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『問題解決ファシリテーター』 [読書日記]

問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座 (Best solution)

問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座 (Best solution)

  • 作者: 堀 公俊
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2003/02
  • メディア: 単行本
出版社/著者からの内容紹介
コンサルの間で注目されているファシリテーションの解説書。戦略型リーダーに必要とされる組織の力を発揮させ、問題解決を実現させる技術を事例をもとに指南。
この記事を掲載する頃は、ちょうどアンドラプラデシュ州ビシャカパトナムにいることになると思う。僕がインドでやり残したことというのは枚挙に暇がないが、その中の1つが「マスターファシリテーター養成講座フィールド実践研修」に参加する機会を逸したことである。一時帰国中の2008年6月に東京で基礎研修を修了した後、フィールド実践研修がビシャカパトナムで予定されているという話は早い段階で知っていた。当初は2009年5月上旬に1週間受講予定でいたのだが、その直前に行なわれたオフィスの移転の際にシックハウス症候群のような症状に陥って体調が極端に悪かった時期があり、この時期のビシャカは蒸し暑くて僕の体力ではもたないと判断し、結局辞退した。その後も、「Sanchaiさんの都合に合わせるよ」と言ってもらっていたのだが、仕事の方で少々込み入った事態が起こり、1週間も研修に行っている余裕を見出すことができなかった。確かに現在僕はビシャカに来ているが、研修受講が目的ではなく、ちゃんとした仕事で来ている。ちょっと残念だ。

とは言いつつも、訪問先はまさにこうしたファシリテーションを通じて住民のやる気を引き出すアプローチを得意にしている某日本のNGOである。そこの共同代表のNさんは先にお伝えした「マスターファシリテーター養成講座」の講師をされていた方でもあるわけだが、そのNさんが講座の後で薦めて下さった参考文献の1つが本日紹介する堀公俊さんの1冊である。同じファシリテーションでも中野民夫さんの著書はちょっと面白さに欠けたが、堀さんの著書はファシリテーターとしてのスキルアップにはきっと貢献するだろうという内容が多く含まれている。それがワークショップの場なのか、それともNさんが「基本」だと仰るインタビュー型ファシリテーションの場なのかは問わない。全体のトーンとしてはワークショップや会議をイメージした書きぶりだが、そこで描かれるファシリテーターのテクニックの部分は、インタビューでも十分応用可能だ。

自分のインドでの3年間のうち、最もファシリテーターの需要が高まったのは2008年10月頃だったと思う。組織の統合で会社が一気に大きくなり、双方の組織出身者が旧組織の因習に囚われず、目的意識を共有させる必要があった。本書で頻繁に言及されている「オフサイトミーティング」(欧米ではこれを「リトリート」と呼んでいる)を行なう乾坤一擲の好機だったと思う。多忙にかまけてこれをやらなかったのは僕も含めたマネジメントの責任でもある。

組織変革には多大なコストとリスクが発生する。著者は、こうした改革活動では、損得勘定を超えたところでメンバーのエネルギーを集めなければ成功はおぼつかないと述べている。そしてそれは、チームのやる気を引き出せるかどうかにかかっており、そのためのポイントは3つあるという。①コミットメント、②信頼感と連帯感、③フィードバックのことなのだが、特に僕はこのうちの①コミットメントに関して本書から引用をしておきたいと思う。
 1つ目のポイントは、メンバーに改革に対する当事者意識を持たせることである。組織が大きくなって役割分担が進み、組織の問題を自分の問題として感じられないところに、多くの問題が起因している。「誰かがやってくれるだろう」「あれは、商品部の問題で物流部は関係ない」「社長にビジョンや戦略がないのが悪い」……このような傍観者的または万年野党的な立場で、外野から野次を飛ばしていることこそが問題の元凶なのだ。
 答えは自分の中にしかなく、仕事への関心と愛着を呼び起こし、問題の重要性を判断するだけの知識と材料を与え、当事者意識を持つための場や時間を与えなければいけない。そして明るい未来へのビジョンをリーダーに提示させ、メンバーに組織の明日が託されている責任感と指し手意識を理解させる。最後には、「自分がやるしかない」と腹をくくらせ、もはや後戻りができないように退路を断つ。そうして初めて、カルロス・ゴーン社長が改革への鍵として掲げるコミットメント(commitment)が得られるのである。(pp.206-207)
こういうことを、2008年10月にやっておけばよかったとつくづく思う。その頃から在籍していたうちの会社の日本人駐在員は僕も含めて現在激しい入れ替わりの時期に突入している。いろいろなしがらみを引き摺ってここまでやってきた僕のような立場の人間がいなくなることは、組織にとっては大きなチャンスであり、一度オフサイト・ミーティングでもやって目的意識の擦り合わせをやったらいいと思う。

そして、そういう場に、僕が存じ上げているインド人のファシリテーターに入ってもらったらいいと思う。NGOのスタッフではないかと馬鹿にしない方がいい。勿論日本のファシリテーターの第一人者もビシャカ在住なのであるが、僕が考えているのはインド人スタッフも含めたチームによるオフサイト・ミーティングなので、インド人の方がファシリテーターとしては適任だろう。

僕にはできなかったが、そういう形で組織変革のチャンスをつかんで欲しい、残る人たちにそうした願いを託していきたいと思う。そういう意味からも、僕は、ファシリテーションに関して僕が集めてきた蔵書は全てインドに残していくつもりである。なにせ、帰国して僕が住む三鷹は、本書でも参加型まちづくりの先行事例として言及までされているところだ。「マスターファシリテーター養成講座」の続きは、三鷹でのまちづくりに関わってみることで、そこでのファシリテーターの作法をよく観察して学びたいと思っている。
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