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『そば学大全』 [仕事の小ネタ]

そば学大全 日本と世界のソバ食文化 (講談社学術文庫)

そば学大全 日本と世界のソバ食文化 (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/08/10
  • メディア: Kindle版
内容紹介
日本が誇る伝統食にして健康食、そば。しかし、植物であると同時に作物でもあるソバの文化は、日本だけのものではない。ソバの本場・信州で研究を積んだ農学者が、世界のソバ食文化を探訪して日本のそばの魅力を再発見する。さらにその栄養と味覚、健康食品としての機能や、品種改良についても解説。江戸の農書に表れる「ソバめくそ」「めくそ飯」とは何か? 「普通種」よりも収量が多くて安定しているダッタンソバ、ニガソバは、なぜ日本で栽培されなかったのか? なぜ「手打ちそば」が上等なのか? 朝鮮半島のシミョン、カルクッス、中国の「猫の耳たぶ」マオアルドウ、ネパールのソバの腸詰、ウクライナのソバカーシャ、スロベニアのソバ団子、フランスのガレットに、イタリアのポレンタ・・・各地のソバ食レシピをみれば、日本の「そば切り」を本流とする麺食ばかりがソバではない。縄文時代から親しまれる、ソバをもっと楽しむ本。〔原本:平凡社、2002年刊〕
【購入】
これは、一時帰国中に買った本。Facebookの講談社学術文庫の広告ページで発売になっているのに気付き、東京を発つ前日に書店で探し、内容確認の上で買って持ってきた。文庫サイズだし、読了すればティンプーで麺が食べられるお店の棚にでも置いておいてもらえれば、麺を注文して待っている間に、少なくともブータンのそばに関する記述の部分ぐらいは読んでしまえるだろう。

そう、著者である信州大学の故・俣野敏子先生は、ブータンに来られているのである。ただ、俣野先生は2020年にお亡くなりになっており、よって本書は20年前に平凡社から出された著書の復刻版である。そして、巻末解説を今回寄稿されている信州大学の松島憲一先生も、どうやらブータンをフィールドとされているらしく、解説の中でも何度かブータンには来られているとの記述がある。

そんなブータンゆかりの本だということもあって、しかも「大全」なんて仰々しく銘打っている本だからこそ、せめてブータン在住の邦人コミュニティの中で、こういう本は回し読みしてもらえたら嬉しい。ということで、読了後は皆さまの手の届くところに置かせてもらえるよう手配しますね。

これがネパール・カトマンズなら、ホテル・サンセットビューの棚にでも入れさせてもらえるのだろうが。読んでいたら、サンセットビューのそばのフルコースを思い出した。もう20年以上前のことだが、戸隠で修業してきたネパール人が、サンセットビューでそば料理のお店を出していた。

松島先生の解説からの受け売りになるが、本書は、第1章でソバという植物・作物の科学、第2章で日本におけるそばの食文化とその歴史、第3章で外国におけるそばの食文化(韓国、中国、ブータン、ネパール、ロシア、ウクライナ、キルギス、ポーランド、スロベニア、フランス、イタリア)、第4章で食物としてのソバの栄養と健康、第5章で再度そばの文化と今後の方向性を論じた内容となっている。

この中で特に印象に残ったのは、第1章にある、ソバという植物の特徴に関する記述で、著者は「自家不和合性」と「無限伸育性」という2つの特徴を挙げている。前者は、自己の花粉が雌芯に受粉しても受精に至らず種子ができないので、ソバは種子を得るのに他の個体からの花粉を受粉する必要があり、その送粉者として昆虫の存在が必要になるという性質。そして後者は、ソバが「ダラダラと伸び続け、ダラダラと花が咲き、ダラダラと種子が成熟するため、収穫のタイミングが定まりにくい」(p.200)という性質を持っていることを指す。

なるほど、ハやブムタンで見かけたソバ畑って、そんな感じだったなあと思い出した。著者も松島先生もそんなことは書かれていないが、こういうダラダラとしている部分って、なんかブータン人のメンタリティには合っていそうな気がしてしまった。チョウやミツバチに花粉を運んでもらわないといけない部分はあるが、あとはそんなに手間がかからないみたいだし、脱粒があってもあまり気にしないだろうし、脱粒した種子からまた生えてくるのなら、放っておいても何度か収穫できるわけでしょう?なんか、妙に腑に落ちたりした。

もう1つ気付かされたポイントは、日本はソバといったらそば切りして麺として食すのが当たり前となっているけれど、世界的にはソバの食し方ってもっとバラエティに富んでいるということだった。

こちらにいて、「そばの製麺機を買ってくれたら日本に輸出できる」と真顔でおねだりされたことがあった。にがみがすごくてそば切りに向く品種なのかと疑問にも思ったが、ブータンではこのにがみが苦にならないレシピを持っているわけで、わざわざ日本の食し方に合わせなくても、素材に合ったレシピの提案も併せて行っていれば、輸出振興の対象産品にだってなるかもしれない。

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《こんな食べ方とか…》

あまり「学術」っぽくなくて、どちらかというとエッセイに近い文体である。気軽に読める。ブータンのソバの日本への輸出に取り組んでいる友人もいるのだが、彼の参考文献としても、本書は有用だろう。
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