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チェンナイの老人ホーム事情 [インド]

パダッパイの老人ホーム設置計画、ヘルプラインも設置へ
Plans to set up bigger old age home in Padappai, extend helpline facilities
チェンナイ(タミル・ナドゥ州)発、Times of India紙、3月22日
K. Praveen Kumar記者
 高齢者が家族から捨てられて自活を強いられるケースが増えてきていることや独り暮らしの高齢者の人口が増加していることから、タミル・ナドゥ州政府はもっと多くの老人ホームの設置計画を策定する必要性に迫られている。
 高齢者が家族から捨てられて老人ホームに追いやられる件数が増加していることは、チェンナイ市内のこうしたホームに対して厳しいプレッシャーを与えている。殆どのホームが既に満員であるからである。州社会福祉局はより収容能力の大きい老人ホームをカンチープラム県パダッパイの10エーカーの土地に建設する計画を持っている。社会福祉局のマニヴァサン(K. Manivasan)局長が本紙記者に語ったもの。同局はまた、女性と高齢者を対象とした緊急電話ヘルプラインを拡大して州内の主要都市を繋いだ広範なネットワークをカバーするものとすることも検討中である。こうした問題は特に都市部で深刻になりつつあるからだ。
「私達は州内の県行政当局に対し、高齢者の収容能力を増強し、自前のホーム用建造物を持つよう指示したところです。高齢者人口の増加は私達が取り組むべき課題であると認識しています」――マニヴァサン局長はこう語った。
 チェンナイ市は、インドの大都市としては2番目に高齢者人口比率が高い。にも関わらず、市内には公営の老人ホームが2カ所しかない。一方、中央政府の資金支援を受けたNGOが運営する老人ホームが8件ある。「現在これらのホームが持つ収容能力は市内で捨てられた高齢者を収容するには十分ではありません。その上、傷ついたお年寄りのケアを行なうことができる人材は不足しています」――社会福祉局の関係者はこう語った。この関係者によれば、殆どのホームが狭いビルに入居し、今後開発の余地が殆どない場所に立地しているという。「高齢者のリハビリも可能なより優れた施設を整備する必要があります。」
 マニヴァサン局長も、社会福祉局の業務目的は捨てられた高齢者と家族を再び結びつけることであると主張する。「家族もカウンセリングを受け、家族の価値の重要性について理解を深めてもらうことが必要です。私達はこうしたカウンセリングに焦点を当てています。老人ホームは最後の選択肢であると私達は考えています。私達は家族にその一人一人に対する責任感を浸透させることで人とその家族との繋がりを再び取り戻せるよう取り組んでいます。
 警察と連携して高齢者向けヘルプラインを運営しているヘルプエイジ・インディア(HelpAge India)の統計データによれば、老人ホームは捨てられた高齢者が頼り得る最後の拠り所であるという。「ごく僅かの人が家族との絆を取り戻しています。殆どの人が家には戻りたくないと言います。ご家族が親を探して私達を訪れるケースは極めて稀です」――ヘルプエイジ・インディアのサントシュ・クマール(Santhosh Kumar)氏はこう述べた。
以前ヘルプエイジ・インディア(HelpAge India)のスタッフの方と面談する機会があり、「老人ホーム」について見解を尋ねたことがある。その時の答えは「農村部にも老人ホームを作るという政策は愚策もいいところだ」とかなり否定的なことを仰っていたのが印象的だった。農村部で介護施設のようなもの作っても利用できるのはアクセスに恵まれた一部の人たちだけだというのは以前からこのブログで主張してきたことなので、その意見が裏付けられたのは嬉しかったのだが、その一方で、本日紹介した記事の話はむしろ大都市の老人ホームで、問題は農村部に比べてもう少し複雑であるように思う。

チェンナイ市内の老人ホームが過少供給だという指摘については、人口420万人(2001年センサス)の大都市に公民合わせても老人ホームが10件だけというのは確かに少ないとも言える。

記事の翻訳に敢えて「捨てられた(abandoned)」というのを使ってみたが、この捨てた側の家族がどこに住んでいたのかはこの記事からはわからないし、どういう背景から捨てたのかもよくわからないし、それが男性なのか女性なのかもわからない。タミル・ナドゥ州は原理主義とまでは言わないが比較的ヒンドゥーの戒律が厳しい地域で、ひょっとしたら旦那に先立たれた女性の家族の中での立場が非常に危ういところなのかもしれないが、男性でも捨てられているケースがあるとしたら、単に宗教的な背景というだけではなく、経済が発展して初期の功労者であるお年寄りが逆に邪魔者・厄介者として扱われる社会に移行してきているのではないかという寂しく厳しい現実があるのかもしれない。

いずれにせよ記事の内容だけではわからないところが多い。仕事でチェンナイに行けるケースは年1回あるかないかであるが、いったい老人ホームの入居者とはどんな構成なのか、男女比はどうなのか、市内からの入居なのか郊外周辺地域からの転入なのか、どういう経緯で入居したのか、公営とNGOや企業による運営とで施設や実施体制に大きな違いはあるのか、スタッフのキャリアパスはどのようなものか、等等の質問を準備して行って聞き取り調査もやってみたいものだと思う。ヘルプエイジ・インディアの知人に頼めば紹介してくれるだろう。カンチープラムへは行く機会は仕事の関係上あるかもしれない

さて、本日はお知らせが1つ―――。
僕がブログで引用している記事のオリジナルが読みたいという方は、その記事に実名でコメント下さい。最近、第三者を介して原文が読みたいと僕にアプローチして来られた方がいらっしゃいますが、インドの高齢者問題にご関心がある方とは実名でギブ・アンド・テイクの交流させていただきたいと思いますので、くれぐれもご理解のほどよろしくお願いします。

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Hirosuke

ご訪問ありがとうございました。
インド在住の方だったのですね。

実は僕の海外経験はたった4日間のインド出張のみ。
その時の顛末を書いた記事です。
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-07-23
(笑ってやってください。)

中国が落ち込んできた今、インドは経済的には大注目ですね。
とは言え、インドには特有の問題も多いですね。

じっくり読ませて頂きます。
by Hirosuke (2009-03-24 20:58) 

J_girl

初めまして。チェンナイからのブログを探して、ここに来ました。
私は、インド人と結婚し、マドゥライに住んでいるのですが、
この記事を読み、驚いています。
インドでは、家族の結束が強いイメージがあり、実際、
チェンナイでも、デリーでも、
旦那の親戚で一人で暮らしている高齢者が居ない、
長男と結婚した嫁は長男の家族と暮らしているパターンが多いです。
まぁ、私は旦那の実家から、旦那と一緒に近所へ引っ越しちゃったタイプですが。

by J_girl (2010-04-01 23:27) 

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