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裁判所の風景 [インド・トリビア]

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職場の関係者が裁判所に出廷を命じられた。会社の顧問弁護士にお願いして同行してもらうことにしたが、日本人が1人では心細かろうと思い、僕も同行することになった。

なにしろ僕は前科一犯。米国でスピード違反・運転免許証不携帯・車両登録証不携帯の三重罪でアーリントン郡地方裁判所に単身出頭し、法廷に立っている。それだけでもかなりの経験値だと思う。(因みにうちの妻も追突事故で同じ法廷に立っている。)

場所はドゥワリカ地方裁判所(Dwarka District Court)。デリーには地方裁判所が2ヵ所あるが、半年前に開設されたばかりの新しい地裁である。空港から比較的近く、デリー地下鉄の駅のすぐそばである。地裁は今後さらにロヒニとサケットにも設置される予定だという。人口が増えてくれば民事も刑事も裁判件数は増えるだろうから、そのペースに合わせての増設計画なのだろう。

裁判所に向かうために僕はオフィスの公用車で先ず顧問弁護士を自宅で拾ったが、いつもはさえないカジュアルウェア姿しか見たことがなかったその弁護士が、グレイのスラックスに黒のスーツ、中に来たシャツも白の特徴的なデザインのものだった。法廷に立つ時はユニフォームがあるのだという。この辺は英国統治下の名残なのかもしれない。さすがにかつらはかぶらなかったが…。

裁判所は9時30分から17時まで。出廷命令を受けた場合、或いは裁判所に訴えて原告側に立った場合、朝9時30分には裁判所に行って自分の案件の審理がどの法廷で行われるのかを先ず確認する。自分の順番がいつ回ってくるのかも当日朝9時30分にならないと法廷の外の掲示板に貼りだされない。

米国で交通裁判を受けた際は、原告側のアーリントン郡警察の警察官の苗字が「T」で始まり、僕の苗字が「Y」で始まるため、朝10時30分開廷にも関わらず自分の案件の審理は15時頃にならないと順番が回ってこないという経験をした。1日がかりになることも覚悟してドゥワリカ地裁に出向いたが、幸いなことに同日審理予定の案件12件のうちの職場関係者が訴えられたのはトップバッターだったので、午前中に終わることができた。

9時30分に審理の順番が掲示され、10時から開廷となる。ところが実際に裁判官が着席したのは15分以上後からだった。時間にルーズだなという印象だ。

ようやく開廷して、審理が始まったが、ここでまた驚いたのが使用言語。高裁以上では使用言語が英語だそうだが、地裁レベルでは文書は英語であっても法廷での使用言語はヒンディー語でもいいそうだ。だから、所々英語になり、所々ヒンディー語になる。傍聴していて何を言っているのかよくわからない。米国では英語が必ずしも話せないという移民や外国人への配慮からか法廷通訳がつけられる。インドでは当然そんなサービスはない。だから、万が一日本人の僕らが裁判に巻き込まれた場合、素直に弁護人(この場では「Advocate」と言うらしい)を付けた方が賢明だ。今回は当事者も僕も傍聴席にいたが、相手側は弁護人だけで当事者は傍聴席にいなかった。それもありなのだということだ。

弁護士を付けた方がよいもう1つの理由は、原告側も被告側も、米国のTVドラマや映画で見られるような原告側弁護人による証人喚問とか被告側弁護人による喚問とか、順番をちゃんと決めて一定のルールの下で秩序だって審理が行われるのと違い、インドの場合は、順番もクソもなくて両者の弁護人になんと裁判官まで加わっての三者間の言葉のバトルであるからだ。市中で日常茶飯事で行なわれているインド人同士の言い合いと一緒で、相手の言い分は絶対聞かずに自分の言い分だけをわめき立てる。それに裁判官が口を頻繁に挟むのだ。

原告は同席せず、弁護人単独での法廷。想定外の状況が起きて「私のクライアントに意向を確認しないと答えられない…」などと中途半端な応対をすると、裁判官はエライ剣幕で「お前はなんのためにここに来ているのか!」と弁護人を一喝した。

裁判の結果についてはここでは述べない。当事者には大変失礼な言い方だが、面白いものを見させてもらったというのが率直な感想。ただ、審理の順番を待っている間傍聴席の後ろの方で仕事の「内職」でもやっていようと考えた僕の目論見は外れ、部屋はあまり広くなく、傍聴席も椅子が3列並べてあるだけだった。こんなところで順番待ちはできないし、内職をやっていたらバレバレである。半日でも裁判所にいたお陰で、後の仕事が押せ押せになってしまったことは言うまでもない。
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