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『日本の移民政策を考える』 [読書日記]

日本の移民政策を考える―人口減少社会の課題

日本の移民政策を考える―人口減少社会の課題

  • 作者: 依光 正哲
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
移民受け入れ問題をどう考えるのかという問題を提起し、日本の国内で多くの外国人労働者が働いている現状・実態を明らかにするとともに、移民受け入れ政策をどうするのかという点などについて論考する。
僕は元々は外国人労働者の一時受入れには懐疑的な立場を取っている。何度かこれまでにも書いてきたが、送出国の最も生産性の高い労働者を奪っておいて、送出国の空洞化を放ったらかしにしていてはいけないと思うからだ。但し、いったん受け入れるとなったら、その人権は保障されなければならないとも思っている。受入国において人が人としての扱いを受けられなければ、フランスで起きたような移民による暴動が日本にだって起きかねない。

本書の基本的なスタンスは、僕のような一時受入れ懐疑的という見方は鮮明ではないものの、受け入れた以上は人権の保障は必要であるという立場が非常に鮮明であるように思う。

本書の中でも憤りを感じる事例は枚挙に暇がないが、あえて1つ2つ挙げてみよう。
 中国籍のCさんは福祉関係の大学を今年の4月に卒業した。卒業時には保育士の資格も取得した。そして卒業後は私立の保育園への就職も決まっていた。そこでCさんは入国管理局に「留学」から就労できる在留資格への変更の申請を行った。しかし保育士にあてはまる在留資格がないことから、結局Cさんは在留資格の変更が認められなかった。日本語を2年間、そして大学で福祉関係の勉強を4年間も続けたCさんに摘要される在留資格がなかったのである。Cさんは帰国する道を選ぶしかなかった。Cさんの6年間の日本での努力は無駄になってしまった。(p.173)
1983年に中曽根首相がぶち上げた「留学生10万人構想」は、2003年に達成された。今や我が国は留学生受入大国で、OECD加盟国の中でもトップクラスの受入規模を誇る。それなのに、多様化する職種に合わせた在留資格の改定がなされてこなかった制度上の不備を棚に上げて、在留外国人に負担を強いる。それが日本の入管行政なのだ留学生受入だけはしっかりやるが、その後の日本での就職の途については殆ど配慮がない。日本の行政にありがちな場当たり的な政策の歪である。
 (バングラデシュ国籍の)Mさんは1989年に来日した。入国時に15日間の在留期間を認められたが超過して滞在をしてしまった。Mさんはまじめに働いていたが、2000年に出入国管理法違反容疑で警察に逮捕されてしまった。裁判が行われ懲役2年8ヶ月、執行猶予4年の判決が確定し、その後強制送還された。入管法では懲役1年以上の刑罰を受けると上陸拒否事由に該当し永久に日本に上陸できないことになっている。しかし、Mさんには結婚を約束した恋人が日本にいた。日本ですぐには同居できないことを知った女性はバングラデシュに行き、Mさんと結婚をした。日本での生活を熱望していたMさんらは入国管理局に対して何度か上陸特別許可の申請をしたが認められなかった。2004年になってから妻がかなり進行した胃がんであることが分かった。Mさんは、自分も妻に同行して日本で治療を受けさせたいと考え、日本への入国を認めてほしい旨の申請を行ったが、前回同様に認められなかった。仕方なくMさんは胃がんが進行し、日に日に体力の衰えていく妻だけを日本に帰したのである。帰国後、妻は危篤状態になってしまった。Mさんは入国管理局に何度も連絡をして、妻の傍らにいてあげたいので日本への上陸を特別に認めてほしいと懇願をした。しかし入国管理局はついにMさんに上陸特別許可を認めなかった。Mさんは諦めずに日本の大使館に通い続け査証の申請を行った。大使館はMさんの境遇に同情して短期滞在の査証を発給してくれた。成田空港に到着したMさんに対して、入国管理局はすぐに入国を認めなかった。Mさんが入管法違反で懲役1年以上の刑罰の申し渡しをうけていることから上陸を拒否したのである。Mさんは異議の申し立てを行い、ようやく上陸が認められた。Mさんは妻の入院している病院に駆けつけたが、もはや意識はなかった。それから1週間後に妻は亡くなった。(pp.173-174)
入国管理局は血も涙もないのか。確かに、不法滞在していたMさんに否がなかったとはいえないが、そもそも不法滞在になったことにしても、日本の出入国管理法が厳しすぎるからではないのか。「あいつらはそもそも法を犯した奴らなのだ。それが『被害者』だなどというのは考え方が間違っている」と高級役人がおっしゃったのを最近聞いたことがある。日本の出入国管理法は、外国人性悪説に拠っているのではないかと思うくらいに記述が厳しく、まるで不法入国や不法滞在する外国人は人ではなくモノとしてしか扱っていないようにも思える

本書は、そんな問題提起をしている。人の動きが国境を越えてこれだけ活発に行なわれると、もはやお隣は外国人というのが普通の社会になってくるということだ。外国人の文化的背景を尊重し、一人の人間として応対し、どのようにしたら一緒に気持ちよく生きていくことができるのかを考えていくことが必要な時代なのだと思う。僕は本書が終章にて主張しているような新省庁の設置までは望まないが、多文化共生担当の大臣ポストくらいは置いてもいいのではないかと思っている。

最後に、本書では十分言及されていないが、日本の出入国管理法では難民に対する仕打ちも相当に厳しい。はっきり言って、日本は難民受入を殆どやっていないに近い。
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