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ベトナムがインドに技術協力? [インド]

ちょっと意外(?)という記事を新聞で発見した。6月9日(水)付Hindu紙の22面に掲載された写真入りのこの記事は、「ベトナム、インドの漁民に訓練実施(Vietnam trains Indian fishermen)」(B.Kolappan通信員)というものだ。
【チェンナイ発】 いつもなら、ラメシュワラムの漁民であるE.アルトリンさんは、1匹50グラムしかないロブスターの稚エビを、漁の後で近くの市場で売っていただろう。しかし今ではそれは行なわない。稚エビを捕獲する度に、彼はそれを海に浮かべた生け簀に移している。「生け簀の中で4ヵ月もすれば、稚エビは体長体重ともに成長し、200グラムに達します。稚エビを今市場で売るとキロ150ルピーにしかなりません。でも、150~200グラムになり十分成長したロブスターであれば、キロ1,000ルピーをもたらしてくれます」――アルトリンさんはこう述べる。彼はベトナムで先進漁獲法の研修に参加してきた8人の漁民の1人である。
 国際ロータリー第3230地区の津波救済委員会がこの研修プログラムの実施に大きな役割を果たし、ベトナムへの渡航に必要な旅費はゼネラル・エレクトリック(GE)社が支弁した。プログラムの日程編成は海洋資源輸出開発庁(Marine Products Export Development Authority)のM.サクティベル議長が調整役を果たした。
 「最初の計画では漁民をスコットランドに派遣することになっていました。しかし、それは実現しませんでした。そこで次にベトナムでの研修を考えました。結果的にはこれは成功しました。アジアの国での研修だったからです」――こう述べるのは津波救済委員会委員長で国際ロータリーの元地区ガバナーでもあるベンジャミン・チェリアン氏だ。チェリアン氏は研修実施期間中にベトナムを訪れており、インドの海岸線総距離の1/3に匹敵する海岸線を持つベトナムが水産業で世界のリーダーとして台頭してくるなら、インドはその成功体験をさらにスケールアップできるだろうと考えた。
 「チェンナイのホテルでもベトナムから魚を調達しています。私達は未だ漁業資源を十分に利用しているとは言えません。漁法や養殖法の問題だけではありません。インドの漁民は水産加工法についても訓練を受けるべきだと思います。保存法は非常に重要です」――チェリアン氏はこのように語る。
 先進漁獲法の研修をもっと多くの漁民に受講させることを目指し、国際ロータリー第3230地区はインド政府農業省に事業提案書を提出した。「海岸に面している11の州から各10人の漁民が研修に派遣されるべきだと提案しました。計121人の漁民の研修にかかる総費用は、インド人通訳ガイドを含めて3,600万ルピー程度でしょう」――チェリアン氏はこう述べる。
 ベトナムは内海生け簀で「ハタ(grouper)」「スズキ(seabass)」「フエダイ(snapper)」「スギ(cobia)」、沖合で「ハタ(grouper)」「スギ(cobia)」の養殖法について研修を実施する他、ロブスターの浮き生け簀養殖法、輸出向けロブスター包装法、稚エビの採集技術、生魚市場と生魚輸出法、イカの漁火漁法、刺身用マグロの漁法等についても指導するという。
 漁民が研修を受講した後、州政府は漁民に対して十分な資金供与機会を提供して漁民を支援していくという。
 アルトリンさんによると、ロブスター養殖は成功するだろうとの見通しを語った。マンダパムにある中央海洋漁業研究所(CMFRI)が海中に生け簀を設けた。「生け簀は設置するのに55万ルピーかかります。私が1人でそんな大金を投資することなどできません。CMFRIの研究員の方々は、今でもその専門知識を以て私達を助け続けてくれています。」アルトリンさんはまた、ハタやコドゥバ(Koduva、註タミルナドゥ特有の魚)といった魚を育てるのに関心はあるという。しかし政府からの支援は少ない。
 チェリアン氏は、国際ロータリーの活動として、近代漁業技術について漁民を教育していくことには強い関心を持っているという。「知識は永久に残るものです。知識を創出するkとおで私達はこの国に「青の革命(blue revolution)」の種を播きたいと考えているのです。」
*記事全文は下記URLからダウンロード可能です。
 http://www.thehindu.com/2010/06/09/stories/2010060961962200.htm
残念ながら、ベトナムが政府間協力としてインドの水産業振興に一役買ったという記事の内容ではない。記事のヘッドラインはベトナムが主語になっているが、内容はインド側がベトナムにアプローチして研修をやってもらったという趣旨である。ただ、ここで注目したいことが幾つかある。

1つ目は、逆にこの研修を主導したのが地元の関係者だという点。国際ロータリーがこれだけのイニシアチブを発揮できるというのがある意味インドの凄いところだと感心した。

第2に、養殖技術のようなものなら、日本での研修とかもありなのではないかという点。この記事だけからでは確認できないが、派遣先の国として、スコットランドとベトナム以外にどのような国が候補として挙がり、そして消えたのか、日本は入っていたのかといった点はやっぱり気になる。

第3に、このイニシアチブがそれなりにインド政府関係者の認知を受けているということ。政府間協力の枠組みに持ち込みやすいということでもある。

インド政府関係者が既に絡んでいる話であれば、日本から若手の漁業技術者を青年海外協力隊の枠組みを使って派遣するのに障害も少ないのかもしれない。しかし、そんな若者が日本の漁業関係者の中にいるのかどうかは全く自信がない。むしろ、ベトナムのケースと同様に、研修員として受け入れられたらいいのになと思った。但しそれは派遣元と研修先の双方の状況を把握して積極的に連携関係構築に動けるアレンジャーがいるかどうかにかかっているような気がする。国際ロータリーならロータリークラブのネットワークで日本のどこかの漁業組合と連携して受入先を探すことはそんなに難しくはないだろうが、日本の漁村でロータリークラブの活動がどの程度活発なのかはよくわからない。

残念ながら、アレンジャーとして動き回れそうなフットワークが軽い人は少ないのが現状だろう。でも、こういうニーズをもっときめ細かく拾って国際協力に繋げられれば、何かと批判も多い日本のODAもなかなかやるということになるのだろう。
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