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ハイデラバード剣道遠征(その後) [インド]

僕がハイデラバードのインド剣道連盟(KIF)の稽古に参加してから1ヵ月近くが経とうとしている。その遠征日記は4回にわたって5月にお伝えしたのでそちらをご覧いただくことにして、今週に入ってからKIFのSさんから立て続けにメールが来たのでそのやり取りをご紹介したいと思う。(名誉毀損と言われると嫌なので、一応イニシャルのみにする。)

最初に断わっておくが、もう彼のことを「先生」と呼ぶのはやめにしたい。直接的には彼がそう希望したからであるが、正直、その実力が未知数の人に対して敬称を使うのは気が引けるからだ。今週のメールのやり取りを見ていて、「身分をわきまえろ」と言いたくなるところがあった。何かきっかけでもあると俄然やる気になり、いろいろなつてを頼って図々しいお願いを始めるのはインド人にはよくあることだが、言ってたことと違うだろと当惑するエピソードが相次いだ。こんなことをやっていると辛うじて繋ぎ止めていたKIFへの同情心も雲散霧消する。

【エピソード1】「薙刀セミナーへのアドバイス」?
最初のメールは、今度ハイデラバードに薙刀の先生が来られてセミナーをやられるから、何かアドバイスが欲しいというものだった。異種格闘技戦でもやるつもりなのか?そんな質問をこちらからするのも馬鹿馬鹿しい。「二兎を追う者は一兎も得ず」という格言でも言ってやろうかと思ったが、それを言い方変えて、「自分は剣道以外の武道の修練の時間などなかったから他の武道に対してアドバイスなどできない」とお断りした。シディクさんは、「セミナー企画を依頼されたからやるのだ」ということだった。

まあ、米国留学中の日本人学生を「剣道の先生」と称してハイデラバードの市長のところに連れて行ってしまう人だから、地元では名士であり、それなりの人脈はあるのだろう。それは結構なことだが、彼とは地稽古もしてないのでそもそも力量がわからない。単なるセミナーだったら、場所だけ提供してその先生にデモしてもらえばそれだけで済む。それを僕なんぞにアドバイスを求めるとは、自分が防具を付けて薙刀の先生と戦うようなシチュエーションでも想定しているのではないかと勘繰ってしまう。そんなことは高段者の先生がやられるべきことで、彼がそれだけの高段者であるならともかく、力量に疑問符が付く状態で受けるべき話とは思えない。

【エピソード2】全日本剣道連盟に対するおねだり
Sさんのメール第二弾は僕に宛てたものではない。全剣連の先生に宛てたもので、僕にBCCが来た。破れたり壊れたりした防具の画像データをやたらと添付し、防具の修理ないしは新調に協力して欲しいという内容だった。はっきり言って、これは禁じ手だと思う。彼自身の力量が確認できない段階で言うのは時期尚早だが、練習生の稽古振りを見ていれば大した指導はしていないのは一目瞭然で、そもそも全剣連の先生に支援要請すること自体身のほど知らずも甚だしく、あり得ない話だ。今回の一連のエピソードの中で、最も僕の逆鱗に触れたのがこのメールである。

それに、竹刀が壊れるのを恐れてちゃんとした打突ができないような稽古だったら、そもそも防具を装着して行なうべきではなく、木刀を用いて基本技の稽古に専念させた方がいいと個人的に思う。防具が破れたり壊れたりしたのは長期的には修繕の必要はあるとは思うが、そのために稽古に支障を来たしているなどと言う以前の稽古のレベルだ。

加えて言えば、彼は修繕に必要な費用は負担する用意は当然あると僕には言っていた。僕が、「頼まれるなら実費はちゃんと取るからね」と言ったからであるが、そこでは「わかった」と答えておきながら、よりにもよって全剣連の先生にこんな支援要請をしてしまうその感覚は理解できない。なんで全剣連の先生方から信用を失くすようなことを彼はやってしまうのだろう。

お陰でこの容量が重すぎるメールを受信完了するのに相当な時間がかかってしまったことは言うまでもない。

【エピソード3】「インドの剣道クラブ」?
これは今日僕に来たメール。KIFとニューデリー剣道同好会「剣印会」以外に、インドにある剣道クラブを知らないかという照会だった。笑ってしまった。3年前に初めて彼にメールした僕が尋ねた質問がまさにこれだったからだ。

仮にも「オール・インディア」を名乗っている団体の代表でしょ?むしろこちらが聞きたいぐらいです」――そういうメールを打っておいた。実際、KIFのウェブサイトには他州の道場へのリンクとおぼしきページも存在するが、実は中身がスカスカで、いかにも大風呂敷を広げるインド人的発想で作られたページだ。

【エピソード4】段級審査受験の支援を!!
これも全剣連絡み。図々しくもSさん、段級審査を受験させて欲しいと全剣連の先生にお願いしたらしい。その先生のご回答は当然のことながら「(よくても)1級からでしょう」というものだった。それはそうだ。全く段も級も持っていない剣士が最初に受験するのは無段者の部の試験で、これは良くても1級しか取得できない。そこまではいい。日本に行って、どこかの道場で稽古をさせてもらい、その間に地区の剣連に会員登録して、審査受験すればいい話だろう。

ところがこのアドバイスを受け取ったSさん、今度は僕宛にメールを出してきて、「1級受験の支援をニューデリー剣道同好会に頼んで欲しい」「自分は他の仕事もあって忙しいので、7月上旬に1週間から10日程度しかデリーでの稽古に参加できない」「デリーで問題になるのは宿泊であり、誰かホームステイさせてくれる人を紹介して欲しい」というリクエストの三連発と来たものだ。

これは誤解もいいところで、先ずインドは国際剣連に加盟していないため、インドで段級審査は行なえない。当然、ニューデリー剣道同好会が審査会を主催することなどあり得ない。次に、ニューデリー剣道同好会は同好会(Club)であって道場(Dojo)ではないから、週1回しか稽古していない。誰かに段や級を取らせるための特別セッションなど行なえるわけがない。そういう目的ならそもそもデリーに来るべきでもない。

僕は、ハイデラバードで剣道を普及したいのなら、先ずSさん自身がデリーに来て、剣印会の稽古に揉まれて標準的な稽古というのがどういうものなのかを学ぶべきだとこれまでも主張してきた。その考えは今も変わっていない。彼は先ずはデリーに来るべきだというのはこれは剣印会の先生方にもご理解はいただいている。だが、級を取りたいから便宜を図れというのはちょっと違う気がする。

「そもそも、あなたが剣道をやっている動機は何なのか?」――僕は返信メールで、根本的な彼の剣道に対する姿勢を質す質問をした。級や段がどうだこうだと言う前に、適切な稽古ができているのか、先ずは世界標準の稽古のあり方を学ぶのが先だろう。それもないのに段位取得を指向するとは、結局のところその段位をひけらかして練習生集めに利用するのではないかという疑念がどうしても晴れない。「インドには変な輩が多いから気をつけなさい」と僕が全剣連の先生から忠告を受けた最大の理由がまさにこれだ。

こういう一連のメールのやり取りを通じ、KIFとSという人物に対し、全幅の信頼を置くのはやはり危険だという思いを強くしてしまった。また、そもそもの根本の原因は僕がハイデラバードでSさんと地稽古をやらなかったからで、その力量を確認しなかったことが後に尾を引いている。自分で言うのもおこがましいが、ハイデラバードで彼を完膚なきまでに叩きのめし、「全剣連云々を口にするなど10年早い」というメッセージを明確に伝えるべきだったと後悔している。

KendoIndiaFed.jpg
《こうなると現地でいただいた参加証書も虚しく映る…》

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コメント 3

ブック人気ランキング娯楽部

NICE記事!!
おはようございます
もしよろしかったら相互リンクお願いします


by ブック人気ランキング娯楽部 (2010-06-11 10:10) 

toshi

ハイテラバードは二回行きました。チャイミナールのある石の椅子に座ると再訪できると聞いて、そのようにしたのです。
by toshi (2010-06-11 14:26) 

duke

いやー。苦しいですね~^^;
by duke (2010-06-13 16:12) 

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