SSブログ

デジカメでスラムドッグが見たスラム [インド]

レンズを通して自分の世界を見る
See their world through the lens
4月18日、Archita Wagle記者、DNA

【ムンバイ発】アトリナ・モールにあるキャノン・ラウンジに足を踏み入れた人が最初に見かけるのは、デジタル・カメラを持って何度もシャッターを押しながら走りまわっている子供達である。
 この日、「青年の船」インド同窓会とキャノン・インディアが主催した「僕らの世界、1つの世界(Our World, One World)」と題した写真展のオープニング・イベントが開催された。デリーのスラムに住む子供達による写真展である。
 キャノン・インディアの小西謙作社長兼CEOとアロク・バラドワージ上級副社長により開会されたこの写真展は、インドで暮らす社会的に弱い立場にある子供達の生活実態を知ってもらおうという啓蒙キャンペーンの一環で、アトリア・モールのキャノン・ラウンジでは5月9日まで開催される予定。
 実際に写真撮影を行なった子供達は、1ヵ月のワークショップに参加し、そこでデジタル・カメラと通常のカメラの違いや被写体毎のカメラ・アングル、捉え方、被写体の扱い方といった写真撮影の基本について学んだ。ワークショップには30人あまりの子供が参加した。こうした子供達はマヤプリ、デリー・カントンメント、レンワリ・ラインといったデリーのスラム居住区から選ばれた。
 どの写真も子供達がよく目にするスラムの日常生活を捉えたものだ。ムンバイでのオープニング式典には、バルティ、ラヴィ、マドゥ、キルティといった実際に写真撮影を行なった子供達も参加した。
 ワークショップ開催にあたり、キャノンは3台のデジタル・カメラを提供した。同社の社会的貢献(CSR)事業の一環である。「私達は、チャリティとしてお金を寄附する代わりにカメラを提供することにしました」―――キャノン・インディアのバラドワージ上級副社長はこう語った。
ひょんなことから、このデリーのスラムの子供達が撮ったスラムの写真を収録した写真集というのを見せてもらう機会があった。今まで見たこともなかった「デジカメ」というものを手に真剣に見つめる子供達の姿が印象的だ。

IMGP3232.JPG
IMGP3241.JPG

以前「子供の目で見たムンバイ連続テロ事件」という記事でも取り上げたことがあるが、「青年の船」インド同窓会(SWYAA-India)という団体はその中核を成しているDishaaというNGOが活動地域としているデリーのスラムの子供達に絵を描かせたり、写真を撮らせてみたりして、テロ事件や自分の生活するスラムの生活状況を考えてみさせるという取組みを非常に得意としている。たとえ日常生活で苦労を強いられていて教育機会にも恵まれていない子供達であっても、絵画や写真で見せる芸術のセンスは、駄菓子をバリボリ食って肥満兆候すらあるデリーの恵まれた高所得層の子供達と比べても決して引けをとることはない。そういった才能を上手く引き出そうとする取組みに優れている。

もう1つSWYAAを見ていて感心するのは、その活動のプレゼンの仕方である。ムンバイ連続テロ事件を描いた子供達は、プラティーバ・パティル大統領を表敬して絵を見せているし、今回の写真も、デリー州のシーラ・ディクシット首相のところに持って行っている。大使館の堂道大使のところにも持って行ったらしい。そうやって活動の「見える化」を図ることで、支援者の輪をどんどん拡大していっているのである。(余談ながら少し前に紹介したザフラバードのCS氏の活動もそういったところがある。僕が訪ねた2日前にデリー州の首席事務次官(Chief Secretary)が訪ねて来られていたそうだ。)

それに加えてやっぱりご紹介したいのはキャノンのCSR活動である。デジカメの提供という同社が元々得意とするところでこんなことができるのだというのを見てかなり感心させられた。企業の社会貢献には様々な形があると思うが、本来事業で得意とする領域でうまく貢献できるものがあれば、本業の方への貢献も大きいのではないかという気がする。

最後にスラムの子供達。この写真集のページをめくっていて、被写体になっている子供達の表情がすごくいいなと印象に残った。子供達が自分の暮らすスラムをどう捉えるのかというのもさることながら、被写体の表情を上手く引き出した写真になっている。こんな写真、僕がいくら頑張ったって撮れない。信頼の置ける人にだけ見せることができる表情だと思う。

IMGP3238.JPG
IMGP3237.JPG
IMGP3240.JPG
IMGP3239.JPG

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 1