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『シフト』 [仕事の小ネタ]

シフト――2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来

シフト――2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来

  • 作者: マシュー・バロウズ
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
大統領が指針とする米国最高情報機関トップ分析官が辞任後、初めて明かす「2035年」の驚愕の未来!CIA、国防総省、国土安全保障省……米国16の情報機関を統括し、未来予測・分析を行う国家情報会議(NIC)。政治・経済・軍事・テクノロジー、あらゆる領域からNICトップ分析官が在任中には明かせなかった不都合な「シフト」を分析する。

以前、仕事が忙しくて読了した本をひとつひとつ紹介できなかった時期、3冊ほどまとめて寸評を載せていたことがあった。その中で、米国国家情報会議(NIC)の『2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」』(原題"Global Trend 2030"、講談社刊)を一度ご紹介した。2014年3月のことである。

当時から、僕は2030年の世界と日本の姿がどう予想されているのか、それはあるべき姿とどこがどのように違うのか、そのギャップを明らかにして、このギャップを埋めるために、何をすべきかということを考えなければいけない仕事を会社でやっていて、未来予測の類の本を片っ端から読んでいたが、その端緒を開いたのが『2030年~』で、今でも僕の未来予測のベースになっており、電子書籍版を常に手元に置いている。この本で良いと思ったのは、第1章で2030年の世界を規定する4つの構造変化「メガトレンド」を挙げ、第2章で世界の流れを変えると見られる要素「ゲーム・チェンジャー」を列挙している点だ。この枠組みに基づき、後に続くチャプターでどのようなシナリオがあり得るのかが検討されている。

ちなみに、この2030年版の構成は以下の通りだ。
第1章 メガトレンド 「2030年の世界」を決める4つの構造変化
 メガトレンド1 個人の力の拡大
 メガトレンド2 権力の拡散
 メガトレンド3 人口構成の変化
 メガトレンド4 食料・水・エネルギー問題の連鎖
第2章 ゲーム・チェンジャー 世界の流れを変える6つの要素
 ゲーム・チェンジャー1 危機を頻発する世界経済
 ゲーム・チェンジャー2 変化に乗り遅れる「国家の統治力」
 ゲーム・チェンジャー3 高まる「大国」衝突の可能性
 ゲーム・チェンジャー4 広がる地域紛争
 ゲーム・チェンジャー5 最新技術の影響力
 ゲーム・チェンジャー6 変わる米国の役割

著者はこの『2030年~』の執筆担当チームのリーダーだったわけで、NICを退官して後に個人的に書いた今回の著書でも、基本的には同じ枠組みを踏襲している。では、今回の著書のメガトレンドとゲーム・チェンジャーがどう構成されているのかというと、以下の通りである。
第1部 メガトレンド
 メガトレンド1 「個人」へのパワーシフト
 メガトレンド2 台頭する新興国と多極化する世界
 メガトレンド3 人類は神を越えるのか
 メガトレンド4 人口爆発と気候変動
第2章 ゲーム・チェンジャー 世界を変えうる4つの波乱要因
 ゲーム・チェンジャー1 もし「中国」の成長が止まったら
 ゲーム・チェンジャー2 テクノロジーの進歩が人類の制御を越える
 ゲーム・チェンジャー3 第3次世界大戦を誘発するいくつかの不安要因
 ゲーム・チェンジャー4 さまようアメリカ

5年程度で未来予測が大きく変わるとも思えないが、『2030年~』と比べて大きく前面に出てきているのは「テクノロジー」や「人工知能」で、これが人類の制御を越えるレベルにまで2035年には到達してしまうと述べている。「中国」も同様だ。今まさに中国経済は正念場を迎えているが、2020年代に中国の生産年齢人口は減少に転じるので、1995年あたりを境にして日本でも起こった低成長期への移行が、間もなく中国でも起きると考えていてもいい。

また、こうして2つを見比べてみると、著者がNICという組織に所属していたら書けなかったこと、組織を飛び出して初めて自由に書けたことが何かがより鮮明に見えて来る気がする。良い例がメガトレンドにある「気候変動」だろう。『2030年~』を読んでいて驚いたのは、水と食糧とエネルギーの相互連関(Nexus)をこれだけ大きく取り上げていることだったが、今こうして2冊を比べてみると、前者の方での「気候変動」の取り上げ方が著しく小さかったというのが象徴的である気がする。

もう1つは、米国の描かれ方。「変わる米国の役割」と「さまようアメリカ(原題は「パックス・アメリカーナは終わりを迎えるのか?」」とでは、読者の受け止め方がかなり違う。前者では、あえて米国の影響力の低下を真っ向から指摘するようなタイトルは付けられなかったのかもしれない。

こうして比較してみると、建前バージョンと本音バージョンの2冊があって面白い。僕はいずれ未来予測とは直接的な関係のない部署に異動になるだろうが、どこに行くにしてもこうしたグローバルなトレンドは頭の片隅に入れておきたいので、2冊とも座右に置いて適宜参照できるようにしておきたいと思う。

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