理由(医師の不足)もあって身近なところでサービスが受けにくくなってきていますし、介護の方は社会保険でカバーされる範囲が徐々に狭められてこれも受益者のニーズに合ったサービスが受けにくくなってきています。寿命が延びれば医療や介護のサービスを利用しなければならない頻度は増えるでしょうが、それが利用できないとなると不安です。社会保障が受けられなければ家族内でのケアということにならざるを得ませんが、介護に疲れて老夫婦が心中自殺するといったケースも多いです。

3)(地域の中での生活の問題)これは男性の場合に特に言えることでしょうが、長年会社勤めを続けて、引退して地域に戻った場合、自分の地域社会の中での居場所の確保がなかなかできない方が多くいらっしゃいます。地域の中で他の住民との繋がりがあまりにも少ないから、精神的に不安な状況に陥っても身近なところに相談できる相手といったら妻しかいません。会社勤めを終えられたシニア世代の男性の場合、自分の住む地域で何らかの活動に初めて参加するまでに要した期間は半年以上という方が非常に多いといいます。地域の中で人と人との繋がりが薄れてくれば、人はより不安な気持ちに陥ります。

――まあ、こんなところでしょうか。

海外から日本を見ていて、会社にしても、社会にしても、これから確実に良くなると断言できる要素がものすごく少ないのがとても気になっている。子を持つ親としては次世代の人たちにできる限りの安心感を得られる社会を作ってあげられるための努力は当然しなければいけないと思っているが、どんどん良くなくなる「大きな流れ」もひしひしと感じている。せめて、我が子には「日本」を唯一の選択肢としない生き方をさせないとなと思う。
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