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『世界を見る目が変わる50の事実』 [読書日記]

世界を見る目が変わる50の事実

世界を見る目が変わる50の事実

  • 作者: ジェシカ・ウィリアムズ
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2005/04/22
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
中国では4400万人の女性が行方不明。世界の死刑執行の81%はわずか3カ国に集中している。中国、イラン、米国である。ロシアで家庭内暴力で殺される女性は年間1万2000人を超える。世界にはいまも2700万人の奴隷がいる。米国は国連に対し、10億ドル以上の未払い金がある―具体的な数字から立ち現れる驚くべき事実の数数。その背景には、実に意外な物語がある。身近な話題から遠い国の事情まで、50の事実を読み終える頃には、きっと少し、あなたの世界の見方は変わっているはず。新聞やテレビだけではわからない、世界の真の姿が見えてくる書。
人にものを訴える時、最も説得力のある方法は、話の中に具体的な数字をちりばめることだと思う。あなたが今飲んでいるスターバックスのラテを何回我慢したら、途上国の一番貧しい地域の小学校にトイレを1棟建てられますと言われたら、そうしてみようかなと一瞬考えてしまう。そうしたテクニックが猛烈に上手かったのは、世界銀行のウォルフェンソン元総裁である。おそらく優秀な側近がいていろいろとデータをインプットしてくれたからだと思うが、世界の先進国が自国農業にかけている補助金を何パーセント削減すれば、途上国から先進国への農産品輸出が何パーセント増え(或いは、先進国から途上国に入ってくる不当廉価な農産品の輸入が何パーセント減り)、ひいては途上国のGDPをどれだけ引き上げるかというような数字をスラスラと言うことができる人だった。

僕も途上国の貧困問題を訴える時には、漠然と貧しいと説明するよりも、どれくらい貧しいのかを具体的な数字をちりばめながら言いたいものだと常々思っている。けれども、そうしたネタ探しは結構大変だ。そこで、この類の本が出ると、藁をもつかむ気持ちですぐに飛びついて読みたくなる。
本書は、英国BBC放送のレポーターが世の中の不条理を50題集めてきたもので、一般大衆はこれらを不条理として承知もしていないが、ひとたび問題意識を一般大衆が持って行動を起こすならば、確実に世の中が変わるであろうと思われるネタが揃っている。そこには、先進国と途上国の間に横たわる大きな不均衡の問題もあれば、先進国の中にも横たわる高所得者層と低所得者層の間の不均衡の問題もある。僕は、先進国に住む僕達が途上国の貧困問題とどのように繋がっているのかの具体例を知りたくて読んだが、ハリケーンの大災害の直後で経済大国米国が抱える貧困問題に焦点が当てられた直後でもあり、「今日の米国に生まれる黒人新生児の3人に1人は刑務所に送られる」という事実は、米国内に横たわる白人・ヒスパニック・黒人間の生活格差の問題を浮き彫りにしていると思う。

途上国の実態を明らかにした事実として、本書では以下のような項目を挙げている。
◆日本女性の平均寿命は84歳、ボツワナ人の平均寿命は39歳(エイズの問題)
◆肥満の人の3人に1人は途上国に住んでいる。
 (先進国の助成金漬けの安い牛肉は、途上国の食生活に影響を与えている。)
◆ブラジルには、軍人よりも化粧品の訪問販売員の方が沢山いる。(エイボン・レディ)
◆EUの牛は1頭につき1日2.5㌦の助成金を受け取る。年額にすると世界旅行が可能。
 (先進国の農業補助金の問題)
◆地雷によって、毎時間1人は死傷している。(平和構築の問題)
◆タイガー・ウッズが帽子をかぶって得るスポンサー料は、1日当たり55,000㌦、その帽子を作る工場労働者の年収の38年分(グローバル企業の途上国工場の労働環境問題)
◆インドでは、4,400万人の児童が働かされている。(児童労働の問題)
◆自動車は毎分、2人を殺している。(途上国の交通事故の問題)
◆ケニアでは家計の1/3が賄賂に使われる。(政府の腐敗の問題)
◆拷問は150ヶ国以上で行なわれている。(人権の問題)
◆2040年に原油は枯渇するかもしれない。(石油資源の有限性の問題)
◆世界の人口の70%以上は電話を使ったことがない。(デジタルディバイド問題)
◆近年の武力紛争の1/4は天然資源絡み。
 (僕達の携帯電話の材料となるタンタルがコンゴの内戦をもたらしている事実)
◆アフリカのHIV陽性患者は3,000万人(エイズの問題)
◆毎年、10の言語が消滅している。(言語のグローバル化の問題)
◆毎年、200万人の女性が性器切除される。(女性の人権問題)
◆世界中の紛争地帯で戦う児童兵は30万人。(紛争と児童兵問題)
毎年、西欧向けに人身売買される女性は12万人。(人身売買問題)
◆英国で売られるニュージーランド産キウイは、その重量の5倍の温室効果ガスを排出している。
 (地球温暖化の問題)
これらのネタについて今後このブログで書く機会があれば、是非本書からの引用で具体的な数値をもっとちりばめて書いてみたいと思っている。既に本日は十分長くなってしまっているので、続きはまたの機会とさせていただきたいと思う。

さすがにジャーナリストが書いた本なので、具体例は多いが、それではその問題について誰がどのような認識に立ち、どのような取組みをしているのか、誰がそれに資金を付けているのか、日本や他の先進国はどのように考え、それらの問題に関わっているのか、などといったところまでは突っ込んだ分析がされていないのが難点といえば難点だ。これらの問題に関する入門編の読み物としては十分面白いが、問題は、この本を読んだ読者が起こす「次のステップ」であるように思った。
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