SSブログ

コンサルタントの「質問力」 [読書日記]


コンサルタントの「質問力」 (PHPビジネス新書 52)

コンサルタントの「質問力」 (PHPビジネス新書 52)

  • 作者: 野口 吉昭
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2008/03/19
  • メディア: 新書

内容紹介
聞きたいことがなかなか聞けずに話が終わってしまったり、的外れな質問をしてその場をしらけさせてしまったりしたことが、誰にでもあるのではないだろうか? 優れた「質問」の能力は、多くのビジネスパーソンに求められているもの。その「質問力」をもっとも必要とされる職業の一つがコンサルタントだ。コンサルタントは優れた質問により、短時間でクライアントの信頼を得て、彼らの抱える問題の本質を探り出さなくてはならないからだ。本書はこの「質問力」をテーマに、優れたコンサルタントが人と話をする際の、思考の流れと質問のテクニックを説くものである。短時間で相手の気づきを生み出す「仮説力」、問題の真因を引き出すための「本質力」、そしてゴールに向かって質問を進めるための「シナリオ力」の3つの視点で、プロの質問力とはどういったものかを解き明かしていく。
一時帰国から戻って来ました。帰りの飛行機の中では専ら映画ばっかり観ていたのですが、唯一1冊だけ新書版の本書を読み切りました。

本書を読む動機は、一時帰国中に受講したファシリテーター養成講座にある。全4回の基礎コースを受講してみて感じたのは、インタビュー型ファシリテーションが基本だということであれば、要は対人問答において技を磨く取組みが今の僕には必要なのかなということだった。言ってみれば相手に気の利いた質問をぶつけて相手に気持ちよくしゃべらせるために、聞き手の質問能力が問われるということだ。
そういう目で巷に溢れる自己啓発やビジネススキルに関する出版物を眺めてみると、近年、「質問力」という言葉が標題に付いた本が結構出ているのに気付く。いずれご紹介したいと思うが僕の一時帰国中、ベストセラーになっていた本にも「質問力」と銘打たれたものがあるし、本日紹介したこの新書も、ビジネス書コーナーでは平積みになっていたのをよく見かけた。

この著者がPHPビジネス新書から出している「コンサルタントの~力」シリーズの第2弾で、以前、『コンサルタントの「現場力」』というものが出ている。この本についてもブログで紹介させていただいた。

話はファシリテーション養成講座に戻るが、事例研究も交えていい講座だったと思うのだが、体系的な整理が頭の中でできておらず、要するにどういう内容だったのかと聞かれた時にぱっと答えられないもどかしさを少し感じていた。それが、本書では「仮説力」「本質力」「シナリオ力」という言葉で簡潔に整理されている。以下は基本的な僕の理解―――。

「仮説力」
インタビューを始める際に、この相手はどのような環境に置かれているのか、生活をする上でどのような課題を抱えているのか、相手が独力で問題解決に取り組めるキャパシティがどの程度あるのか、相手1人だけではなくその属するグループの中で集団で問題解決に取り組めるキャパシティはどうか等、予め「落としどころ」を想定しておくことが必要。言い方を変えれば、相手が気付く前に何を気付かせるのかを想定しておくことだと思う。そして、「落としどころ」を考えるにはそれなりに自分で事前に情報収集をしておくことが必要。

「本質力」
気分が乗って来れば、相手はいろいろなことを語ってくれるようになるだろうが、その中から問題解決に繋がるような鍵となる発言に気付くにはそれなりのセンスが必要ということになる。それが掴めなければ、とりとめもない質疑応答が繰り返されるだけで方向感に欠けるインタビューに終わってしまう。相手に気付きを促すには相手の言葉の端々を敏感に捉えてその方向に向けて収束させていく質問が求められるだろう。また、仮説が間違っているかもと察知してすぐに質問を切り替えていける融通性も必要となる。

「シナリオ力」
本書はコンサルタントの仕事に関して書かれているので相手に気付きを促すにせよ解答の提示はコンサルタントが行なうことが想定されているように思う。そこはインタビュー型ファシリテーションの場合は相手の口から言わせることが重要とされている。いずれにしても、結論に持っていくためには幾つかのシナリオを想定しておき、複数のシナリオ間での比較分析を行なった上でどのシナリオで行くのかを決めていく。ファシリテーションの場合はその場で仮説を修正して相手の気付きを促す方向に持って行かなければならないので、幾つかのシナリオを想定しておいて相手の発言に応じて柔軟にシナリオ選択を切り替え、質問内容もそれに合わせていくことが必要だと思う。

また、本書では重要な指摘もされている。それは、インタビューの前提として、相手の心を開かせること――即ち、信頼関係の構築が重要であるという点である。最初から敵意むき出しの相手にインタビューをやってもなかなか実のあるインタビューにはならない。相手のガードを下げさせる、心を開かせるには、いきなり単刀直入に本題に入っていく前に、相手の人となりを理解するような質問からスタートさせることが必要だと本書でも指摘されている。「傾聴」と「共感」という姿勢での「呼び水」的質問の重要性が述べられているのである。以前僕は床屋のご主人に使用されているシャンプーの質問をしてみたり、タクシーの運転手さんの言葉に反応して出身地を質問してみたりしてこの「呼び水」を試みたのだが、その後の話が非常に弾み、知らなかったいろいろな事実まで聞き出すことができた。問題の本質よりも相手の人となりを見ている、理解しようとしているという姿勢は、自分を受け容れてもらうための第一歩というのは自分の経験からも間違いないと思う。
nice!(2)  コメント(1)  トラックバック(2) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 1

地蔵

拙文へのnice!・コメント・TBありがとうございます。
Sanchaiさんのエネルギッシュな活動にはいつも注目しております。
読書レビューの指摘も鋭く、いつも参考させていただいています。
by 地蔵 (2008-07-19 23:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 2