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有機農業普及の兆し [インド]

マハラシュトラ州、有機農業普及に大きな進展
Maharashtra gives a big push to organic farming
2009年4月15日、The Economic Times、Jayashree Bhosale記者(プネ)

 マハラシュトラ州では有機農業が一大ブームとなりつつある。何人かの志ある人々が発起人となって呼びかけを行なっているからだ。シュリニワス・クルカルニーさんも、化学物質の含まれない食品というアイデアに魅かれ、多国籍企業での職を辞してプネで「Organic and Naturals」という小売店を開いた。6年前のことだ。
 「私が初めて有機食品のことを耳にした時、この分野でこれまでに働いてきた人々を訪ねてみました。そこにはヴァンダナ・シヴァさんのような活動家も含まれます。こうした人々の活動は、私にこの世界に踏み込む決意をさせるのに十分なものでした。」―――クルカルニーさんはそう言う。彼の小売店は最近ようやく財務的に採算が取れるところまで売上げが到達したという。「多国籍企業で長年働いてきたことで、私はこの小売業での5年間を耐え忍ぶことができました。現在では定期的に有機食材を購入して下さるお客様は1000人以上に達しています。未だ隙間市場でしかなく、来て下さるのは健康に特に気を遣っておられるお客様か外国に住むインド人の方々ぐらいですね。」
 (後半に続く)

今まで有機農業についてブログで紹介する機会は少なかったが、ちょっと経緯があってインドの有機農業について少しぐらい調べておいた方がいいかなと思うようになった。化学肥料や農薬を使って生産された野菜や穀物が実は健康には良くないという認識はインドの消費者の間でも徐々に広まりつつあり、ムンバイのような大消費地を持つマハラシュトラ州は先進的な取組みが多く見られる。
 社会活動家であるヴァスーダ・サルダールさんは有機食材生産を全ての人に利用可能なものにするというアイデアには積極的な姿勢を見せた1人である。きっかけは医者が彼女の夫に生鮮食材を与えてはならないというアドバイスをしたことである。夫は初期の白血病を患っていた。「栄養が豊富だと思っていた食材が人を殺すというのがわかって愕然としました。」
 サルダールさんは15人の農家からなるグループを説得し、プネから約60km離れたパンガオン村で有機農業を始めないかと勧めた。彼女はそこにいくらかの農地を持っていたからだ。「自分のお店で農薬や肥料を販売しているという若い農家の方も私達を支持してくれました。農業で使われている化学物質の危険性について私達以上によくご存知だったからでしょう。私達は2008年6月から野菜と穀物の取扱いを開始し、今ではプネ市内の300世帯の人々に食材を提供するところまで事業を拡大してきました。
 マハラシュトラ有機農業連盟(Maharashtra Organic Farming Federation(MOFF)は元警察幹部だったヴィクラム・ボーケリーさんが設立したNGOである。MOFFは、120団体ものNGOと連携し、2000人の有機農家のネットワークの構築に成功した。「農家にとって、有機農業は低費用で、借金も必要ない魅力的な選択肢の1つです」―――MOFFのディリップラオ・デシムク副代表はこう述べる。
 こうした有機農家はその生産物を直接消費者や小売業者に供給するため、仲買人の介在を抑え、傷みやすい産品の過剰な取扱いも避けることができる。有機農業は事業としての収益性を上げるのにも役立つと見られている。 
 有機農産品は通常そうでないものより3割から4割は割高だと言われているが、サルダールさんのような生産者はこれを通常の農産品と同じ価格で販売しようと試みている。有機農産品市場の潜在的規模はかなり大きいと見られているが、買い手はどこでそれを買えばよいかを知らず、生産者はそれをどのように売ったらいいのかを知らないという問題に直面しているという。 
 「信頼性の高い生産物がどの程度利用可能なのかがわからないことが最大の問題です」―――パルガオンのクルカルニーさんはこう言う。彼が住むパルガオンは前述のサルダールさんの学習活動が行なわれており、灌漑によるサトウキビ生産が盛んな土地であるが、農家を有機農業に切り替えるよう説得するのは難しいと言われている。ヴィダルバ県のように乾燥した土地であれば、プラサッド・デヴさんのような人が農家を有機農業に切り替えるよう説得するのは難しいことではない。彼は有機農産品を手数料ベースで取扱い、市場に出している。それでもデヴさんは不満を述べる。「農家は質の高い農産品を生産しようというインセンティブがあまりありません。」
 有機農産品の質を保証し信頼性を高めるのに有効なのは認証制度の導入である。興味深いことに、農家は最も質の高い農産品は輸出向けに出荷している。農産品・農産加工品輸出開発庁(APEDA、Agriculture and Processed Food Products Export Development Authority)によれば、2007/08年度にインドの有機農産品輸出は前年比30%も増えたという。インド国内で国際認証を受けた有機農業が行なわれている農地面積は100万ヘクタールと言われている。

高品質のものをしっかり作るというのはインドに限らず南アジアの多くの国で農民がちゃんと実践できていない農業普及上の大きな課題である。手間暇をかけて作ってそれでどうしても割高になる有機農産品を買ってもらえないなら、作る側もやる気が削がれる。健康向上に向けたメリットはあるとしても、採算が取れるのかどうかもちゃんと実証されないと農家も有機に切り替える決断はなかなか下しにくいかもしれないし。

その辺の実証研究がどの程度蓄積されているのかを少し調べてみたいと思っている。
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