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子供の森 [インド]

日本のNGOで「オイスカ」といえば、「子供の森プロジェクト」を多くの国で展開しているので有名である。インドにはオイスカの支部が幾つかあるが、そのうち北インド支部では、ハリヤナ州グルガオンやファリダバードといったデリー近郊の新興都市で学校を拠点とした植林活動を行なってきた。

そんなオイスカ北インド支部では、「子供の森」をウッタル・プラデシュ州にも広めようと計画中で、その第1弾として、グレーター・ノイダにあるライアン・インターナショナル・スクールにおいて学校植林と環境啓蒙イベントが開催された。オイスカ本部から中野良子総裁もお越しになったイベントは、2月19日(木)に開催された。僕の職場にも案内があり、誰か出ようということになった時、いちばん暇そうだった僕に白羽の矢が立ったので(ホントに暇だったわけじゃないけれど)、職場から約1時間かけてグレーター・ノイダまで出かけてきた。

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《生徒さんによる歓迎ダンス》

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《中野総裁によるスピーチ。お隣はシンハ校長先生》

ここで少しだけ「子供の森プロジェクト」について紹介しておこう。

僕なりの解釈で説明すると、このプロジェクトは学校を拠点として子供達に環境問題への意識付けを行ない、子供達を通じてその両親、家族に対して意識の普及を図っていこうとするものである。学校に通う児童を通じて家族にメッセージを伝え、影響を与えようというのは環境だけではなく保健などでもよく見られるアプローチであるが、これらはかなり考えられたアプローチだと僕は思っている。

第1に、今の5歳から15歳ぐらいの年齢層は、インドでは最も人口が多い年齢層である。人口ピラミッドを見ると、これまではきれいな富士山型だったのが、0歳から4歳までの年齢層はその上のグループよりも少なくなっている。釣鐘型に移行する兆しが見られる。このインドで最も人口が多い年齢層は、これから10年、20年経つとインド最大の利益集団となっていく。

インドの総人口は11億人だが、これが2050年には16億人にまで増加するとの予測である。ただでも今より約1.5倍も混雑した国になるのだ。特に都市部の急拡大と混雑は今以上に進む。そんな中で、これから最もインドの行く末に影響力を持つ年齢層である今の子供達に、環境保全への意識を刷り込むことは大変に意味があることだと思う。

第2に、このプロジェクトには植樹というコンポーネントが埋め込まれているが、木は育つのに時間もかかり、10年、20年が経過してみて初めてその成果が見えてくる。即ち、子供達が学校や地域で木を植えることで、子供達を地域と繋ぐ、或いはたとえ地域から離れて暮らすようになったとしても、また地域に戻って来るという動機付けになるということだ。

今の日本では、子供に「郷土」や「地域社会」、「郷土愛」や「地域愛」といった意識を植え付けることが大きな課題となっている。そもそもその両親からして引越してきてその地域に住んでいて、ややもすれば会社は別のところにあって日中はその地域にいない。親がコミュニティのことをあまり知らないのだから、ましてや子供はいわんをやである。従って、「大人になってもこの町に住み続けたいか」との質問に明確に「イエス」と答えられる子供の割合は大幅に低下してきている、それが日本の現状だ。

今のインドでも、グレーター・ノイダのような大都市近郊の衛星都市では、人の流入も激しく、何十年もすればマンションが手狭になって次の世代の子供達は家を出て行くということが多分起きるだろう。日本のニュータウンでも見られた話である。コミュニティが崩壊するどころか、そもそもがコミュニティ自体が存在していない、地域の中で人と人の繋がりが薄いのが近郊の衛星都市の状況である。だから、学校を拠点として植樹を通じて人と人、人と地域が繋がる仕掛けを作ろうという「子供の森」の着眼点は、急速に経済成長を遂げるインドでは、大都市近郊だからこそ意味があると思う。

僕もスピーチを求められたので、そんなことを述べさせていただいた。

その他、この日は学校の生徒さん達が作ってくれた廃品を活用した工作や環境啓蒙ポスターのコンテストの上位入賞者の表彰式や、来賓の方々による記念植樹等が行なわれた。

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《廃品を使った工作コンテスト》

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《中野総裁によるマンゴーの植樹》

オイスカのインドでの活動の歴史は長い。中野総裁にお話を伺うと、総裁が初めてインドを訪問されたのは1964年だそうだ。総裁としての交友関係も、インディラ・ガンジー元首相を始め、歴代の大統領や最大政治勢力ウッタル・プラデシュ州の政治指導者など非常にハイレベルな方々である。こうした首脳レベルでの交流に加えて、オイスカ北インドの方々は専従のスタッフに加えて、普段は別の仕事をしていてボランティアとしてオイスカの活動を支えておられる。「子供の森プロジェクト」での学校へのアプローチは、こうしたボランティアの方々のネットワークで支えてられているところが大きい。

国際協力の礎は人、「人は礎」をつくづく実感させられる1日であった。
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