SSブログ

『人口学への招待』 [読書日記]


人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書 1910)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書 1910)

  • 作者: 河野 稠果
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 新書

実は、今度博士論文に挑戦することになった。それで、インドの人口動態について少し調べる必要が出てきたので、その前に人口学について少しまとめて勉強しておこうと考えた。こうした本が昨年出版されているのは承知していたので、年末年始に一時帰国した際に買ってきた。出願していた大学院から入学許可をいただいたので、先月末までに手続を済ませた。その大学院の学生になるのは4月からだが、その前にもやっておくべきことがあるだろう。

そういう背景があって、本書のような人口研究の入門書は、一度読んで書棚にしまっておくというよりも、時々読み返してみて記載されていることを確認していくプロセスが今後も必要になるだろうと思う。だから、テキストだと考えれば本書について要約をここで紹介するのは少し難しい。僕は人口学や人口研究を学問の領域として明確に意識して文献を読んだことがあまりなかったので、人口推計がどのように算出されているのかとか、合計特殊出生率はどうやって算出するのかとか、算出された後の数値は頻繁に利用していてもその算出過程について考えたことがあまりない。それらの概略を学べたことが1つの収穫といえば収穫である。引用されている論文の件数も多く、さらに突き詰めて調べてみたいという人は原典をあたることもできると思う。

また、昨今の日本で度々耳にする「人口減少待望論」に釘をさしておられるという点についても好感が持てる。河野教授のような日本の人口研究の第一人者の言葉であり、重く受け止められるべきだと思う。通勤電車の混雑が解消されるから人口減少も悪くないと言う人がたまにいるが、人口が減ってこれば運行本数が減らされるだろうし、そうしたスパイラルが繰り返されるうちに、鉄道会社は採算が悪化して経営自体が破綻する可能性だってあるではないかと反論してきた。その論点が本書でも述べられている。

僕が住むインドとの絡みで2点ほど最後に述べておく。

第一に、筆者が1961年から1年半在籍したと書かれているムンバイの「国連人口研修・研究センター」であるが、そんなのがあるのかと気になって少し調べてみたところ、今は国際人口研究所(International Institute of Population Science, IIPS)と呼ばれているらしいということがわかった。IIPSという名の研究機関がムンバイにあるということ、さらに最近では各州毎の子供達を取り巻く環境についての調査をやっていて政府の全国健康統計調査の実施にも関与しているというのは知っていたが、IIPSが国連と繋がっているということまでは知らなかった。かなり充実した図書館を持っているようなので、ムンバイに行く機会があったら訪れてみたいと思う。また、1年程度の通信制の人口学ディプロマ・コースの募集も行なわれている。英語で本気で人口学を学ぼうと言う人は是非調べて見られるとよいと思う。

第二に、本書で出てきたインドの人口統計についてである。1963年にアジアで初めての人口会議がインドで開催されたが、人口会議開催の問題意識自体が人口の抑制にあり、当時は出生率が今ほど下がるとは思われていなかったと筆者は認めている。

「驚嘆すべきは、当時出生率が下がるとは夢にも思わなかった人口巨大国インドのなかで、出生率が2.1を下回る州と特別区、そして数州以上で都市部地域が出現したことである。2004年現在で、州と特別区では、ケララ州(1.96)とゴア(1.77)連邦政府直轄領であり、さらに州のなかの都市部は、カルナタカ(1.89)、ヒマチャル・プラデシュ(1.74)、パンジャブ(1.79)、ジャンム・カシミール(1.66)、ウエストベンガル(1.69)、アッサム(1.50)の各州のものとなっている。」(pp.135-136)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0