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大都会での救いの手 [インド]

IndiaToday2010-8-9.jpgインドの週刊誌『INDIA TODAY』の2010年8月9日号に「手を差し伸べて(Helping HANDS)」(Shutapa Paul記者)という記事が載っていた。都市部で高齢者のケアに従事する組織が増えて歳をとるのが楽になってきているという内容だ。国連人口部の予測では、現在8,200万人いると言われるインドの60歳以上の高齢者は、2025年には1億7,700万人に達するとのことである。さらに2050年には、4人に1人が高齢者という時代がインドにもやってくるという。それを先取りして、高齢者の生活をより安全でよいものにするための制度変革の取組みの必要性は、強調してもし過ぎることはない。

*記事全文(英文)は、下記URLからダウンロード可能です。
http://indiatoday.intoday.in/site/Story/107284/FROM%20THE%20MAGAZINE/helping-hands.html

記事では結構深刻なデータも提示されている。例えば―――。
◆高齢者の51%が、自分は無視されていると時々感じている。さらに40%は毎日無視されていると感じている。

◆36%の高齢者が何らかの形で虐待に遭っている。言葉による暴力を訴える割合が最も高いのはムンバイの79%で、感情面での虐待を訴える割合はデリーの62%が最も高く、身体への暴力はコルカタの22.8%が最悪だった。

◆Dignity Foundationがヘルプラインで受け付ける電話の10本のうち9本は、財産絡みのハラスメントである。高齢者の35%が財産絡みのハラスメントに直面しており、その割合が最も高いのはチェンナイの51.8%だった。

◆高齢者を虐待する割合が最も高いのは息子(54%)と義理の娘(43%)で、この両者でほぼ全てを占めている。息子による虐待が最も横行しているのはボパール(70%)で、パトナ(57%)がこれに続く。使用人による虐待が最も多いのはデリーである。

◆法整備は進んでいるが、高齢者の権利を守ってくれる法制度について理解している高齢者は全体の1/3に過ぎない。38%の高齢者は地元警察や弁護士は非協力的であると考えている。

◆このため、高齢者の53%は、虐待を受けていても何もアクションを取っていない。
自分の話を聞いてくれないのまで被害者的に受け止められるとこんな結果になると思う。人の話をちゃんと聞かないのはインド人だったら誰でもあり得ることで、「無視」しているのではなく本当に話を聞いてるようで聞いていないだけだと思う一方で、こういう回答をしているお年寄りも、若い者の言うことを結構聞いていないような気がする。この点についてはどっちもどっちだと思うが、その一方で、たとえ血の繋がった親子の間でも財産が絡むと文字通り骨肉の争いになり、子の立場の方が圧倒的に強くなるというインドの事情も垣間見える。

記事では幾つかのNGOの取組みが紹介されている。ムンバイに拠点を持つDignity FoundationHarmony for Silvers Foundationは特に有名である。Harmony for Silvers Foundationのティナ・アンバニ代表は、大富豪アニル・アンバニ氏の夫人でもある。

個人的には嫌な経験もしているHelpAge Indiaも紹介されている。(断わっておくが僕はHelpAge Indiaの取組みが全て良くないというつもりはない。記事で紹介されている取組みはグッドプラクティスなのだろう。でも、寄附者に対する説明責任がイマイチなのが僕には気に入らない。)

さて、僕的には知っていることばかり書かれているこの記事の中で、僕が唯一目新しいと感じたのは、Parental Care Indiaという、外国在住インド人のための国内残留家族向け介護サービスに関する記述である。
 子供たちが外国で働いているために国内でひとり暮らしをしている高齢者の数は増加が著しい。こうした高齢者は、日常生活で必要とされることについて面倒を見てくれる人がおらず、不安や絶望感に駆られている。プリヤゴパール・ダスさんは2009年に慢性的気管支炎と診断され、ただちに入院せねばならなくなった。彼の息子であるサンディパンさんは米国で働いており、知らせを聞いて途方に暮れてしまった。数日でも帰国することは不可能だったのだ。その時、妻のマラビカさんがParental Care Indiaについて聞いてきた。「Parental Careは全て手配してくれました。父をいい病院に入院させる手続きから、医薬品を購入し、医師と話すところまで、全てやってくれたのです。彼らは父が入院していた20日間の間、真摯に動いてくれました」――サンディパンさんはこう述べる。(中略)スタッフは親と外国に住む子供を繋いだテレビ会議もアレンジし、お年寄りの社会活動への参加にも付き添うという。
 こうして外国に住むインド人は、心の安寧を適当な値段で購入する。四半期のサービス契約であれば$174.99、半年であれば$299.99、年間契約であれば$549.99である。これに、スタッフが訪問するたびにかかる費用が1時間当たり$1~$9発生する。親子の距離は離れていても、親の支援ができるのなら安いものだと子供たちは言う。
―――当然、こんなサービスが登場しても驚くことはないのだが、親子の情まで金に換えてしまうのを認める外国在住インド人のドライさには寂しいものも感じる。例えばここで登場しているサンディパンさんであるが、すぐに数日間の休暇を取って帰国できない事情は理解するものの、全く帰らなくてもいいかというとそんな筈はないと僕は思うのだ。


Kendo5.jpg

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