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『現場発!ニッポン再興』 [仕事の小ネタ]

現場発!ニッポン再興

現場発!ニッポン再興

  • 作者: 出町譲
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2019/10/11
  • メディア: Kindle版
内容紹介
年商二億円の体験交流型直売所、欧米人観光客が殺到する里山、料理人同士の連携で地域の美食ブランドを確立させた温泉街……地方創生の成功例には、火種をもったリーダーの存在がある! 民放テレビ局・報道局の社員として、ジャーナリストとして、多くの地方都市を取材してきた著者だから見えてきた地方再生のヒントとは。借金まみれなのに痛みを先送りしている日本を変える近道は「地方」にこそある。
【N市立図書館】
前回ご紹介したミツバチに関する本と同様、ここに来て、もう少し日本の地域おこしの事例を頭の中にインプットしておいた方がいいのではないかと思うようになり、図書館で借りてきた本の中の1つ。探していたのは、地方の小さなコミュニティで、地域の資源を生かし、ハコモノの話が一切絡まず、できれば行政主導ではなく住民主導で進められた事例である。作られた商品を海外の富裕層向けに売るとか、時間とおカネがたっぷりある外国人を地域に呼び込むとか、外から入って来るお金に期待する取組みもあったが、チアパスってそれができるところなのかどうかはわからない。

サブタイトルに「ふるさとが「稼ぐまち」に変わる16の方法」とあるが、正直言うと、方法が16通りもあるとは思えない、むしろ共通点の方が多いと感じたところもあった。事例は確かに16個あるが、横串でまとめたらこんな目次になるのは理解できる。

第1章 「よそ者」「若者」こそ、改革の先駆者
―能作(富山県高岡市)、玉造温泉(島根)

第2章 「ローカル」と「グローバル」が直結する時代
―美ら地球(岐阜県飛騨市)、日本酒「夢雀」(山口県岩国市)、ニセコ観光(北海道)

第3章 「公務員」が立ち上がると、地域が熱くなる
―地域活性化センター、滋賀県東近江市、神奈川県秦野市、愛知県常滑市

第4章 「公民連携」でわが町を変える
―オガールプロジェクト(岩手県紫波町)

第5章 「女性」が灯す、未来への火種
―体験交流型直売所「陽気な母さんの店」(秋田県大館市)、空き家再生プロジェクト(広島県尾道市)

第6章 「次世代」につないだ改革のバトン
―由布院(大分県)

第7章 「人口減少」―未曽有の危機に立ち向かう
―高松丸亀町商店街(香川県)、課題先進地・夕張(北海道)

第8章 「人財」こそが地域を救う
―自主財源で集落再生・《やねだん》(鹿児島県鹿屋市)

時間が限られていたのでかなりの速読だったが、この目次で第8章に来ている「やねだん」のインパクトが強すぎて、それ以前に読んでいた事例の記憶が吹っ飛んでしまった自分に気付かされた。この著者、やねだんに関しては別の著書もあるし、本書の巻末に収録されている藻谷浩介氏との対談でも「やねだん」推しがにじみ出ている。

本書を読んで、次に何を調べなければいけないのかがおぼろげながら見えてきたことが大きな収穫だと思うが、そこらへんの話は割愛して、ちょっと痛快で思わず付箋を貼った箇所だけ引用して本書の紹介は締めようと思う。

紫波町のオガールプロジェクトで取り上げられていた岡崎氏が紫波の成功例から学びたいとする全国の自治体からのコンサルティングの依頼に対し、こう言い放っている箇所である。

「庁舎建て替えなど、コンサルタント業務の依頼は多くあります。しかし、私は随意契約でないとやりません。随意契約というのは、すなわち民間を信用することだと思います。議会で追及されるのがいやだから随意契約には後ろ向き。そんな自治体の首長に『公民連携』はできません。競争入札は『安かろう悪かろう』です。コンサル業務も、価格競争となっては良い仕事はできません」(p.157)

随意契約にできなくて、本来その仕事のことをいちばんよく理解していると思っていたコンサルタントに業務を委託できなくなってしまった苦い経験が、前の職場に勤めていた最後の10年間で少なくとも二度あっただけに、こういう発言が取り上げられることには新鮮さを覚えた。

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