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クリックだけでは救えない [時事]

職場の同僚に日本で買ってきてもらった『ニューズウィーク日本版』2009年7月8日号、カバーストーリー「世界が尊敬する日本人100」に加えて、もう1つ僕の興味を惹いた記事がある。少々長いが、紹介してみたいと思う。
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ネットにはびこる軽薄な社会運動 ― It Feels Like Activism
エフゲニー・モロゾフ(オープン・ソサエティー財団研究員)

Newsweek2009-7-8.jpg  友人からこんな内容の電子メールを受け取ったことはないだろうか。「インターネット上で行われている署名運動に参加してほしい」「人権擁護や環境保護をテーマにしたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のグループに入ってもらえないか」
  多くの人は依頼に応じるはずだ。集会などに出掛けなくても、パソコンの前から動かずに社会貢献ができるならもちろんだ―――。
  フェースブックのようなSNSサイトのせいで「軽薄な社会運動」が広まっている。パソコンのキーを打つだけで、社会に貢献しているような自己満足が得られる。だが、成果はあまり期待できない。それどころか、本物の社会運動の足を引っ張る恐れもある。
  フェースブックで展開されている「アフリカの子供を救え」キャンペーンの参加者は60万人を突破。既に総額2801ドルの寄付が集まっている。1人で118人も勧誘した人もいるという。寄付額の最高は115ドル。サイト上では参加者が自画自賛するメッセージが目立つ。
  米ジョージ・ワシントン大学の政治学者マーク・リンチは、こうしたキャンペーンの効果に懐疑的だ。「(フェースブックの)グループに参加することは、考えられる限りで最も努力の要らない政治活動だろう。抗議行動に出掛けるときのような熱意は必要ない。政治活動につきものの組織づくりの苦労とも無縁だ」

本物の支援活動に悪影響
  軽薄な社会運動は心理学者の研究テーマにもなっている。コペンハーゲン大学(デンマーク)の心理学者アンダース・コールディングヨルゲンセンは、でっち上げのテーマでどのくらいの人を集められるか試してみた。コペンハーゲンの噴水を取り壊しから救おうと125人に呼び掛けたところ、最終的な参加者は2万7000人に上ったという。
  ネット上の多くのキャンペーンは、人々の意識が向上すれば問題は解決できるという前提に立っているようだ。だが、スーダンのだルフール紛争や気候変動といった複雑な問題の場合、そううまくいくとは限らない。巨額の資金を集めたり、実際に活動するボランティアを募ることが難しくなったという声もある。
  軽薄な運動とはひと味違う活動も存在する。獄中にいるエジプト人ブロガーの釈放を求めるグループは、そのブロガーの主張を翻訳出版しようとウェブサイトでこう呼び掛けた――寄付より行動を。
  もっとも、実際に役立つキャンペーンに難しい理屈は不要かもしれない。国連世界食糧計画(WFP)が運営するサイト「フリーライス」は、英語学習に役立つゲームを掲載し、広告収入で貧しい国にコメを送る。派手さはないが立派な活動だ。
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面白いな。1人1ドルでも60万人なら最低60万ドルは集まる筈だ。ところが2801ドル。ということは1人当たり1セントをはるかに下回る寄付でしかない。これが本当に成果だといえるのか、僕も正直疑問に思う。

こういう話題をネット上で掲載すると、自分の善意はそんなに軽薄ではないという人もいるかもしれない。僕もこういう「ワンクリックでなんとか」というイニシアチブに参加してなかったわけではないので胸を張って記事の内容を全肯定するつもりはないしそんな権利もない。ただ、その「ワンクリックでなんとか」という活動も、言われている「ワンクリック」が面倒くさくなっていつの間にかやめてしまった。自分自身も結構軽薄だったというのをこの記事にズバッと指摘されたような気がする。

もう1つ興味が湧いた理由が、この記事の執筆者がジョージ・ソロスの設立した財団の研究員であるという点である。ダルフールの紛争問題や気候変動、児童労働といった問題にいかに一般市民の関心を向けさせるのか、問題解決に向けて市民の本当の意味での「参加」をいかに促すのかは、かなり重要な課題であるが、有識者や専門家からなる活動グループは「政府がなんとかしろ」と提言書を必ず提出するし、政府機関も「それはぜひ我が社で…」というので予算獲得の口実にする。勿論それが最も効果的で効率的な問題解決の道であると言えるのならそれでもいいのかもしれないが、その他の手立ては本当にないのかというので、こういう財団の研究員が記事にあるような現象の有効性を調査していたという点にはとても感心した。

日本で言えば政府系の援助機関の研究員あたりがちゃんと取り上げてくれていてもいいテーマだと思うが、そうした話は聞いたことがない。


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みかんママ

この記事は私も読みました。
社会現象化する事で、小さな意識付けのキャンペーンとしては
良いかと思いますが、やはり実活動に支障をきたすのは
賛同しかねますね…

ワンクリック何とかは、私もやってました(^_^;
同じく長続きはしませんが、月に7回以上はクリックするよう
ノルマにしています。
by みかんママ (2009-07-19 21:18) 

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