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『一路』(上・下) [読書日記]

一路(上) (中公文庫)

一路(上) (中公文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
失火により父が不慮の死を遂げたため、江戸から西美濃・田名部郡に帰参した小野寺一路。齢十九にして初めて訪れた故郷では、小野寺家代々の御役目・参勤道中御供頭を仰せつかる。失火は大罪にして、家督相続は仮の沙汰。差配に不手際があれば、ただちに家名断絶と追い詰められる一路だったが、家伝の「行軍録」を唯一の頼りに、いざ江戸見参の道中へ!

一路(下) (中公文庫)

一路(下) (中公文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
中山道を江戸へ向かう蒔坂左京大夫一行は、次々と難題に見舞われる。中山道の難所、自然との闘い、行列の道中行き合い、御本陣差し合い、御殿様の発熱…。さらに行列の中では御家乗っ取りの企てもめぐらされ―。到着が1日でも遅れることは御法度の参勤交代。果たして、一路は無事に江戸までの道中を導くことができるのか!

いただきものの文庫本、これにてようやく全て読了とあいなった!2カ月近くかかった。1冊1冊が結構なボリュームで、読みかかりにすごく気合いを入れる必要があった。まるで、坂道発進の時のアクセルの踏み方のようなものだ。人からいただいた本は、他の人の目に触れさせるつもり。ティンプー市内のMKレストランに最近、8月にお帰りになったJICAの専門家(この本をいただいた専門家とは別の方)の文庫棚ができたので、そこに寄付するつもり。

さて、浅田次郎の『一路』が最後まで残ってしまったのも、本書が上下巻合わせて800ページ近いボリュームがあったことや、舞台となる江戸時代にこれまでさほど関心を持っていなかったこともあってのことだ。実はこの長編、上巻の最初の数十ページを読み進めるのが結構難儀で、そこを乗り越えて話が動き始めないと、面白さが味わえない。この本に出てくる美濃国赤坂宿は僕の実家から近いし、武蔵国桶川宿は、結婚前に2年ほど住んだ思い出の地だ。実際、僕は中仙道を辿って桶川から実家までドライブしたこともあるので、時代は違えど作品としては興味があった。それでも、序盤はエンジンがかからず、8月にいったん挫折した。そのトラウマで最後まで後回しにしてしまったのである。

江戸時代の参勤交代を描いた作品は他にもあるだろうが、多くは東海道五十三次の話で、中山道六十九次の話というのは少ない。でも、東海道最高地点は箱根の800メートル強だが、中山道には1000メートル超の峠が何カ所かあり、最も高い和田峠で1500メートル以上ある。距離的には中山道の方が短いかもしれないが、過酷なのも中山道なのである。

また、参勤交代という制度ができてさほど日が経たない頃の話と違い、実はこの小説の舞台は幕末で、桜田門外の変の後ということになる。世の中の動きが慌ただしくなってきた頃の話なのだが、その割には井伊直弼暗殺事件以外に幕末を感じさせる要素がほとんどない。僕にとっては、幕末まで参勤交代という制度が厳格に行われ続けていたということが新鮮だった。

もう1つの違和感は、地元だから言えるが、この小野寺一路が仕える西美濃の「田名部」というのがどこなのかがにわかにイメージできないことだった。垂井宿よりは西で、しかも伊吹山が西に控えるといったら、想像できる場所もあるのだが、そこに昔宿場町があったとは全く想像もできない田園地帯である。また、実際の中山道で垂井宿の次は関ケ原宿で、そこまで来ると伊吹山はもはや西どころか北北西に近い位置になってしまう。仮に関ケ原宿だったとしても、ここって石高が7500石あるような土地とも思えない。

「田名部ってどこだ?」―――自問しながら読み進めた。

深谷から桶川、上尾、大宮あたりまでも、昔住んでいたこともある地だったりするので、街道筋の旧宿場町の街並みを思い出しながら、僕自身も駆け足で読んだ。吹雪の和田峠越えの時には一人たりとも死なせてはならんみたいなことを言っていた御供頭が、終盤の大宮から荒川あたりでは御殿様を殺めようと図る御家人が斬られるのを阻止しなかったりしている点、前半の主人公は一路かもしれないが、後半になってくると御殿様や側用人なんじゃないかと思えるほど一路の出番が減ってくる点など、細かく見て行けば突っ込みたくなるようなポイントもいっぱいあるけど。ストーリーのスピード感が、「まあそんな細かいことええやん」と言ってる感じで、展開の妙に浸れるいい作品だと思う。楽しい読書の時間でした。

これで、小説が多かったこの夏の読書もひと段落。ここからはもう少し真面目な本の積読状態を解消する努力を再開していきたいと思っている。

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