SSブログ

UP州砒素汚染レポート [インド]

これもデリー在住の方から教えていただいた新聞記事の紹介―――。

7月9日付Pioneer紙に「ウッタルプラデシュ州の数県では砒素汚染水を飲んでいる(UP districts drinking arsenic)」(Biswajeet Banerjee通信員)という記事が載っていたそうである。UP州の小規模灌漑部(Department of Minor Irrigation)が6月10日に州政府に提出したレポートで、同州に71ある県のうち、49県の地下水は砒素が混入しており人の摂取には向かないとの調査結果が明らかになったというニュースだ。

記事によると、UP州が検査した州内2万本の井戸水のサンプルのうち、11,021本から発がん性物質が検出されたという。

WHOの水質基準によると、1リットル当たり0.01mg(10ppb)以下が安全と言われる砒素含有量である。インド政府は50ppbを採用している。しかし、UP州の地下水サンプル調査では、最大200ppbもの砒素が検出されている。

今回のレポートにおいて地下水から基準値を超える砒素が検出された主な県は次の通りだ。
 西部: Meerut、Agra、Bijnore、Saharanpur、Badaun、Gautam Budh Nagar、Muzaffar Nagar
 東部: Ballia、Lakhimpur Khiri、Bahraich

汚染された地下水は農業灌漑用にも用いられるため、砒素が検出されていない県であっても、農作物や野菜に砒素は蓄積され、人体にもやがて蓄積されていく恐れがあるという。

UP州都市開発相のナクル・デュベイ大臣は次のように述べている。「手動汲み上げ井戸に赤ペンキでバツ点が付されているのは汲み上げられる水が飲料用としては安全ではないことを示しています。こうして汚染が特定された地域に対しては、導水管を使って飲料水供給が行なえるプロセスに私達は既に入っています。」

*記事全文は下記URLからダウンロード可能です。
 http://www.dailypioneer.com/267919/UP-districts-drinking-arsenic.html

ところで、この記事を書いた記者、この問題に関する基本的な知識が欠けている状態で記事を書いた節がある。例えば次のような記述である―――。
専門家によると、産業廃棄物や都市廃棄物の不適切な処理が農薬や殺虫剤を過剰に使用と結びつくことで、地下水源の汚染に繋がるという。いったん汚染されてしまうと、それを除去するのは不可能に近い。
砒素汚染の汚染源が産業廃棄物や都市の生活廃棄物、農薬、殺虫剤等であるかのごとき書きぶりだが、これは明らかにおかしい。そりゃこの取材した相手の専門家は一般論としてはそう言ったかもしれないが、砒素の問題とは基本的に関連性が乏しい。また、通常こうした英字新聞の記事では第1段落にその記事全体の要約を載せるのが一般的だが、そこでもこの記者は、地下水砒素汚染を、カドミウムやフッ素、硝酸塩(エステル)、鉛等と一緒くたに扱っており、ここだけを読むと検出されたのは砒素だけではなく、これら有害物質が含まれていること全てが問題だと読者は勘違いしやすい。(こういうまとまりの悪い新聞記事はインドではよく見かけた。)

また、このUP州の小規模灌漑局のHPから実際のレポートの全文をダウンロードできないかと試みたところ、驚いたことにこの部署はヒンディー語のHPしか持っていない!! 州のトップを務めるマヤワティ首相自身が英語を全く喋らないヒンディー語オンリーの方だから仕方がないかなとも思ったが、州政府のHP自体は英語、ヒンディー、ウルドゥーの3言語に対応しており、州政府全体がヒンディー語オンリーであるわけではないこともわかった。いずれにせよレポートの内容が原文で確認できないのは残念だ。

まあ、他の方からうかがった話によると、UP州内で地下水から検出された砒素濃度が高かったのは東部のバリア県で、これにバライチ県が続いているそうだ。また、僕が敬愛するジャダヴプール大学のチャクラボルティ教授は昨年、東部のアラハバード県周辺の井戸水の水質調査を行ない、その結果をUP州政府にも知らせたと仰っていた(同州からはなしの礫だったと苦笑しておられたが)。その調査レポートと小規模灌漑局の今回のレポートとは何か関連性があるのかどうか、それはよくわからない。

【今回覚えた英単語】
carcinogenic: 発がん性の


Kendo5.jpg

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0