SSブログ

「ジャパンODAモデル」 [仕事の小ネタ]

今日は夏休みの間に気になった新聞記事について書きたいと思う。8月12日(金)付日本経済新聞の「経済教室」で取り上げられていた「日本型ODAの拡充急げ」という記事である。経済産業省の産業構造審議会経済協力小委員会がまとめた「我が国経済協力の成功体験を踏まえた『ジャパンODAモデル』の推進」の報告書に基づいて記事は書かれている。因みに、この報告書のベースとなった「中間とりまとめ」はウェブ上で閲覧可能だ。

記事のポイントは次の通りだ。日本の経済協力は受入国の経済発展基盤の整備――道路橋梁のようなハード、法制度などのソフト、双方のインフラ整備や産業部門の人材育成――に役立った。これが民間セクターの活力を適切に引き出し、さらなる発展の基盤整備の需要を生んで経済協力がそれに応えていくという形の、官民間のシナジーが生まれ、これが自律的な経済成長のダイナミズムを生んだという。

こうしたいわゆる「ジャパンODAモデル」をアジアだけではなくアフリカやその他の地域にも各地域の実情を勘案しつつ適用し、民間活力を生かすための貿易・投資環境整備に取り組むことが必要だと記事は主張している。

そのためには、ODAを開発ファイナンス(政府及び民間セクターを含めた先進国から途上国への開発目的の資金の流れ)全体の枠組みの中で捉える視点を持つべきであるという。開発ファイナンスには、ODA以外にも、ODAカウントされない政府資金、民間セクターによる投資、商業金融など多くの重要な支援形態が存在する。さらに、産業分野の人材育成などノウハウの移転は、政府間のODAによる技術協力ではなかなか立ち入ることが難しい分野であり、民間による支援の役割が大きい。

そこでODAに求められる改革の中には、民間資金との連携による新たなファイナンスの手法としての「官民パートナーシップ(Public-Private Partnerships、PPP)」の推進も含まれる。途上国には膨大なインフラ需要が今後も見込まれるが、これを全て途上国の財政資金で賄うことは不可能である。そこで、対外債務問題を回避でき、途上国の金融システムの脆弱性にも配慮したファイナンス手法の開発が必要であるという。その解決法の1つとして、報告書では、直接金融市場を整備して、証券化を通じて民間資金を活用することを提言する。具体的には、インフラ建設の対象プロジェクトの収益を償還資金として債券発行する「レベニューボンド」という手法である。即ち、途上国のインフラ建設資金に充当する債券を国内で円建発行して販売すれば、その債券発行による資金調達額はODAには計上されないが、民間資金を途上国の発展のために活用することになるというわけだ。

但し、記事は紙面の関係で十分指摘していないが、インフラプロジェクトの収益とは完成後に受益者が負担する現地通貨建の資金であるので、円建の資金調達と現地通貨建の返済原資の間に為替変動リスクが生じる。従って、為替リスクをヘッジするための金融手法を組み合わせることも必要である。

こうした新たな支援戦略は、政府や援助実施機関だけでは実行できないし、民間セクターが全てのリスクを取って独力でできるというものでもない。「中間とりまとめ」では官民の新たな連携のための「プラットフォーム」の構築が必要であると指摘されているが、一体誰がそうしたイニシアチブを取れるのか疑問である。援助実施機関だけでもJICAとJBICは分かれているし、JBICに至っては1999年に日本輸出入銀行と海外経済協力基金(OECF)が合併して以降も、営利目的の業務展開をする前者と営利を目的としない後者との間で、必ずしも職員の融合が完全には進んでいないという指摘もある。単純な考え方をする僕などは、いっそのことJBICとJICAも合併させることが、途上国の開発ファイナンスを総体で捉える枠組みの構築には役立つのではないかと思う。他方、JICAの職員の方は民間ファイナンスについては殆ど知識がない。

さて、小泉首相が衆議院解散しなかったとしたら、公的金融機関の統廃合問題は9月に経済財政諮問会議が提言を出し、方向性が見えてくるというところだった。9月11日の総選挙で小泉再選とでもなった場合には、意外とJICAとJBICの合併話というのもすぐに出てくるかもしれない。

本日の歩数:13,323歩
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0