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書評-『世界を変えるお金の使い方』 [仕事が好き]

山本良一、Think the Earth Project 『世界を変えるお金の使い方』 ダイヤモンド社、2004年

キーワード:社会貢献、「世のため、人のため、地球のため」、地球温暖化地獄、持続可能な経済社会、地域再生、市民ひとりひとりに責任、NGO/NPO、CSR、募金、寄付、関心の持続、市場の失敗、政府の失敗、地域通貨、行政、企業、ボランティア、マイクロクレジット、環境配慮商品

開発援助の業界に籍を置く者として、僕は常に自分が取り組んでいる世界の貧困という問題を、いかに日本の市民の皆さんに説明したらよいかに強い関心をもっている。今の日本で最もリッチなのは、IT長者を除けば60代のシルバー世代。彼らが海外旅行に費やすお金の何割かでもNGOが取り組んでいる途上国の開発事業や多くのNPOが取り組んでいる国内の地域福祉改善事業に振り向けられれば、もっと多くの貧しい人々の脆弱な生活基盤を改善し、行政任せの公共サービスは受益者にニーズによりよく応えられるよう質も改善されるだろう。こうしてNGOやNPO、ODA事業などが寄附者や出資者と目に見える形で繋がれば、当然説明責任も求められるわけで、こうした事業を行なう側の能力強化にもなるだろう。

でも、それが世の中の大きな動きになかなか繋がっていかないのはなぜなのだろうか。僕は、それが、社会変革を指向する人々が、社会的成功者や小金持ちのシルバー世代に対してオルタナティブなお金の使い方の選択肢を示すのに成功していないからだと思う。そうした意味で、本書のような書籍が登場したことは非常に歓迎すべきことだ。

結局、お金の使い道は、そのお金によって消費者がどれだけの満足感を得られるかだと思う。自分が服1着を購入するのを我慢して、カンボジアやアフガニスタンの地雷除去活動に投資することで、多くの子供達が爆発に巻き込まれるリスクを軽減できるとしたら、そちらの方が大きい満足感を得られる人は多いのではないだろうか。

何年か前に、何人かの方とお酒を飲みながら、ODAの事業のうち、農村開発型のプロジェクトの中のインフラ整備のコンポーネント―――村落給水や学校校舎建設などを切り分けて、小口出資者を別途募ってみたらどうかという提案をしたことがある。自分のお金によって、どの村のどのような住民の生活がどのように良くなったのかがわかれば、出してもいいと思う人はもっといるかもしれない。その構造物に出資者としての名前が刻まれたりしたらなおのことだ。勿論、使わせていただく以上、ODAが納税者に果たす説明責任とは別に、出資者に対する説明責任も果たさなければならないことになるだろう。


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