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『あすなろ三三七拍子』 [重松清]

あすなろ三三七拍子

あすなろ三三七拍子

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2010/03/13
  • メディア: 単行本
内容紹介
藤巻大介45歳、あすなろ大学応援団長出向を命ず―
存続危機の応援団を「合言葉は押忍!」でオジサン達が復活させる、抱腹絶倒・落涙必至の快作長編。
ここのところ夜の予定が立て込み、1つ予定を片付けてから21時過ぎに飲み会に遅れて合流という日が二晩連続した。今日(14日)も近々インドに赴任する予定の同じ職場の元同僚と待ち合わせ、3時間ほどインドでの仕事や職場の話をした。そんなわけで14日分の記事は書き上げることもままならず、1日お休みをさせていただいた。

もう1つの大きな理由は、422頁もある重松清の長編を読んでいたからだ。あり得ない状況設定なのだが、重松作品としてはかなり珍しい大学生の学生生活が描かれており(主人公・藤巻大介を「学生」と呼べるかどうかは悩ましいが)、それがとても新鮮だった。舞台が応援団だというのも意外感がある。トーンは『定年ゴジラ』や『希望ヶ丘の人びと』、『青春夜明け前』等に近いと思う。笑いあり、涙あり、感動ありの長編で、かなり楽しませてもらえる。

但し、重要なキャラだとはわかっていても翔の描かれ方には最後までイラついたし、団長・大介とともにライバル校応援部に2人で乗り込んだ沙耶が、団長の状況打開策を見て何をどう思ったのかがあまりよく描かれていなかったし、荒川社長の「介護ビジネスの基本は応援だ!命の応援団だ!」(p.421)というセリフにも抵抗感があったりもした。もうそろそろ黄泉の国へのお迎えが来るころかなと思っているお年寄りに「頑張れ!」と連呼するのがお年寄りにとってハッピーなものかどうかは僕には疑問だ。

こういう学生時代もいいなぁと思いながら読み進めた。僕は学生時代に軟弱英会話サークルに入っていたので、本書で登場するような硬派な生活を経験したことがないが、自分が仮に通っていた大学の応援団に入っていたら、学生生活はどんなにか変わったものとなっていただろう。ミッション系の私大では元々応援団も迫力に欠けたものとなっていた可能性は大いにあるが…。

応援団じゃなくても、大学時代に体育会剣道部に入っていたらどうなっていただろうかというのは時々考えることである。この年齢になっても剣道の稽古はやっているが、仮に半年後に四段受験して首尾よく合格したとしても、60歳になるまでに到達できるのは五段がせいぜいで、六段はかなり難しいだろうと思う。途上国に行って指導者になるにはちょっと足りない。つくづく、学生時代に続けていて卒業直後ぐらいに四段受験していればよかったと思うのである。特に、大学生と地稽古する時にはそうした思いが強くなる。体育会出身者として就職時期を迎えた時、僕はどんな進路を選択していたのだろうか―――そんなことを考えてみるのも結構楽しい。

高校卒業まで10年続けた剣道をなぜ大学進学時に辞めてしまったのか、今となっては思い出すことも難しい。きっと「続けたい」と思えるようないい師との出会いが高校時代になかったからだろう。

本書はコミセン図書室で3カ月待ってようやく借りることができた。僕の前に既に5人も借りており、重松清の人気の高さを改めて実感させられる。


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