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ゴカレ博士の贈り物1 [読書日記]

Gokhale1.JPG
Constance Barlow & David Este Eds.
Experiments and Experiences in Social Work Practice: Dr. S. D. Gokhale
October 2004, Ameya Inspiring Books

先週トリバンドラムでお目にかかったS.D.ゴカレ博士から以前いただいていた本を読もうかと思い立った。インドで高齢者と向き合っていくとしたら、どこに行ってもゴカレ博士とはお目にかかる。もう少しゴカレ博士の人となりを知っておこうと思った。

―――とんでもない偉人に出会った気がする。
 Dr.Sharatchandra Damodar Gokhale is an internationally renowned Indian social worker, teacher, author, researcher and administrator with a long standing interest in improving conditions for children, the disabled, the elderly, and those with leprosy.
 For over 50 years, Dr. Gokhale has been practising social work in India. Currently he is the Founder President of the Community Aid and Sponsorship Programme in Pune, India, and Chairman of the International Leprosy Union. Internationally, he has worked as UN and UNICEF advisor to the governments in Iran and Sri Lanka and Western Samoa. He has served as President of the International Federation on Ageing and as Chairperson of the World Social Commission on Rehabilitation. He has also addressed the UN General Assembly on the subject of ageing and written twenty books in Marathi and ten in English, many of which have won State and National Awards.(本書表紙見返しカバーの記載から引用)
プネでオフィスを訪問した時の経緯からも、ゴカレ博士がインドの高齢者の孤独、ハンセン病患者と家族のスティグマ(社会的な汚名・烙印といった意味)問題の権威であることは想像できたが、ソーシャルワークにこれほどの知見があり、超有名人との交流がある方とは実は知らずに気軽に声をかけさせていただいていた。

本書を読んでいくと、ソーシャルワーカーとしての駆け出しの頃にガンジーやネルーと接点があったことがエピソードとして紹介されている。その他にはヘレン・ケラーやマザー・テレサから学んだこと、日本財団の笹川陽平代表との交友関係等も紹介されている。それ以上に感じたのは、ゴカレ博士の場合、ソーシャルワークを通じて現場の人々から学んだことが非常に多いということである。

また、ハンセン病やエイズでよく耳にする「スティグマ」という言葉について、お目にかかった時にゴカレ博士も再三強調されていたが、それが本書に収録された幾つかのエピソードからかなり学ぶことができたと思う。運動機能障害、認知症、性同一障害者等が直面するスティグマについても扱われている。障害者によかれと開発された人工装具や義肢が現場で使われていない状況から、これらの開発における地域特有の事情やユーザー特有の事情を考慮することに必要性も教訓として語られている。

編者の1人デビッド・エステ教授(カナダ・カルガリー大学ソーシャルワーク学部)が結論として解説を付けている。本書から得られる示唆としてエステ教授は次の点を挙げているので、取りあえずの参考として述べさせていただく。
1.ソーシャルワーカーは温かい心(compassionate)を持っていなければならない。
2.ソーシャルワーカーは問題解決に向けた知識やスキルを持ち、クライアントがその幸福を実現するのを支援せねばならない。
3.ソーシャルワーカーはクライアントとの間で、誠実かつ着実かつ持続的な関係を築き上げていかなければならない。対面インタビューは現在でもソーシャルワーカーに求められる中心的技術である。
4.ソーシャルワーカーはそのクライアントについて、その地域特有の状況の中で暮らすユニークな人間性を持つ1人の人間として相手を理解することが必要である。
5.クライアントのケイパビリティ(潜在能力)を信じることがクライアントの自信と自尊心を高めることに繋がる。
6.ソーシャルワーカーは、クライアントの住むコミュニティに既に存在する資源を有効に活用せねばならない。
7.クライアントは自分にとって最も有用な専門家である(答えはクライアント自身の中にあるという意味)。
8.スティグマに悩まされるクライアントを考えた場合、社会変革の実践者は、スティグマが一人一人のクライアントだけではなく、その家族や地域の多くの人々にもインパクトを与えるということを社会に向けて訴えていく必要がある。
9.ソーシャルワーカーは、自分の経験を文章に残していかなければならない。
去年から何度か取り上げてきたファシリテーションと通じるところがかなりあるように思える。市販されている書籍ではないので、ブログで紹介しても広報効果はゼロに近いが、できることなら全文翻訳して日本の読者の方々にも知ってもらいたいなと思う。(著者の許諾を得てこのブログでシリーズ化するという手もあるが、ちょっとそこまでは思い切れてない。)

参考用語
artificial limbs 義肢
artificial prosthetics 人工装具
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