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『きみの友だち』 [重松清]

きみの友だち

きみの友だち

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/10/20
  • メディア: 単行本

内容(「MARC」データベースより)
友だち? 他人だよ、そんなの。でも特別な他人、大切な他人。嬉しいこと、つらいことがいっぱいあったから「友だち」の意味がわかった-。痛みや喪失を乗りこえ、少女たち、少年たちはやがて…。

実に久々に重松作品を読んだ。重松の著作の中でも、かなり最近書かれた作品である。10の短編から成るが、時間をずらしながら、松葉杖のある女の子「恵美」にその周りの人物を絡める形でストーリーは展開する。もう1つの軸は、「恵美」の弟の「ブン」を中心とするその周辺人物を巡るストーリーであるが、いずれの話においても「恵美」は登場する。そして、明示はされないものの、その「恵美」のエキセントリックな行動の背景にあるのは、小学校5年生の梅雨の頃から友だち付き合いが始まったが、中学3年の高校受験の頃に病気で早世した「由香」の思い出である。9番目の短編「花いちもんめ」で、病床の由香は死を迎える。最後の短編「きみの友だち」は、由香という友だちを失った後の恵美が、結婚という節目を迎え、由香やブンを取り巻く幼少時代の人々と再会するシーンで終わっている。最後の描き方を見ると、重松自身の奥様の体験談なのかなこれは、そんな気がする作品である。

 

僕は「花いちもんめ」をファミレスで読んでいたが、この短編は、読む場所を間違えると涙が湧いてくる可能性が非常に強い、ヤバイ作品だなと思った。寸止めというか、重松の短編というのは物事の白黒をとことんまでつける結末にはしないものが多いが、人の死を淡々と描くとこんな作品になるのかなと思った。

また、4番目の短編「ふらふら」は、僕自身が風邪で寝込んでいる時に隣りで寝たいと言ってくれたチッチーにせがまれ読み聞かせの題材に使ってみたが、セックスに関する中学1年生の女子の間での話題と取り交わしに言及されていたりして、慌ててカットして話を聞かせた。今どきの小中学生の言葉遣いというのは、こんなにも汚いものなのだろうかと考えさせられる作品で、せがまれたとはいえ読み聞かせなどに使う作品ではなかったなと非常に後悔した。こうした言葉遣いは「ふらふら」だけではなく、本編収録の短編全てについて感じた印象でもある。ただ、最後の2編で迎える本編全体を通じたクライマックスは、そうした伏線で張られた荒れた小中学校の状況を洗い流してしまうほどのインパクトはあったように思う。

こういう作品を読むと、今どきの小中学生の人間関係というのは非常に複雑だなと思わずにはおれない。我が家の子供達は今まさにこうした世代に突入しようとしているところであり、親として心配は尽きないなと考えさせられた。


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ノリ

はじめまして。昨年から重松作品にはまっています。
「きみの友だち」は中でも一番好きな作品です。
クライマックスへ向かって涙なくしては読めませんでした☆
by ノリ (2007-03-01 13:27) 

zilwan

お邪魔します。
たしかに場所を考えないと非常にヤバい作品が多いですよね。
で、ふと考えます。
僕たちの世界は、あまりにも他人に対してイマジネーションがかけているのではないかと。
「あいあい傘」に出てくるリダーっぽい女の子(ただ今貸し出し中で、手元に本がなくて名前がわかんない)の話も聞きたかったなと思います。

「群青いろ」というユニットの作った「14歳」という映画もおすすめしたいような気がします。
by zilwan (2010-03-05 20:58) 

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